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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年07月23日

劇団カリフォルニアバカンス『Dalix -ダリの経験-』07/22-24東京芸術劇場 小ホール1

 カリフォルニアバカンスは池里ユースケさんが作・演出される劇団で、私は初見です。略して「カリバカ」だそうですが、呼びづらい名前だな・・・(笑)。

 画家のダリおよびダリの作品を題材にしたストーリーものでしたが、目的が定まっておらず、何につけても散漫な作品でした。ストーリーに一貫性がなく展開もエンディングも苦し紛れで、観ていて苦しかったです。

 舞台作品としての印象は、まず立体感がなかったです。東京芸術劇場 小ホール1の高い天井をちゃんと使った大掛かりな美術を作られていましたが、コレの次はアレ、アレの次はコレ、というように、まっすぐ続く線路をただただ直進するように脚本をなぞっていくだけで、奥行きがありません。
 また、行き先が決まっていない列車(作品)がときどき身勝手な停止や脱線をします。マイケル・ジャクソンの“BAD”をBGMに大勢が本気で踊ったり、「ぐりとぐら」まがいのキャラが出てきたり、ジャグラーが芸を見せて観客に拍手を強要したり。ひとつひとつは面白いアイデアだったり、芸として見るものがあるのですが、必要性が感じられませんでした。もったいないですね。

 ダリの世界を舞台で表現するということは非常にチャレンジングで面白いと思います。主人公の少年がダリの絵の世界の中に、ダリと一緒に入っていくという設定は楽しいですよね。力を抜いて笑えるギャグや皮肉の効いたパロディーもありました。ダンスも上手い人はいました。もっと作品の意図をしっかり決めてから創作をされると良いのではないでしょうか。

 役者さんについては、自分のセリフを自分なりに声にしているだけで、舞台上にいる他の役者さんとコミュニケーションをしている人がほぼいませんでした。私が役者をやっていた頃はこうだったんだろうなぁと、恥ずかしい気持ちで眺めていました。

 14時開演で私が席を立ったのが16時30分でした。開演前に劇場入り口に長い列が出来る満員状態で、開演はおよそ15分押しでしたので、正味の上演時間は2時間15分だったかもしれませんが、体感時間は2時間30分休憩なしの作品だったということになります。これは長すぎますね。内容も長さも、もっとスリムにできると思います。

出演=石田真一/大口達也/塩田良平/清水智香子/田中美穂/中澤健太郎/宮健一/室野尚武/川村由紀/富岡利佳子/水野顕子/柿ノ木タケヲ(コーヒー牛乳)/木村準(グッチ&ボッチ)/黒田公祐(劇団東京ルネッサンス)/猫道(猫道一家)/吉田ミサイル(吉田ミサイルの世界)/Dance Company MKMDC(加藤枝里子/神崎好加/綺田育子/小早川泉/佐藤直樹/巽徳子/中西和子/花田塁/浜田光/松浦美幸/三宅まるみ)
作・演出=池里ユースケ 舞台監督=小金井伸一 舞台美術=鎌田朋子 照明=宮崎正輝 音響=井上直裕(at Sound) 制作=カリフォルニアバカンス制作部 宣伝美術=金倉ひだり(CVP) 写真=米沢耕 ダンス指導=松尾耕(Dance Company MKMDC) 衣装=北野原愛 協力=突貫屋
前売り開始:6/10(金) 前売り3000円 当日3200円 各種割引あり 計5ステージ
劇団:http://www.karibaka.com/

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Posted by shinobu at 20:27 | TrackBack

劇団M.O.P.『水平線ホテル』07/22-28紀伊國屋サザンシアター

 劇団M.O.P.のメンバーが全員そろうのは4年ぶりだそうです。そうですよねぇ、人気俳優がいっぱいだし、作・演出のマキノノゾミさんも引っ張りだこ。ファンにとってはとても嬉しい本公演だと思います。
 マキノさんが「これまでの公演の集大成」とおっしゃる今作は、“地中海に浮かぶ孤島に建つホテル”を舞台に、宿泊客と従業員そして予期せぬ訪問者たちが繰り広げる、かなりウェルメイドな推理ものドラマでした。

 テレビの大河ドラマみたいだったなぁというのが観終わってすぐの感想です。とてもよく出来た脚本で演出もわかりやすく、豪華な装置にきれいな衣裳、そして上手い俳優が揃っており、誰もが安心して楽しめる娯楽作品だったのではないでしょうか。ただ、私には物足りなかったですね。なんだか新橋演舞場で商業演劇を観ているような気持ちになりました。演出にしても役者さんの演技にしても、もうちょっとスパイスというか、弾けた感じが欲しかったです。特に役者さんは予想できる範囲内の演技しかされていなかったように思いました。
 でも、イープラスの得チケ(手数料込みで3,100円)で観られたのはかなりオトクでした。感謝!

