2005年07月21日
オン・タイム『プレイ・ウィズ・ミュージック イブラヒムおじさんとコーランの花たち』07/21-31博品館劇場
朗読と音楽のコラボレーション公演です。朗読の出演者は日替わりで、私は三田和代さんが出演する初日(公演の初日でもあります)に伺いました。音楽は作曲者の稲本響さん(ピアノ)と、稲本さんの弟の稲本渡さん(クラリネット)の生演奏です。なんて豪華なんでしょう!
7月の公演についてはイープラスの得チケで6,300円が4,000円です!
※8/29~31に麻美れいさん、11/8~10に高嶋政伸さんの出演が決定しています。
※読者の方から感想文を頂戴しました。→ 浦井健治さんの回・松村雄基さんの回
楽器を演奏する2人と朗読をする三田さんの3人が互いにアイコンタクトとりながら、息をしっかり合わせて、モモ少年とイブラヒムおじさんの暖かい物語を紡ぎだしてくださいました。もー涙がこぼれて、こぼれて・・・やっぱり三田さんは素晴らしい!稲本兄弟のピアノとクラリネットは、そりゃ~も~美しくて、さらにお2人ともかっこいいので目も耳も喜びまくりでございます(笑)。めちゃ早くにチケットを買っていたので最前列で堪能いたしました。前の方の席がお薦めです♪
エリック・エマニュエル・シュミットさんの戯曲については、『謎の変奏曲』で大感動しておりましたので何の心配もせずに前知識ゼロで伺ったのですが、それも功を奏しました。もともとが一人芝居の戯曲ですので、モモ少年の生活やイブラヒムおじさんの素性、2人が住む街の風景などが、俳優によって語られる言葉から、少しずつ、少しずつわかってくるのがとても楽しいのです。また、モモ少年の視点から一人称で語られる彼の少年時代は、静かではありながらも波乱万丈なので、意外な展開にドキドキしながら、次から次にこぼれ落ちてくるイブラヒムおじさんの名言に胸が熱くなります。
もちろん、三田さんの情感あふれる朗読だからこそ、一瞬一瞬を丁寧に輝かせるような楽器演奏だったからこそ、こんなに感動できたんだと思います。
音楽と朗読を助けるように照明と音響効果がありましたが、ちょっとうるさいなーと思うこともありました。音楽と朗読のチームワークがものすごく良いので、照明や効果音にあまり必要性は感じなかったですね。3人が作り出した空間がそれほどに豊かだった、ということです。
実はこの戯曲は既にフランスで映画化され日本でも上映されています。映画を観たことがない方で、これからこの作品を観に行かれる方は、映画の情報を頭に入れずに観に行かれることをお薦めします。できれば映画版のイブラヒムおじさんやモモ少年の顔などは見ない方が、朗読時にご自分で頭に思い浮かべる情景がより豊かになることと思います。映画の詳細はこちら。
もしかするとパルコ劇場のLOVE LETTERSのような不定期連続公演になるのかしら。
ここからネタバレします。
【あらすじ ※映画サイトより引用】
パリの裏町で暮らす13歳のユダヤ人少年モモと、彼のアパルトマンの向かいで小さな食料品店を営むトルコ移民の老人イブラヒム。家族の愛に恵まれない不幸な境遇の中で思春期を迎え、大人への階段を一歩ずつ上っていくモモ。そんな彼の成長に手を貸すことに生き甲斐を見出し、孤独な生活から脱していくイブラヒム。愛も知らずに人生の春を迎えた少年が、人生の晩秋にさしかかった老人と出逢い、限りない愛情を注がれ、人生の楽しみ・喜びを知っていく姿をいきいきと捉えた物語は、人種と世代の壁を超えた人間同士の絆を描く普遍的なヒューマンドラマとして、深く心にしみる味わいを残す。
下記、心に残った言葉を記録しておきます。(言葉は完全に正確ではありません)
【2人でパリを訪れた時】
「ご覧、モモ。セーヌは橋が好きなんだ。女がブレスレットを好きなように。」
「(ブランド店にて)それが贅沢というんだ。ウィンドウも空(から)、店も空(から)。全てが値段の中にある。」
【好きな女の子に対してどうすればいいのか】
「お前の思いは全てお前のもの。お前が与えるものもお前のもの。お前が与えない限り、全て失われる」
「“僕はハンサム?”と聞かれても、女は笑うしかない。お前はアラン・ドロンやマーロン・ブランドーじゃないんだから。美しさというのは、女性の中に見出すものだ。」
【2人でホテルを訪れた時】
モモ「美しすぎる」 イブラヒム「美はどこにでもあるんだ」
【パリからイスタンブールへの旅路にて】
「僕はヨーロッパを見なかった。聞いたのだ。」
「知恵と理性と思想のある人間」
「お前の頭脳はお前のかかとだ。かかとは深く考える。」
「時間を急がないこと。それが幸せへの鍵だ。」
"Monsieur Ibrahim et les fleurs du Coran"
出演(日替わり)=三田和代(7/21夜,7/23昼,7/24夜)/浦井健治(7/22夜,7/23夜,7/24昼) /松村雄基(7/27夜,7/28昼・夜) /榎木孝明(7/30昼・夜,7/31昼)
原作=エリック・エマニュエル・シュミット(Eric-Emmanuel Schmitt) 翻訳=青井陽治 武藤洋 演出=青井陽治 音楽=稲本響 美術=朝倉摂 照明=沢田祐二 音響=高橋巖 舞台監督=北條孝 版権=マーチン・ネイラー 制作=小林真知子 プロデューサー=初見正弘 主催=博品館劇場 オン・タイム TBSラジオ 企画・製作==オン・タイム
