REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2005年07月17日

子供のためのシェイクスピアカンパニー『尺には尺を』07/13-19紀伊國屋サザンシアター

 私のいちおしカンパニーの新作です!毎年夏に全国を回られます。子供達の夏休みのお楽しみですね。
 小学生のお子様達を連れての観劇になりましたので、ちょっとエッチな内容にハラハラ&どぎまぎ(笑)。でも終わってみたらとても好評でした。もちろん大人も大満足。みんなで「面白かった~!」とおしゃべりしながら劇場を後にしました。
 開演15分前からイエロー・ヘルメッツが登場しますので、お早めに劇場へGO!

 ★チャンネル・パナソニックの13チャンネルで前回公演『ハムレット』の映像および『尺には尺を』の稽古場風景が見られます。昨年震災にあわれた新潟の小千谷市ではチケット代が無料!パナソニック素敵!!

 黒いマントに黒い帽子を着込んだ俳優がクラッピング(手を叩く)をしながら登場し、マントを脱ぐと鮮やかな衣裳をまとった人物が現れるというお馴染みの演出に、毎度のことながらうっとり。翻訳家・演劇評論家である松岡和子さんが、ポストパフォーマンストークで「子供のための“大人の”シェイクスピア」とおっしゃっていましたが、まさにその通り!今作でも笑いいっぱい、見所いっぱいに原作の大切なところを伝えてくださり、エンディングでは独自の視点も提案されていました。とにかくこのシリーズは必見です!
 ※過去作品のレビュー→2001年2002年2003年2004年

 ≪あらすじ~パンフレットより引用~≫ ※ここからネタバレします。
 ある日、ウィーンの公爵ヴィンセンシオ(伊沢磨紀)は、自分の治めている国の政治を部下のアンジェロ(山口雅義)に任せ、姿を隠してしまう。厳格で真面目なことで知られていたアンジェロは、権力を手にしたとたん、長い間使われていなかった厳しい法律を引っ張り出し、次々に国民を罰していく。兄クローディオ(間宮啓行)に死刑が言い渡されたことを知った見習い修道尼イザベラ(大内めぐみ)は、兄の命を助けてほしいとアンジェロに頼みに行く。清純なイザベラを観て、アンジェロは彼女に恋をしてしまい、兄の命を助ける代わりにひと晩一緒に過ごすようい彼女にせまるのだった。困り果てたイザベラの前に謎の修道士が現れ、イザベラが傷つくことなく、兄の命が助かる良い方法があると耳打ちするのだが・・・
 ≪ここまで≫

 大昔に小田島雄志さんの翻訳を読んだことはあったんですが、ほとんど忘れてました(苦笑)。権力者が弱者に「体を売るなら願いをかなえてやる」と迫るなんて、なんとハレンチな!でも現代にも通じる、というかまさに今起こっていますよね(冷汗)。400年前の人間がそれをどう感じたのか、どう切り抜けたか(フィクションですが)が描かれますが、当然ながら現代ではもうなくなってしまった感のある貞操観念や社会通念に基づいており、そのギャップを俳優が「ええっ!!」と叫ぶ、大きなリアクションで埋めていく力技が微笑ましかったです。
 アンジェロに「兄を助けたければ私と一夜をともにしろ!」と迫られたイザベラが、「そんなことをするぐらいなら兄が死んだ方がまし!」と言い切るのに爆笑しました(笑)。

 アンジェロ役の山口雅義さんがちゃんと役作りをされているからとはいえ、あまりに怖いお顔だったので、子供達が怖がらないかしらと少し不安になったのですが(笑)、その顔のままでどんどんと壊れていく(ギャグになっていく)ものだから、蓋を開けてみると子供達の間で人気No.1でした~。


 【ポストパフォーマンストーク】

 松岡和子さんと脚本・演出・出演の山崎清介さんお2人のポストパフォーマンストークがありました。
 松岡さんって知識も教養もある上にほがらかで、本当にお話しするのがお上手。聞き応えのあるトークでした。
 『尺には尺を』のエンディングは上演される際の最大の注目ポイントだそうで、この作品では「アンジェロ観察旅絵日記」が「公爵観察絵日記」に変わるんですよね(笑)。「見せ掛けの装いには見せ掛けの装いを、偽りの行いには偽りの行いを、早急には早急を、猶予には猶予を、類には類を、尺には尺を」に、「観察には観察を」が追加されていたエンディングに、松岡さんはいたく感動されたとのこと。私も素晴らしいと思いました。

 ★8/28深夜1時よりNHK BS2で『オセロー』の放送が決まっているそうです。佐藤誓さんと吉田鋼太郎さんのオセローとイアーゴーなんじゃないかな。必見ですよね!

