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しのぶの演劇レビュー
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2005年09月27日

(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場『ニセS高原から~「S高原から」連続上演~』08/28-09/27まとめページ

 4人の演出家が率いる4チームによる『S高原から』連続公演企画。
 公式サイトはこちら

 蜻蛉玉組→レビュー劇団サイト
 五反田組→レビュー劇団サイト
 三条会組→レビュー劇団サイト
 ポツドール組→レビュー劇団サイト

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Posted by shinobu at 20:56 | TrackBack

(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場『ニセS高原から【ポツドール組】』08/28-09/27こまばアゴラ劇場

 『S高原から』連続上演も、蜻蛉玉組五反田団組三条会組と拝見して最後はポツドール組です。唯一ポストパフォーマンストークのあった9/18(日)ソワレは早々に完売、その他の日のソワレもどんどん売り切れており、平日マチネに伺いました。
 今日でポツドールは千秋楽だったんですね。アゴラ劇場は超満員でした。小さなイスをどんどこ追加して出して、沢山のお客様を座らせてくださった制作の方々、ありがとうございます。

 これがポツドール初体験になった私ですが(怖くて観にいけなかったので)、めちゃ楽しんじゃいました。
 9/30(金)からはオリジナルの平田オリザ版が開幕しますよ~っ!詳細は青年団のサイトへ。

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 ≪あらすじ~公式サイトよりそのまま引用≫
 近未来、夏。高原のサナトリウムの面会室が舞台。
 このサナトリウムには、不治の病におかされた患者たちが多く入院しています。下界から隔離されたサナトリウムでゆっくりと流れていく時間。死を待つということの意味が、その時間の中で淡々と語られていきます。
 患者たちと、そこを訪れる面会の人々や医師たちとの死や時間に対する観念の差異を微妙に描きながら、軽妙な会話を交えて、サナトリウムでの何も起こらない静かな午後が描かれていきます。
 ≪ここまで≫

 脚本はかなり書き換えられており、登場人物の人数や役名・性別・身分はほぼ同じなのですが、それぞれの性格と人間関係が全く違いました。

 「平田オリザによる、死と向かい合う人間たちの残酷だけれど静かで美しい世界が、悪とエロにまみれている」という、知人からのコメントを聞いて楽しみにしていたのですが、まさにそのとおり。劇場に入るなり、大音量の「セックス、セックス」って叫ぶパンク・ミュージックみたいなものが聴こえて、私は吹き出しちゃいました(笑)。

 原作のセリフの中で特に触れられなかった、サナトリウムでのタブーについて露骨に言及しているのが痛快です。人間の善行の皮を丁寧に、そして意地悪く剥がしていくようでした。むけて出てきた生々しい欲望はみっともなく、滑稽で、観客はそれを嘲笑するようにクスリとします。

 ・死にそうになっている病人がいっぱい居る場所で、テニスをやろうと嬉しそうに運動着に着替えている健常者に向かって、病人の村西(米村亮太朗)が悪意満面で苦言する。
 ・村西の彼女・大竹(田代尚子)は、他人と結婚することを村西に直接は伝えず、自分の友人・佐々木(六分一沙良)に伝言を頼む。大竹からの別れ話を伝えた佐々木に向かって、村西は「てか、お前誰だよっ!」と怒る。また村西は、大竹が結婚する相手が誰なのかを詮索する。佐々木は村西の態度が悪いと責める。
 ・面会室のベルが鳴ると看護士(松井周)は御用聞きにやってくる(ジュースを出したりするため)。用がないのに鳴らされて、何度も無駄足を踏んだので「みんなで悪巧みをして私をからかっているんだろう!」と怒鳴る。
 ・「20世紀最後の天才画家」だと噂されていた病人・西岡(宮崎叶夢)だったが、実は彼は画家でもなんでもなかった。彼自身がついた嘘だった。訪れた彼女(玄覺悠子)は水商売をしている女だった。
 ・看護婦が患者に「○○さんが死にそうだ」という情報を漏らしていたことがバレて、女医(中島美紀)と看護婦(山本裕子)が大ゲンカする。
 ・病人の福島(多田淳之介)を見舞いに来た3人組は和気あいあいと楽しそうにしているが、裏ではお互いの悪口三昧。 

