2005年08月24日
劇団健康『トーキョーあたり』08/07-28本多劇場(8/5:プレビュー公演)
「12年前に第14回公演を最後に解散した劇団が、12年振りに第15回公演をやる」ことになったそうです(公式サイトより)。
劇団健康はナイロン100℃の前身劇団なんですね。ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが昔の仲間(今の仲間でもありますが)と一緒に「40代でやっちゃいけないことだとはわかってます。ごめんなさい」と言いながらやっちゃった(笑)、ナンセンス・ギャグだらけでお下劣な、好き勝手空間でした(良い意味です)。
私は・・・演劇界の内輪受けネタが一番面白かったなー。確実に笑わせてもらいました。言っちゃえば、本当に面白かったのはそこだけって言うか(苦笑)。なのでそこの部分しか書きません。
ここからもうネタバレしちゃいます。
オープニングのケラさん&顔田顔彦さん(大人計画)出演の本屋映像は大胆だったなー(笑)。ケラさんが店員(顔田顔彦)の目を盗みながら、話題の戯曲本(『鈍獣』『キレイ』『オケピ!』など)を次々と万引きして、代わりに自分の本を本棚から平積みに置き換えます。でもナイロン100℃関係の書籍・DVDが一律50円で叩き売りされててショック受けたり(笑)。
そして本屋の客がみんな自分(ケラさん)の悪口を言っているような幻を見ます。見知らぬ客がケラさんの方をチラリ見しながら「中盤までがダルイ!」「ラストがありきたり!」「年5本なんて、いっぱい書けばいいってもんじゃねーんだよっ!」とつぶやいているかのように、山盛りの字幕で超自虐ネタが出てきます(笑)。
本屋から出たら、次は俳優・芸能人で犯罪を犯した人の名前を犯罪名とともにテロップで流しながら、画面には『キレイ』の主題歌を歌う離婚したての奥菜恵さん。いやー・・・知ってる人には面白すぎますね(笑)。※セリフは完全に正確ではありません。映像の順番もあまり自信がないです・・・。
劇中でもよく演劇界ネタ映像が出てきました。稽古場で役者がキャラメルボックスのTシャツを着てたり、本多劇場グループの本多さんや本多劇場スタッフが胃の中に腫瘍役(?)で出てきたり。
これは映像ではなく実際に舞台で起こったことですが、手塚とおるさんが黒子(赤装束なんだけど)を蹴りまくりながら、「お前はナイロンの新人かー?大人計画の方が面白いかー?阿部サダになりたいかー!?クドカンになりたいかー!?」と叫んでました。手塚さん、ソフトな感じのおじいさん役もやってるのにね、そのシーンは野獣のようでした(笑)。
お芝居の中盤(終盤近く?)でケラさんが実際に舞台に登場して、オープニング映像で万引きした本を公園のゴミ箱に捨てちゃいましたね。そこからケラさんと手塚とおるさんの生っぽいトークが始まって、これがまたマニア受けでした。酒井若菜さんの代役で『キレイ』に出演した鈴木蘭々さんについての話はヤバかったですね(私も蘭々さん凄いなって思ってたんですよ、次は知念里奈さんの代役で『ジキルとハイド』に出られますよね)。そしてケラさんがキャラメルボックスのファンに追いかけられる夢の話・・・これは書けません(笑)。
カーテンコールでケラさんよりご挨拶。「次回公演があるかどうかはわかりませんが、やるとしてもまたこんな感じのをやりますので、今回面白くなかった方は来ないでください」とのこと。悪ガキは悪ガキのままなのだ。
パンフレットも相当に無駄な努力の賜物だったようです。ちょっぴり惹かれたけどね、1800円は高かったから私は買わなんだ(笑)。
出演=犬山イヌコ/大堀こういち/KERA/新村量子/手塚とおる/藤田秀世/峯村リエ/みのすけ/三宅弘城/横町慶子
作・演出・音楽=ケラリーノ・サンドロヴィッチ 舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:秋山光洋 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 衣裳=山本華漸(Future eyes) 映像:上田大樹(INSTANT wife) 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 宣伝美術=坂村健次(C2デザイン) タイトルロゴ=おがわまさひろ 野中和美 宣伝写真=江隅麗志 宣伝ヘアメイク:山下まきえ 山本絵里子 舞台写真:引地信彦 票券=土井さや佳 制作助手:市川美紀/寺地友子 制作:花澤理恵 企画・製作:(株)シリーウォーク
全席指定/前売¥5,800/当日¥6,300 P=プレビュー公演(全席指定/前売¥4,800/当日¥5,300)
トーキョーあたり:http://www.sillywalk.com/nylon/part-time/0505_8.html#kenko
シリーウォーク:http://www.sillywalk.com/