 ★stage note archivesさん も早速チェックされていますが、次回公演は来年3月に新国立劇場で『十二夜』、夏に東京グローブ座(復活!)で『リチャード三世』です。『十二夜』はこれで3演目になりますが、脚本から変更されると山崎さんがおっしゃっていました(ポストパフォーマンストークで)。私は2000年に再演された『十二夜』でこのカンパニーにハマったんですよね・・・あの出会いに心から感謝しています。

≪新潟、山形、東京、福岡、鳥取、愛知、山口、富山、三重、長野、滋賀、大阪、京都、静岡、新潟≫
出演=伊沢磨紀/山口雅義/間宮啓行/彩乃木崇之/戸谷昌弘/山谷典子/大内めぐみ/山崎清介
作=W.シェイクスピア 翻訳=小田島雄志 脚本・演出=山崎清介 照明=山口暁 音響=近藤達史 美術=岡本謙治 衣裳=池谷泉・阿部朱美 演出補=小笠原響 舞台監督=工藤静雄
チケット発売日:5/9(月) 料金:全席指定(前売・当日とも)大人4,800円 子供(中学生以下)3,000円 計8ステージ
華のん企画:http://canonkikaku.com/
子供のためのシェイクスピアカンパニー:http://homepage1.nifty.com/j-ishikawa/c-ro.html

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。

メルマガを発行しております。過去ログはこちら
 毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
 ぜひご登録ください♪
 『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)

↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。


登録フォーム






解除フォーム




まぐまぐ


『まぐまぐ!』から発行しています。

Posted by shinobu at 11:54 | TrackBack

松竹『七月大歌舞伎「NINAGAWA十二夜」』07/07-31歌舞伎座

 蜷川幸雄さんが初演出される歌舞伎です。原作はシェイクスピアの『十二夜』。尾上菊之助さんが主膳之助(しゅぜんのすけ=セバスチャン)と琵琶姫(びわひめ=ヴァイオラ)の2役を演じられます。
 串田和美さんや野田秀樹さん演出の歌舞伎(コクーン歌舞伎)に比べると普通の歌舞伎に近かったですね。4時間半(休憩2度を含む)はちょっとつらかったですが、美しいものを見せていただきました。

 あらすじはこちら。有名な作品ですし、ストーリーを知ってから観に行かれても問題ないと思います(チケットは売り切れですが、幕見のシステムがありますのでどうぞ歌舞伎座にお問い合わせください)。

 とにかく尾上菊之助さんに見とれました。きれいな声ですよね~。女役、男に変装した女役、そして男役の計3役を演じられたことになると思いますが、どれも違う演技をされていて(当然といえば当然ですが)、衣裳を早替えして登場した瞬間の立ち姿、そして第一声にときめきました。「あぁ、今度はこの役ね!」って。菊之助さんはストレート・プレイ『若き日のゴッホ』で初めて拝見したんですが、期待通りの美青年でいらっしゃいました。菊之助さんの追っかけはしたいかも(笑)。

 普通の歌舞伎と明らかに違ったのは舞台装置と音楽かしら。演技と衣裳に遊びが多く、セリフが現代語に近くて分かりやすいのもある気がします(普段から歌舞伎をよく観ているわけじゃないのですが、そう感じました)。

 シェイクスピア作品では私、道化が出てくるシーンで退屈しちゃうことが多いんです。残念ながら今回もまたそうでした。尾上菊五郎さん演じる丸尾坊太夫(まるお・ぼうたゆう=マルヴォーリオ)が織笛姫(おりぶえひめ=オリヴィア)への恋心をネタに思い切りからかわれる流れは、全体的に展開がゆっくりだったように思います。市川亀治郎さん演じる織笛姫の侍女の麻阿(まあ=マライア)は、セリフの速さや声色の変化、そして突然の意外な動きで笑いをガンガン取っていましたね。素敵でした。

