2005年09月20日
サントリーホール『市村正親One Actor's Show ペール・ギュントの旅』09/15-23サントリーホール 小ホール
市村正親さんが一人で歌って踊って語る、イプセンの詩劇『ペール・ギュントの旅』。サントリーホール主催の演劇公演で、小ホールをこんなに長期で借りた公演は初だそうです。
音楽と歌詞にムリがあって聞きづらいなぁと思いながらの2時間強(休憩20分を含む)。でも最後にはやっぱり満足させてくださいました。市村さんバンザイ!
グリーグ(Edvard Grieg)作曲の“ペールギュント組曲”の「朝」なども演奏されました。
≪あらすじ≫
若いホラ吹きペール・ギュントがノルウェーの森の中の家を出て、波乱万丈に異国を旅して50年。70歳になって故郷に戻ってきたら・・・(幕にそったあらすじはこちら。でも今作品とは少々違いがあります)
≪ここまで≫
小ホールはおそらく何もない四角い空間。そこに凸型のステージ。奥にはズラリと生演奏の方々。市村さんはキャットウォークのように出っ張ったステージを自由に動き回ります。観客席はコの字にステージを囲んでいて、私は舞台に向かって左側の席でした。
とにかくね、市村さんが近い!!!最前列なんて思いっきり「小ホールで、君と握手!」状態だよ!私は残念ながら最前列じゃなかったのですが、それでも帝国劇場の遠さを思えばね、ドッキドキの近さです。
音楽はほとんどシャルル・アズナブールのシャンソンで、グリーグの“ペールギュント組曲”からも数曲使われていました。アズナブールの曲はこう、ねっとりセクシーな感じで素敵なんですが、このお話には合ってなかった気がします。
ほぼ何も無いと言える舞台で市村さんが一人でがんばって・・・という内容でしたので、歌(歌詞と音楽)が良くないとじっと集中してるのは難しいんですよね。なので少々眠くなったりもしました。横の席だったのもつらかったかな。遠くても正面から観たかった。
『ペール・ギュントの旅』は『人形の家』でも有名な劇作家イプセンの詩劇です。かなりわかりやすく、カジュアルな演出でしたが、最後のメッセージには感動しました。物語の中に色んな隠喩(メタファ)があるようです(イプセンですもんね)。
ここからネタバレします。
ソルヴェイグに一目ぼれをしたけれど、金に目がくらんで他の女と結婚したペール。(中略)旅にでて奴隷貿易などで大儲けしたペールだが、船が難破して財産をすべて失った。70歳になって故郷に帰ると、なんとソルヴェイグはずっとペールの帰りを待っていた。
謎めいたボタン作り(の男)が、帰ってきた老人ペールに言います。
「お前を待っていたんだ。お前は自分を殺したことがない。だからお前の魂を溶かしてボタンをつくるのさ」「そしてお前はお前だったことがない」
ペールは戸惑います。
「自分を殺すって一体なんだ?」「俺が俺だったことがない?だったら俺はいったい何なんだ?」
そしてソルヴェイグがペールに向かって言います。
「大丈夫。あなたは、私の信仰、私の希望、私の愛に包まれていた。」
「自分を殺す」というのはつまり「誰かを愛する」ということだと思います。ソルヴェイグは自分を殺し、ペールを愛していた。ペールは自分の心に蓋をして、地位や名声、金におぼれていた。でもソルヴェイグの愛を知って、ペールは愛されていた自分を知り、そこに自分自身を見出します。
このソルヴェイグからペールへの愛を、市村さんは自分から観客への愛としても表現してくれるんです。なんて素敵な人なんだ!以下、市村さんのカーテンコールでのお言葉です。
「『デモクラシー』、『モーツァルト!』と続いたので、半年間はつかまっていて、久しぶりに9月が休みのはずだったんですけど・・・(会場で笑いが起きました)。でもね、何かやれば、誰か(あなた)と会える。そう思っていつもやってしまうんです(笑)。」
"Peer Gynt"