前売り開始:6/25(土)全席指定 6300円(税込み)全12ステージ
オン・タイム :http://www.ontime.jp
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椿組05夏・花園神社野外劇『新宿ブギウギ~戦後闇市興亡史~』07/15-24花園神社境内野外ステージ
椿組の夏恒例の花園神社野外ステージはなんと20周年だそうです。気になる役者さんがたくさん出演されているので今年も観に行くことにしました。
お目当ての一人(というか目玉)だった山本亨さんが、19日(火)の本番中に骨折されたために降板されていました。かなりショック・・・でしたが、突然に主役級の役者が降板したことなど全く想像させない、素晴らしい出来でした。
傷ついて戦場から帰還した男たち、飢えに耐えて待っていた女、子供、老人ら日本人が、敗戦直後の何もない焼け野原からどうやって立ち直り、生き延びていったか。活気溢れる闇市を舞台に、少しずつ復興していく新宿が描かれます。
大勢の役者さん(計38人)が土の舞台を走り回り、大きな声で元気いっぱい演技されます。夏祭りの熱気に似ていました。でも、舞台と客席には夜の涼風がすーすーと吹き込むので暑苦しいということはなく、野外ステージならではの楽しみを満喫させていただきました。
ここからネタバレします。
シーンが変わる度に前シーンの数年後の闇市へと時間が移り、ずんずんと未来へ進んでいきます。登場するのはめし屋の家族、洋服仕立て屋、酒屋、医者、絵描き、キャバレーの踊り子、歌手(のたまご)、娼婦、ヤクザ(野田組とブクロ組)、復員兵、進駐軍、警察官など盛りだくさん。
演出は離風霊船(りぶれせん)の伊東由美子さんです。恥ずかしながら離風霊船の作品は観たことがありませんが、この作品の演出はとっても良かったです。まず、活気溢れる闇市の喧騒が非常にうまく作られていました。ヤクザ同士のケンカなど立ち回りも多々あり、汗だくで土にまみれながら役者がからみあうのは見ごたえがあります。
軍服姿で鬼の面を被った、赤紙(あかがみ〕と呼ばれる死神が登場するシーンでは、死体がゆっくりと起き上がり、死神に誘われて退場するのですが、生きている人々も同じく舞台上にいるので「生」と「死」の対比があらわになり、うすら恐ろしい空気が流れました。
登場人物それぞれのバックグラウンドが、少ないセリフと演技でしっかりと表現されていました。酒屋の店主の金本(深貝大輔)が、大阪の鶴橋から出てきた朝鮮人だったというエピソードが特に簡潔で良かったです。
「チョコレートを腹いっぱい食べるのが一生の夢だ」という少年のセリフや、崩れ落ちた闇市を見ながら女が叫ぶ「もともと何にもないところからやってきたんだから、私たちは大丈夫!」というセリフなど、素直にまっすぐ発せられるセリフが胸に響きました。※セリフは正確ではありません。
大詰めで屋台崩しがあって、さらにラストシーンで新宿ゴールデン街のネオンが現れるのが嬉しかったです。装置作るの大変そう・・・。
山本さんが演じるはずだったのは、日本刀で人を切るヤクザの渡会(ワタライ)役。代役の方は稽古場にもいらした方だそうです(お名前はわからず)。お芝居が終わってから「山本さんは一体どの役だったんだろう?」と考えてもわからなかったぐらい、その代役の方はお芝居に溶け込んでいらっしゃいました。昨日の今日で、素晴らしいですよね。でも山本さんの立ち回りも観たかったな・・・・。
★代役の方、わかりました。小林裕忠さん(離風霊船)です。小林さんのもともとの役は松本さんとおっしゃる方が演じられたそうです。詳細はこちら→つばきのつぼみ ※2007/07/21追記
仕込み風景によると、緞帳の絵はゲネプロ直前に即興で描かれたようです。青と赤の地に白い線と黒い文字(Tokyo JAPAN 1947)が効いている、おしゃれな抽象画でした(画=黒田征太郎)。
出演=山本亨(tpt)/若杉宏二(流山児★事務所)/恒松敦巳/円城寺あや/鳥居しのぶ/仁藤優子(ホリプロ)/伴美奈子(扉座)/田淵正博/木下藤次郎/犬飼淳治(扉座)/井上カオリ/長嶺安奈/深貝大輔/沖田乱/小林裕忠(離風霊船)/橋本直樹(離風霊船)/江頭一晃(離風霊船)/東虎之丞/佐藤滋(KAKUTA)/濱田龍司(ペテカン)/李峰仙/中村歩/岡村多加江/なみえ(オフィス★怪人社)/倉林恵美(離風霊船)/西口真生/瀬山江里子/冨樫舞/伊藤新(ダミアン) /林栄次 /平塚真介/真田幹也/宮本翔太/鳥越勇作/よこやまよしひろ/沢りつお(テアトルエコー)/宮島健/外波山文明
作=鈴木哲也 演出=伊東由美子 照明=沖野隆一(RYU CONNECTION) 美術=加藤ちか 音響=青蔭佳代(音スタ) 衣裳=出川淳子 振付=伊藤多恵 演出助手=城田美樹 アクション監督=山田一善(ZEN) テント設計=大塚聡 テント設営=東弘英 舞台監督=吉田均 制作事務=佐野寿衛子 宣伝美術=黒田征太郎 長友啓典 上浦智宏+K2 企画制作=椿組 プロデューサー=外波山文明 主催=椿組
前売り開始:6/1(水)木戸銭:前売3800円 当日4000円(中・高校生2500円) 毎夜7時開演 10ステージ
椿組:http://copain-web.com/shinobu/tubaki/top.html
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