 家に帰って家族にこの作品のストーリーを話したのですが、かなり夢中になって聞いてくれました。推理ものとして本当に面白い脚本だと思います。

 ここからネタバレします。
 これから観に行かれる方はお読みにならないでくださいね!!

 ≪あらすじ≫
 舞台は戦時中(1940年代)の夏のイタリア。アンナ(キムラ緑子)が経営する水平線ホテルは地中海に浮かぶ孤島にぽつんと建っている、こじんまりとして家庭的なホテルだ。宿泊客はソプラノ歌手とその夫と付き人、大学教授とその妻と娘、一人で旅をする医者、そしてアンナの昔の恋人のレイ(小市慢太郎)と、のんだくれの謎の男(三上市朗)。のんだくれは毎日どこかに電話をするのだが、相手が出る前に切るのを繰り返している。レイは何年も音信不通だったが突然戻ってきたのだ。なんと不治の病であと3ヶ月の命だと言う。
 いつものように船が到着した朝、突然ムッソリーニの親衛隊がホテルを包囲した。イギリスの大物スパイがこのホテルに潜伏しているというのだ。親衛隊のボスのオラーノ(奥田達士)は、スパイを逮捕するまで宿泊客や従業員は決してホテルの外に出てはいけないときつく言い放った。
 ※劇場サイトに書かれているあらすじと全然違う・・・(笑)。

 大学教授は中性子の研究者で、ドイツが原子爆弾の製造に着手したことに大きな不安を持っており、また妻がユダヤ人なのでアメリカへ亡命をしようとしています。アンナの夫は元新聞記者で、ムッソリーニ失脚を決定付けるスキャンダルの証拠を持っていたために、何者かに殺されました。このように、第二次世界大戦という時代背景が大きくストーリーに関係しているのがスリリングでした。

 品の有る舞台装置でした。中央に大きくて立派な階段があって、そこがホテルの正面玄関になっています。玄関のすぐ左に受付、右には昔風のエレベーターがあり、そのエレベーターの昇降がムービングの照明で表されるのが面白いし、スマートでした。

 「これまでの公演の集大成」というのには意味がありまして、実はM.O.P.の過去の作品からセリフや設定を拝借しているようです(パンフレットに書いてありました)。私は過去の作品をあまり観ていないので、残念ながら「あ!これはあの芝居のセリフだ!!」という楽しみはなかったです。でも『黒いハンカチーフ』と『虚飾の街に別れのキスを』に似てるところには気づいたかも。だって、酒井高陽さんがね、うん、そういう役でしたよね(笑)。でも、そこには気づかなかった方が楽しめただろうな・・・。

≪京都、大阪、東京≫
出演=キムラ緑子/三上市朗/小市慢太郎/林英世/酒井高陽/木下政治/奥田達士/勝平ともこ/白木三保/岡村宏懇/友久航/塩湯真弓/永滝元太郎/竹山あけ美/塩釜明子/神農直隆/岡森諦(扉座)/倉田秀人/小池貴史(京芸)
作・演出=マキノノゾミ 舞台美術=奥村泰彦 照明=大川貴啓 音響=堂岡俊弘 衣裳=三大寺志保美 ヘアメイク=武井優子 舞台監督=藤吉成三 制作=山中歌子 渡辺裕子 橋本香苗 企画・製作=劇団M.O.P. 宣伝デザイン=ヒネのデザイン事務所+森成燕三 写真=伊東和則
前売り開始:5/22(日)指定席4500円 ※東京公演のみハーフプライス・チケット(当日半額券)あり。詳細は劇団サイトへ。 計8ステージ 
劇団:http://www.g-mop.com/

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Posted by shinobu at 01:51 | TrackBack