 たぶんこの作品の特徴として私の記憶に残るのは、主役の尾上菊之助さんと奇抜な舞台美術、そしてバロック音楽が流れる中で語られる、思い通りにならない切ない恋、の3つだと思います。「思う相手に思われず思わぬ相手に思われる恋のロンドが展開する」と筋書きにありますように、けなげな恋心の交差に胸キュンしちゃうのです。

 男装して獅子丸(ししまる=シザーリオ)と名乗っている琵琶姫(尾上菊之助)は、大篠左大臣(おおしのさだいじん=オーシーノ公爵)にひそかに恋をしています。その一途な眼差しとけなげな身振りがカワイイ!
 しかしながら左大臣(中村信二郎)は美しい織笛姫(中村時蔵)に片思いをしており、獅子丸は左大臣に織笛姫への恋文を届けるよう命じられます。実際に会ってみると確かに美人で、けれども気位の高い織笛姫に、獅子丸はちょっぴり嫉妬しつつ怒りもこみ上げてきて、「あなたは残酷だ!」などと正直に気持ちをぶつけてしまいます。恋する乙女の感情は押さえられず、ついつい口から体から出てしまうんですよね。でも獅子丸は絶対に品位を落とさないんです。それが美しい!
 獅子丸に一目ボレしてしまった織笛姫(中村時蔵)は、所作はもちろんのこと、わがままっぷりがプリンセスらしくて良かったです。歌舞伎役者さんは王族・貴族などを無理なく演じられますよね。演劇の役者さんでそれが出来る人って少ないと思います。

 シェイクスピア作品では道化にあたる捨助(すてすけ=フェステ)を尾上菊五郎さんが演じられていたことに、筋書を読んでから気がつきました。誰なのかな~って呑気に思ってたんですよね・・・情けない(涙)。丸尾坊太夫と2役だったんですね。人間国宝・・・そうなのか・・・・すごい。

 ここからネタバレします。

 テレビや雑誌などで既に紹介されていますが、舞台美術に鏡を使っているんです。一番初めに幕が開いた途端、観客の目の前に広がるのは巨大な鏡。観客は自分たちが座っている観客席をババン!と見せ付けられるのです。大竹しのぶ・唐沢寿明主演の『マクベス』でもこの鏡が使われていましたが、すごく感動したんですよね。この鏡は前から光を当てると鏡になるけれど、後ろから当たると透けるので、マジックのような面白い演出が見られます。
 あと、座席が2階の上手側後方だったので花道がほとんど見えなかったんですが(なのに10,500円なのねぇ、悲し)、鏡のおかげで花道を歩く役者さんが正面から見えたのが嬉しかった(笑)。

 先日『まちがいの狂言』を観たばかりだったので、双子の兄弟(『十二夜』の場合は兄妹)が出てきて取り違えられるシェイクスピアのコメディーが続きました。実はこの『十二夜』の後に観たのがこどものためのシェイクスピアカンパニー『尺には尺を』だったんですよね~(笑)。どれも全部面白かったです。

出演=市川左團次/中村時蔵/坂東秀調/中村信二郎/市川亀治郎/坂東亀三郎/尾上松也/尾上菊之助/河原崎権十郎/市川團蔵/市川段四郎/尾上菊五郎 ほか
作=W. シェイクスピア 訳=小田島雄志 脚本=今井豊茂 演出=蜷川幸雄 装置=金井勇一郎 照明=原田保 演出助手=浅香哲哉 作曲=杵屋巳太郎 作調=望月長左久 竹本作曲=野澤松也 音楽=笠松泰洋 声楽指導=山本義人 音響=田中剛ニ 振付=藤間豊之助 立師=尾上菊十郎 坂東橘太郎
1等席14,700円 2等席 10,500円 3階A席 4,200円 3階B席 2,520円 一階桟敷席 16,800円 43ステージ
公式:http://www.shochiku.co.jp/play/index_kabukiza_0507.html

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。

メルマガを発行しております。過去ログはこちら
 毎月1日にお薦めお芝居10本をご紹介し、面白い作品に出会った時には号外も発行いたします。
 ぜひご登録ください♪
 『今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台』(ID:0000134861)

↓↓↓メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。


登録フォーム






解除フォーム




まぐまぐ


『まぐまぐ!』から発行しています。

Posted by shinobu at 01:02 | TrackBack