2005年08月02日
FICTION『ヌードゥルス』07/26-31THEATER/TOPS
Oi-SCALE公演で多田明弘さん(FICTION)を拝見して名前だけは知っていたFICTION(フィクション)。やっと観に行けました。
“デジログからあなろぐ”で太鼓判だったので期待して伺ったのですが、私も大変面白く拝見いたしました。テーマは壮大なのに全く力まずむしろ脱力しており、あえてダサく汚く見せているのが大人でイカしてます。
終演しておりますのでネタバレします。
開場時間そして開演の瞬間から心をわしづかみにされました。
劇場に入ると、舞台全面を覆う大スクリーンに楽屋の様子が無音で生中継されていました。役者さんがメイクしたりペットボトルの飲み物を飲んだり。まったりとした時間が流れているように見えます。
開演時間になると楽屋の音も伝わるようになり、ダンボール紙を持った人がカメラの至近距離の位置に立ちました。そしてダンボールが画面の中央に来るのですが、タイトルや出演者名(クレジット)がマジック・ペンでかなり適当に手書きで書かれています。いきなり始まる大合唱の中、クレジットが紙芝居のように繰り出されていきます。
その合唱(歌のみのBGM)が映画「2001年宇宙の旅」のメインテーマ(ちゃーんちゃーんちゃーーーん、ちゃちゃーっ!ドンドンドンドンドンドン・・・てやつ。交響詩“ツァラトゥストラはかく語りき” by R. シュトラウス)なんです。役者がカメラの歌で声を張り上げて歌っているだけで音楽は鳴っていません。荘厳な曲なはずなのにただの叫び声みたいになってる歌をバックに、へなちょこのダンボール紙芝居で見せるニセ「2001年」のオープニングには吹き出しました(笑)。
主要登場人物は、同じ日に刑務所を出所した3人の同姓同名の男たち(名字はタナカ)と、刑務所前に住む浮浪者の女(三日月)。シャバの冷たい風に耐え切れなくなって、4人は一緒に山に登って共同生活を始めます。山では小麦を植えてソバを作って生計を立てていくのですが、でも、足踏みが揃っていたのもつかの間、一人のタナカは労働の日々が肌に合わず山を降りていきます。そして数十年の月日が経ち・・・。
息のあったボケとつっこみ、狙いが定まったキャラクター設定など、こなれた技術で笑いがいっぱい起こっていました。ひっきりなしと言っていいほど。私は笑うというよりは吹き出すって感じでしたね。
最後まで観て映画「2001年・・・」とのつながりが少しわかったような気がしました。ペットショップの若者がとある山に白い子猿を捨てるシーンから始まるのですが(そのサルが成長して怪力になり、タナカ達の助っ人になります)、その時、舞台上で森に生えている小さな木を人が演じていました。
エンディングでは登場人物はみな年を取って白髪の老人・老婆になっており、木は大木に成長していました。床に膝を立てて小さな木を演じていたのが、何かの台の上に立って天井にかなり近いところまでそびえる木に変化しています。
容赦なく過ぎ去っていく時間の中での命の誕生と消滅、そして終わることのないその連続・繰り返し。一瞬間とも言える人間一人の命の中のささやかな喜び。人間なんてこんなもんだよっ、と言いながらそれをめちゃくちゃ愛している視線を感じました。
役者さんは皆さんキャラクター作りを徹底されていて、そしてとても味がありました。でもガチガチにはならずに観客とコミュニケーションする余裕を必ず持ち合わせています。
白い顔のタナカを演じられた方の関西弁がものすごく流暢で、どなっても無理やりな感じがなく、常に心地よく響くものでした。
紅一点の三日月役の福島恵さんがものすごい迫力でした。最後に幽霊になって歌うシーンでは、後ろにある大木と一緒に命の賛歌を歌っているように見えて、私は涙ぐみました。
8月末に富良野公演があるそうです。
出演=山下澄人/山田一雄/矢田政伸/井上唯我/荻田忠利/多田明弘/大山健/福島恵/大西康雄
作・演出=山下澄人 照明=高橋秀彰 音響=別所ちふゆ 舞台監督=バタヤン イラスト及び題字=山下澄人 デザイン=西山昭彦 モデル=大谷アミーゴ光弘 その他全部=FICTION 企画・制作=OFFICE FICTION プロデューサー=白迫久美子 製作=原田裕・井上淳司
前売開始=6月12日(日) 前売:指定席3,000円/自由席2,800円 当日:指定席・自由席共3,200円 学割:前売・当日共2,300円(OFFICE FICTION扱いのみ)
FICTION=http://www.fiction.gr.jp/
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