 大勢集まって好き勝手におしゃべりするシーンがすっごくうるさいんです。何をしゃべってるかなんて、ほとんど聞き分けられないし、皆が無神経なので見ていてムカついてくるぐらい。だけど、その中の一部でケンカが始まったり、スキャンダラス(ハレンチ)な話題になると、場がシーンとなって誰もがその話に注目するようになります。その場しのぎの嘘っぱちの社交はやっておいた方が楽だから適当にこなすけれど、他人の不幸や恥には本気で興味があるから、みんな聞き耳を立てるんですね。そして、火の粉がかからないようにしっかり保身します。

 テニスを見に行こうとしたけれど眠くてソファに横たわってしまった病人・福島(多田淳之介)に向かって、お見舞いに来た彼女の友子(羽柴真希)が話しかける終盤のシーンで、初めて愛とか恋といった、相手に対して暖かい感情のこもった演技とセリフを見ることができました。でもすぐに福島がセックスの話をしてムードをぶち壊しにします。「せっかくいい感じだったのに~」と一度は悔しがる友子も、さっさと福島を置き去りにしてテニスに行ってしまいました。友子は「福島がいなくなったら寂しいな~」と、一瞬思っただけなんですね。彼女もやはり自分のことしか考えていないのです。

 嘘つきで、悪意にまみれていて、自分のことしか考えていない、甘えきった人間ばかりが舞台の上に居るのですが、作品から生まれている空気は全く揶揄的ではなく、投げやりでもありませんでした。「死」が迫った人間の最後の悪あがきという深刻さはありません。“愚かな人間たちを見守る暖かい神の視線”もありません。意地悪で、不良で、クールな大人が軽やかに俗世をスキップしているような感じ、かしら・・・なんかね、かっこよくって気持ちよかった!

 カーテンコールがないお芝居って拍手するタイミングを失って手持ち無沙汰になり、すっきりしないことが多いんですが、この作品についてはなくて正解だったと思います。突然無人になった舞台を観ながら、開場時と同じ音楽が流れる中、しばらくじっと座って残り香を味わいました。

 ポツドール組は、平田オリザさんのオリジナル版か、比較的プレーンな仕上がりだった蜻蛉玉組と五反田団組のどちらかを見てからの方が、比べる楽しみがあったんじゃないかなぁと思います。

~「S高原から」連続上演~
出演=大木伴与/小倉ちひろ/倉沢学/玄覺悠子/遠藤留奈/田代尚子/多田淳之介(動物電気/東京デスロック)/富田恭史(jorro) /中島美紀(ポかリン記憶舎)/羽柴真希(ペテカン)/古澤裕介/松井周(青年団)/宮崎吐夢(大人計画)/山本裕子(青年団)/米村亮太朗(ポツドール)/六分一沙良(あかいめ) ※キャストは50音順 ★桜子が体調不良の為降板し、代わって遠藤留奈が出演。
原作=平田オリザ 演出=三浦大輔(ポツドール) 舞台美術=杉山至×突貫屋 照明=《五反田団・蜻蛉玉・ポツドール》岩城保《三条会》佐野一敏(三条会) 音響=薮公美子 宣伝美術=藤原未央子 制作=榎戸源胤(五反田団) 尾形典子(青年団) 木下京子(ポツドール) 斉藤由夏(青年団) 田中沙織(蜻蛉玉) 演出助手=《ポツドール》福本朝子 プロデューサー=前田司郎 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 企画制作=五反田団・三条会・蜻蛉玉・ポツドール/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
前売・予約・当日共=2,000円 セット券=6,000円※予約のみ・枚数限定 こまばアゴラ劇場電話予約のみ取り扱い 03-3467-2743
公式=http://nise-s-kogen.com/

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Posted by shinobu at 20:41 | TrackBack