出演=市村正親 演奏=城所潔(Pf)他 クインテット
構成台本・演出=鈴木理雄 台本協力=市村正親 美術=石井みつる 照明=原田保 衣装=小峰リリー 音楽=城所潔 音響=実吉英一 振付・ステージング=司このみ 舞台監督=小笠原響 制作=神林克樹(サントリーホール)/片野由利子(サントリー(株)) 主催=サントリーホール 協力=(株)ホリプロ
10000円(指定席) 一般発売日 6月19日(日) 12ステージ
公式=http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=59
サントリーホール内=http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/perform/2005/0915.html
ぴあ=http://t.pia.co.jp/promo/play/i_masachika.jsp
「ペール・ギュント」市村正親が一人芝居=http://www.asahi.com/culture/theater/TKY200509150239.html
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SHINKANSEN☆PRODUCE INOUE-KABUKI『吉原御免状』09/08-10/05青山劇場
劇団☆新感線の新作は、隆慶一郎さん原作の時代小説の舞台化です。堤真一さんと松雪泰子さんを主役に迎え、劇団☆新感線のメンバーも勢ぞろい。立見席も完売した大人気公演です。
キャストも装置も何もかもが超豪華な作品なのですが、私は面白みを感じませんでした。別に劇団☆新感線で舞台化しなくても・・・と思いながらの約3時間でした。
舞台写真あり↓(2005/09/29追記)
SHINKANSEN☆PRODUCE いのうえ歌舞伎『吉原御免状』公開舞台稽古
大胆松雪泰子…舞台「吉原御免状」でナマ脚露出!
≪あらすじ≫
赤ん坊の頃に宮本武蔵に救われ、肥後の山で剣術を学んで育った松永誠一郎(堤真一)は、師匠の遺言に従って江戸の遊郭「吉原」の創設者・庄司甚右衛門(藤村俊二)をたずねる。
家康より与えられた“吉原御免状”を奪おうとする裏柳生(古田新太ら)の激しい攻撃に立ち向かう中、「吉原」の本当の姿が浮かびあがる。そして誠一郎の出生の秘密も明らかになり・・・
≪ここまで≫
原作小説はこちら↓。あらすじ等も詳しく載っています。
舞台が吉原ですので艶やかなおいらん・遊女尽くしです。そりゃーもーキレイですよ。美術はダイナミックな回り舞台で、立ち回りにしても場面転換にしても見事な演出でした。でも・・・面白くなかったんだな~・・・。役者さんでかっこ良かったのは堤さんだけだったし・・・・。
私は新感線が大好きなので毎回欠かさず観たいと思っています。誰も真似できないようなダイナミックな舞台装置、豪華絢爛な衣裳、ムダなほど大音量のロック・ミュージック、それを背負っても負けないシンプル&男意気のあるストーリー。キャスト・スタッフに日本演劇界の頂点ばかりが集結しているのに、「大の大人が何やってんの!?」と目を疑いたくなるようなおバカな笑いの連発!これらの新感線にしかないもの、新感線にしか創ることができない世界に、私は10,000円ものお金を喜んで払っています。
だけどこの『吉原御免状』では、私が期待している新感線らしさが見つけられませんでした。新感線は、正面切ってキバって男らしさを見せている所に、完全にハズれるような笑いを創ってくれるからかっこいいと私は感じています。シリアスな歴史ものとか、時代ものとか、遊女のエロスとかは他の劇団(団体)の方が得意だと思うんですよね。だから何かにつけ中途半端に見えました。