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文学座『戯曲 赤い月』08/23-09/02紀伊國屋ホール
なかにし礼さんの実のお母様がモデルになった自伝的小説の舞台化です。ラジオドラマ化、テレビドラマ化、映画化されたロングセラー小説なんですね。なかにしさんご自身による戯曲執筆で、鵜山仁さんの演出です。今年の文学座の目玉公演と見えて、旅公演の日程もすごいですね。
あらすじはこちらでどうぞ。
レトロモダンなイラストのチラシに完全にだまされたなぁ(笑)。まさかこんなに直球ど真ん中の大河ドラマとは思いませんでした。でも観てよかったですけどね。
1910年頃。満州国へ行ったら大儲け!と国家に踊らされて異国へと渡り、苦労はしつつも豊かで幸せな10余年を過ごしたが、敗戦したとたん国家にゴミのように捨て去られて、命からがら日本へと引き揚げて来られたのは終戦から1年後の夏だったという、非業の運命にさらされた日本人の姿が描かれます。
「国家は何があっても責任を持って国民を守ってくれる」というのは幻想だということを、肝に銘じなければいけないと思いました。でも国家をバカにする気持ちなんて全くないんですよ、私は今の日本にとても感謝しています。ただ、考えなしに国家に甘えたり、依存してはいけないと強く確認しました。自分の頭できちんと考えて、自分のことは自分が責任を持って生きていかなければいけませんね。
こういうことを自覚できただけでも、この作品を創って上演してくださった方々に感謝したいです。なかにしさんの自伝的作品であることも大切ですよね。戦争の記憶は、こうやって何度も何度も繰り返し確認し、後世に伝えていかなければならないと思います。
演出はスタンダードでスマート。普通の新劇のスタイルというか、全く問題ないし、特に奇抜なシーンもなく、全体的に無難な感じ。満州国、ハルビン、小樽、引き揚げ船の中、列車の中、ホテルの中など場面がどんどん変わるのですが、転換の度にちょっともたついているようでした。今日は初日でしたしこれから改善されるでしょうね。
ヒロインの平淑恵さんはキラキラ輝く肝っ玉母さんでした。かっちょえーです、いつもながら。でも、恋におぼれる悪女ではなかったですね。鐘下辰男さん演出『サド侯爵夫人』@新国立劇場でのサン・フォン伯爵夫人役で見せてくださったゾクっとするほどの妖艶さを、ここでも遠慮なく発揮していただきたかったです。
ここからネタバレします。
波子(平淑恵)はかなり快活で大胆な女性で、結婚すれば出世間違いなしの軍人・大杉(大滝寛)のプロポーズを蹴って、熱心に愛の告白をしてきた馬車ひきの勇太郎(石田圭祐)と結婚します。大杉の助けを得て2人は満州で酒造会社を成功させますが、波子は再会した大杉と一夜を共にしてしまうし、家に出入りしていた商社マン(実はスパイ)の氷室(長谷川博己)にも心を寄せており、嫉妬のあまり氷室の恋人のロシア人家庭教師を「スパイだ」と密告してしまいます(その結果、ロシア人女性は氷室の手にかかって殺されました)。でも、波子がそんな激しい恋心を持っている女に見えなかったんですよね。
また、長谷川博己さんと平淑恵さんが恋に落ちるっていうのは・・・いただけないですね。どうしようもないことなんですが、実年齢が離れ過ぎです。30代後半以上の男優さんだったら問題なかったんじゃないかしら。そりゃー長谷川さんは大人気ですし、彼がこんな大役に抜擢されてファンとしては嬉しいんですけど(笑)、ラブシーンとかキスシーンとかが嘘っぽいのは悲しいです。
大杉を演じられた大滝寛さん。満州国人民を助けに行くと言って玉砕していく時の、一人長ゼリフには泣かされました。
長男役でアコーディオン演奏を披露された石橋徹郎さんは、日本軍人とロシア軍人をほぼ交互に演じられていて驚きました(笑)。ものすごい形相が、かっこ良かったです。
≪東京、高知、須崎、高松、丸亀、徳島、阿南、鳴門、松山、今治、桐蔭、姫路、神戸、京都、彦根、和歌山、泉南、紀北、岸貝、大阪≫
出演=南一恵/平淑恵/立石まゆみ/草野万葉/上田桃子/塾一久/石田圭祐/石川武/大滝寛/今村俊一/鈴木弘秋/石橋徹郎/川辺邦弘/長谷川博己/尾崎愛/松垣陽子/川口潤(子役ダブルキャスト)/塩川真人(子役ダブルキャスト)※私が観たのは川口潤さん。
作=なかにし礼 演出=鵜山仁 装置=倉本政典 照明=金英秀 衣裳=宮本宣子 音楽=甲斐正人 音響効果=望月勲 舞台監督=黒木仁 演出補=今村由香 制作=矢部修治 川上裕子 票券=松田みず穂 宣伝画=鶴田一郎 宣伝美術=近藤一弥
[全席指定] 一般5,500円 学生3,800円(劇団扱いのみ)
文学座内:http://www.bungakuza.com/redmoon/index.html
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