2005年09月13日
フジテレビジョン『燕のいる駅』09/06-27東京グローブ座
エントランス前のポスター
東京グローブ座のジャニーズ所属の男の子が主演の演劇シリーズ。MONOの土田英生さんの脚本を青年座の宮田慶子さんが演出。東京サンシャインボーイズに参加していた宮地雅子さん、相島一之さんも出演される豪華キャストです。
前知識ゼロで伺ったので、舞台設定およびストーリーに驚かされました。敢えて宮田さんはこういう作品を選ばれたのでしょうね。たしかに意義のあることだと思います。でもジャニーズのアイドル主演でやることないんじゃないかと思いました。キツかった・・・。
舞台写真あり↓(2005/09/27追記)
相葉雅紀主演『燕のいる駅』公開舞台稽古
タイトルから「ド田舎の駅を舞台にした青春悲喜劇かなぁ」と想像していましたが(なんて安直な・・・苦笑)、全然違いました。
ここからネタバレします。これから観に行かれる方はお読みにならない方が楽しめると思います。
≪あらすじ≫
舞台は2085年、燕が巣を作る季節。日本村3番駅は、昔ながらの日本の駅の佇まいが残っている小さな駅。若い駅長(相葉雅紀)と売店の店員(大西麻恵)は、誰も来そうにない駅でおしゃべりをしている。2人の間にはほんのりと恋の気配。
突然、特急が駅に急停車することになった。隣りの駅で人身事故が起こったためだ。会社員3人と、赤いバッチを身に着けた女性1人、大学の卒業旅行中の女の子4人組が、列車から降りて日本村3番駅で足止めされることになる。
その時代の日本⇒外国人は排斥され、日本村の外にある収容所に強制収用されている。外国人をリストラし、日本人だけを雇いいれる企業が増加している。外国人と結婚した日本人は左胸に赤いバッチを着用することが義務付けられている。直射日光は身体に害があるため、人々は外出時に真っ白い服およびマントを着用しなければならない。
※MONOのサイトにあらすじあり。1997年発表の作品を加筆・修正されたそうです。
≪ここまで≫
まさか近未来の話で、人種差別・隔離が政策として行われている日本が舞台だとは・・・全くの予想外でした。恐ろしすぎて、ときどき吐き気がしそうになりました。
「(フランスパンぐらい)大きなミミズを見た!」「そんなの居るわけないでしょっ」と笑い話をしている女の子集団の横で、「最近は突然変異でそういうのホントに居るのよ」とつぶやく会社員。
人身事故が起きた駅と反対の方角に、パンダのような、タヌキのような形をした雲が見える。「おもしろ~い」と言いながら眺めていると、「そんな雲の下では人がたくさん死んでいるんだって、教授が言ってた」と、大学時代の思い出話がポロリ。
ふわふわと楽しげに交わす何気ない会話と同時進行で、死(それも大量虐殺)に直結する出来事が起こっているのです。でも、誰も気づかない。
木造の懐かしい駅の奥には、リニアモーターカーが停車しそうな、銀色に光るドーム状のホームが見えます。ドームの壁面にカラーの電光掲示板が光っていて、「電車が到着します」などの文字が左右に流れます。巨大などぎつい赤色の文字で「内まわり電車が発車します」と出た時は恐ろしかったです。だって、それに乗ったらあのパンダ雲の方へと行くんですものね・・・。
覚えておきたいと思ったセリフを2つ(完全に正確ではありません)。
「怖いですよね、何も知らない間に」
→夫を収容所送りにされる妻の言葉
「行列の中にいると、自分がどこに居るのかわからなくなる」
→外国人排斥に反対して警察に捕まった男の言葉(姉からの伝聞)
一昨日(2005/09/11)の選挙で自民党があんなに圧勝したことに、私はとても驚きました。夜中の3時過ぎまで、選挙結果を伝えるテレビをずっと見続けていました。私の母国、日本で一体何が起こったのかをしっかり理解して受け入れるには、情報のシャワーとそれを浴びる時間が必要だったのでしょう。
「国民の総意」があらわれたとされるこの選挙において、私は何を望んでいて、結果、私の望みは叶ったのか。そして結果が出た今、私はこれからの日本がどのようになって欲しいと思っているのか。
このお芝居の中の日本のように、私の日本が「何も知らない間に」私の望まない世界になってしまうことのないように、しっかりと目を見開いて、自分の位置を確認しながら生きていかなければと思います。
駅長役は相葉雅紀(あいば・まさき) さん。「嵐」のメンバーです。ジャニーズのアイドルですし、初舞台でしょうし、可もなく不可もなくというところでした。設定上は売店の店員(大西麻恵)のことを好きなはずなんですが、嫌っているように見えました。のたうちまわって泣いて息声を絞り出すのとか、大変そうだなぁと思いました。そんなシーンが長すぎます。
売店の店員の大西麻恵さんと、その友人で、警察につかまった弟に毛布を届けようとしている姉役の岩崎ひろみさんの演技がひどくて、見ていられませんでした。
宮地雅子さん、相島一之さん、そのほか実力のある若手俳優が出演しているにもかかわらず、ドタバタと落ち着きのないシーンばかりで残念でした。
赤バッチをつけた日本人なのに収容所送りにされることになった、駅長(相葉雅紀)の幼なじみ役を演じた猪野学さんが、涙を誘うシーンを作っていました。私も泣けましたが、感動はしませんでした。あからさまにお涙頂戴な感じがしてしまったので。
ラストシーンでは、電光掲示板に真っ青でさわやかな空が映し出されました。その中央で赤い小さな爆発が起こり、そこから白くて茶色い雲がどんどんと空を覆うように広がっていって、とうとう画面は雲だらけになります。舞台中央では駅長が、燕の死骸を大切そうに手で包みながら立ちすくみます。鮮明に表現しすぎじゃないかな。出演者およびその客層に合わせたのかもしれませんね。私は好きになれないですが。
出演=相葉雅紀/大西麻恵/岩崎ひろみ/猪野学/野口かおる/加茂美穂子/亀田佳明/四篠久美子/村上寿子/藤井咲有里/小西美帆/宮地雅子/相島一之
作=土田英生 演出=宮田慶子 美術=松井るみ 照明=中川隆一 音響=長野朋美 衣装=半田悦子 ヘアメイク=佐藤裕子 舞台監督=澁谷壽一 主催=フジテレビジョン(東京公演)・関西テレビ放送(大阪公演) 企画・製作=フジテレビジョン 制作協力=東京グローブ座 運営協力=キョードー大阪(大阪公演) 協力=博物館明治村
S席8500円 A席7500円 B席5500円 全席指定
≪東京、大阪≫
公式=http://www.fujitv.co.jp/events/stage/st050906tsubame.html
東京グローブ座=http://www.tglobe.net/
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