笑いがほぼゼロっていうのはリスクが大きいですよね。『SHIROH』などとは違って新感線所属の役者さんが重要な役どころに採用されているのですから、新感線らしい笑いを入れないと荒が目立つと思います。古田新太さんがただの悪役っていうのは物足りないです。古田さんじゃなければ出来ない役ではありませんでした。高田聖子さんの出番が少なかったのも残念。
見得を切るところで「チョーン」と拍子木の音のような効果があるのですが(いのうえ歌舞伎ではおなじみ)、役者さんがガツンと勝負してくれている時は合うのですが、自信なさげで段取りを超えられていない時は鳴ること自体に寂しさが漂います。そのためか、音楽もちょっとダサいなぁと思いました。殺陣も精彩を欠きましたね。どうしたのかな。
2大ヒロインの一人の京野ことみさんが、おいらん役なのに着物を着こなせていなくて、セリフにも心が入っていませんでした。衣裳がものすごく重たいのでしょうし、こっぽりは歩きづらいでしょうし、大変なのはよくわかります。でもそこは女優さんなんですからもっと頑張ってもらいたいですね。
運がいいのか悪いのか、「新感線でこんなに良い席なのは初めてだよ!!」っていうぐらい良い席だったのに(前から6列目のど真ん中)、こういう感想なのがまた悲しい。
堤さん演じる松永誠一郎の素朴でさわやかなキャラクターが新鮮でした。ふくらはぎと太ももを堪能致しました(笑)。
ここからネタバレします。
庄司甚右衛門(藤村俊二)が誠一郎に言う「優しさはワルだ」というセリフに強く共感!藤村俊二さん、どうぞお体を大切にしてください。心から応援しています。
勝山(松雪泰子)に対する残虐な私刑シーンがありましたが、松雪さんの顔はそのままでしたよね。女なのだから顔を傷つけるのは必須じゃないのかと。ちょっと興ざめ。しっかしひどい私刑でしたよね。あんなに下劣なことは新感線の舞台では観たくなかった、というのが一ファンの感想。
★読者の方からメールを頂戴しました。原作でも顔は傷つけていなかったそうです。失礼いたしました。(2005/09/22)
≪言及ブログ≫
某日観劇録
→こんなに褒めている方もいらっしゃいますので、もしかすると日が経って良くなったかもしれませんね。私が拝見したのは9/13(火)ソワレです。
出演=堤真一/松雪泰子/古田新太/京野ことみ/梶原善/橋本じゅん/高田聖子/粟根まこと/藤村俊二/逆木圭一郎/右近健一/河野まさと/村木よし子/インディ高橋/山本カナコ/礒野慎吾/吉田メタル/中谷さとみ/保坂エマ/村木仁/川原正嗣/前田悟/二木奈緒/田畑亜弥/金子さやか/鶴水ルイ/熊本梨沙/鈴木かすみ/長谷川静香/武田みゆき/中間千草/仲里安也美/嶌村織里江/横山一敏/藤家剛/武田浩二/佐治康志/矢部敬三/三住敦洋/富永研司/吉田和宏
原作=隆慶一郎 脚色=中島かずき 演出=いのうえひでのり 美術=堀尾幸男 照明=原田保 衣裳=小峰リリー 音楽=岡崎司 音響=井上哲司 音効:末谷あずさ/大木裕介 振付=川崎悦子 殺陣指導=田尻茂一/川原正嗣/前田悟 アクション監督=川原正嗣 ヘアメイク=河村陽子 小道具=高橋岳蔵 特殊効果=南義明 大道具=俳優座劇場 歌唱監督=右近健一 演出補=小島靖 演出助手=山崎総司 舞台監督=芳谷研 宣伝美術=河野真一 宣伝写真=野波浩 宣伝画=東學 宣伝衣裳=小峰リリー 宣伝ヘア=河村陽子 宣伝メイク=内田百合香 協力=日本刀専門店銀座長州屋 宣伝=ディップス・プラネット 広報・票券=脇本好美(ヴィレッヂ) 制作協力=サンライズプロモーション東京(東京公演) 制作助=川辺美代 瀬作補=小池映子(ヴィレッヂ) 協力=新潮社 企画=前田三郎(キョードー東京) 制作=柴原智子(ヴィレッヂ) エグゼクティブプロデューサー細川展裕(ヴィレッヂ) 企画・製作=劇団☆新感線・ヴィレッヂ
*劇団☆新感線が初めて小説原作の舞台化に挑戦。原作は隆慶一郎の時代小説『吉原御免状』。
S席¥10,500 A席¥8,400 Z席¥5,500 立見席¥5,000
