2005年08月04日
トム・プロジェクト『ダモイ~収容所(ラーゲリ)から来た遺書~』08/04-05四谷区民ホール
トム・プロジェクトがプロデュースする戦後60周年記念作品です。平田満さん、阿南健治さん、新納敏正さんの3人芝居と言うだけでも期待が高まります。
原作は「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」(辺見じゅん著)。第21回大宅壮一ノンフィクション賞・第11回講談社ノンフィクション賞を受賞しています。
美しい日本語のひとつひとつに気を引き締め、涙しながらの観劇でした。すっごくお薦めです。
≪あらすじ≫
舞台はロシアの捕虜収容所(ラーゲリ)。いくつかのラーゲリを転々としてきた野上(新納敏正)は、ハバロフスク第21分所で明るく気さくな山本(平田満)と出会う。労働に疲れ、仲間に裏切られて堅く心を閉ざしていた野上だったが、昔居たラーゲリで一緒だった新野(阿南健治)との再会や、山本の書く俳句を味わったり、自らも文章を書くことで、少しずつ生きていくための希望を持ち始めた。いつ訪れるやもしれぬ、そして永遠に訪れないかもしれない、“ダモイ(収容所から日本への送還)”を夢見て・・・。
≪ここまで≫
ノンフィクションですから事実を元に作られたお芝居です。過酷な収容所の生活を詳しく描くことはなく、あくまでもその地獄でいかにして男達が生き抜いたかを描いていました。戦争もののお芝居といえど悲惨さとか残酷さが前面に出てはおらず、人間の心に焦点を当てている脚本にとても感動しました。
また、『父と暮せば』でも私が強く感じたように、私たちは戦争で亡くなった方々に生かされているということを再び強く確かめました。
終演後のロビーで、原作本(詳細は↓)と戯曲が掲載されたテアトロ2005年7月号を買いました。
文芸春秋 (1992.6)
通常2~3日以内に発送します。
ここからネタバレします。
山本さんは病に倒れ、ダモイを迎えることなく収容所の病院で息を引き取ります。死を目の前にした山本さんが体の激痛に耐えながら書いた遺書は、新野さんと野上さんを含む12人の仲間達がすべて暗記して日本へと持ち帰ります(収容所では私物を所有することが禁じられていたため)。
収容所の仲間達へ、母へ、妻へ、そして子供達へと宛てられた四通の遺書には、それぞれに山本さんの人徳がよく表れていて、なんと立派な方なんだろうと感激しつつ、自分の不甲斐なさを情けなく思いました。人間が生きるということについて、ゼロから、謙虚に向かえるような気がします。
子供達への遺言の一部をご紹介します。※テアトロ2005年7月号154~155ページより
「どこまでも真面目な、人道に基づく自由、博愛、正義の道を進んで呉れ。」
「最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。」
「人間は結局自分一人のほかに頼るべき物がない-といふ覚悟で、強い能力のある人間になれ。自分を鍛へて行け!精神も肉体も鍛へて、健康にすることだ。強くなれ。自覚ある立派な人間になれ。」
「自分の才能に自惚れてはいけない。学と心理の道においては、徹頭徹尾敬虔でなくてはならぬ。立身出世など、どうでもいい。自分で自分を偉くすれば、君らが博士や大臣を求めなくても、博士や大臣の方が君らの方へやってくることは必定だ。要は自己完成!しかし浮世の生活のためには、致し方なしで或る程度の打算や功利もやむを得ない。度を越してはいかぬぞ。最後に勝つものは道義だぞ。」
原作者の辺見じゅんさんとと、山本旗男さん(平田満さんが演じた役)の長男の顕一さんが客席にいらっしゃいました。カーテンコールの時に平田さんがご紹介くださったのですが、顕一さんのお姿を見て涙がまた溢れました。今、私が観たお芝居が真実に基づいたことであり、山本さんの遺書も本物だったということが改めて実感できたからです。顕一さんは白髪交じりの短髪の恰幅の良い紳士で、観客の拍手に涙ぐんでいらっしゃいました。
≪亀戸、四谷、藤沢、千葉、所沢、吉祥寺、栃木≫
【ふたくちつよし 劇団を超えた連続上演】
出演=平田満/阿南健治/新納敏正
原作=辺見じゅん 作・演出=ふたくちつよし 美術=川口夏江 照明=相良浩司 音楽=小川和隆 音響=大野正美 衣装=東宝コスチューム 演出助手=人見梨紗 舞台監督=土居三郎 宣伝美術=立川明 宣伝写真=塩谷安弘 プロデューサー=岡田潔 企画制作=トム・プロジェクト
全席指定 前売¥3,800 当日¥4,000(全公演共通)
ダモイ:http://www.tomproject.com/peformance/raageri.html
トム・プロジェクト:http://www.tomproject.com/
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