≪東京、大阪≫
公式=http://www.vi-shinkansen.co.jp/
イープラス特集=http://eee.eplus.co.jp/s/yoshiwara/
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ユニークポイント『脈拍のリズム』09/14-19OFF OFFシアター
ユニークポイントの作品を観るのはこれで2度目です。「突然娘を失った、ある夫婦の物語」というキャッチコピーを見ただけで避けていたのですが(悲しい話は得意じゃないので)、複数の人からの薦めがあって千秋楽にお邪魔しました。
案の定、というか恐れていた通り、上演中は涙涙、鼻水鼻水、ハンカチハンカチ、たまにティッシュ・・・という一人顔面戦争状態でした(涙目)。
あらすじはこちらです。よくできた公演ページだと思います。作品を愛しているのが伝わってきます。
人が死ぬ芝居は山ほどあります。最近はありすぎるぐらいです。だけどこの作品は、人が死ぬ前、死んだ瞬間、死んだ後を真摯に丁寧に描いており、一人の人間の死という出来事の大きさ、重さを本気で伝えようと勝負していました。
なんて真面目なんだろうって感心しちゃいます。こんなつらいテーマをわざわざ選んで、しかも真っ向勝負です。※公演が終了していますので、ここからネタバレします。
6歳の一人娘を事故で失った夫婦は、「どうして(なぜ)?」と、毎日、24時間、ずっと問い続けるしかない。そして自分の存在を否定するまでに自分自身を追い込んでしまう。そんな夫婦の生々しい姿を見つめて、私は涙ぼろぼろ。胃まで痛くなってきました。
車で少女を轢いてしまった加害者は若いOLでした。彼女の婚約者があまりに礼儀知らずな若者で、見ていてイヤな気持ちになりました。保険会社の社員もまた、その婚約者と同様に世間を表すものとして登場していましたが、2人ともちょっとわざとらしい気がしました。演技もそうですが、意図的にイヤな人(イヤな気持ちにさせる人)を登場させているように感じてしまったからです。こういうお芝居では役者さんの技量の差やちょっとしたセリフのすれ違いなどが大きなリスクになるんじゃないかな。
少女が車道に飛び出したのは、向かい側でぬいぐるみを動かして彼女を誘う人間がいたからだった。それは父親の後輩の妻だった・・・というどんでん返し的なエンディングには、ちょっと興ざめでしたね。彼女が3度も流産をしているということから辻褄は合いますが、先述のイヤな人と同様、「何かを伝えるために誰かを登場させる」とか「○○と言わせるために△△をしたことにする」というような、仕組みがあるような気がしてしまうからだと思います。また、真実が判明した時の後輩夫婦の演技がおぼつかなかったかも。
舞台は夫婦が住む部屋の台所でした。シンクや電話台などは本物の家具を使っていましたが、部屋を囲むのがパネルではなく、細長い木の棒を網のように組んだものでした。劇場の壁がその木の隙間から露出していたので、狭いながらも透明感と広がりを感じられる気持ちの良い空間でした。上手の舞台上の柱もうまく使われていました。
出演=山路誠/安木一之/石橋龍/畑中友仁/中村紗夢/衣川真生/高田愛子/大野由美子
作・演出=山田裕幸 照明=福田恒子 音響=北川絢香 音響アドバイザー=井出比呂之 美術=福田暢秀(F.A.T STUDIO) 宣伝美術=kibito-design 宣伝コピー=千葉広樹 演出助手=ぼう 稽古場協力=にしすがも創造舎 主催=ユニークポイント
料金 一般2800円 学生2000円 事前入金割引2500円
前売り開始 8月13日(土)
劇団=http://www.uniquepoint.org/
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