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REVIEW

2005年10月03日

(財)三鷹市芸術文化振興財団/スロウライダー『むこう岸はエーテルの国』09/30-10/02三鷹市芸術文化センター 星のホール

 小さな空間で独自のダークな世界を作っているという噂を聞いていたスロウライダー。私は初めて伺いました。
 三鷹市芸術文化センターの星のホールは新しくてきれいな劇場で、舞台の間口がとても広い空間です。残念ながらその大きさを味方にはつけられなかったようです。公演は終了していますのでネタバレします。

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 ≪あらすじ≫
 男鹿(芦原健介)の家で同人誌研究会のメンバーが合宿を開くことになった。男鹿の家は広い和室が100室以上あるお屋敷。実はまだ増築もしているらしい。
 善意の助け合いを促進するためにエーテルという通貨が流通しており、男鹿は近所の主婦の頼みごとを聞いたりしながらエーテルを集めている。いつか貯まったエーテルを報酬として、家の中で働いている浮浪者達に兄(山中隆次郎)を消してもらいたいと思っているからだ。
 ≪ここまで≫
 
 まずセリフがとても聞こえづらかったですね。早口でもぞもぞしゃべったり、明らかに話をしている人間同士のコミュニケーションがなかったり。いわゆる若手劇団の役者さんだなぁと思って眺めていました。小さな空間だったらもっと味わいは違ったかもしれません。

 舞台は前から奥に向かって、ゴミが散在する男鹿の兄の部屋、中央の和室、その奥の和室、中庭という風に空間が4つに区切られています。膨大な数の和室を、中央と奥の2つのの和室だけで表現するのが面白いです。映画『CUBE』みたいだなぁと思いました。

 「善行の見返りとして機能する“エーテル”という通貨が流通している世界」というアイデアは凄いなぁと思いました。何をやるにもその見返りにエーテルを求める、つまり無償の愛が消滅した世界でした。「エーテルが欲しいんでしょ?あげるからさ、コレやってよ!」と当然のように勝手な頼みごとをします。これは「金を払ってるんだから、それに見合うものをよこせ!」というのと少し違うんですよね。エーテルはあくまでも「善行」に対して支払われるという前提ですから。「善い行い」という言葉の罠にはまるのって、私達が生きている今の社会でもよくあると思います。

 巨大なお屋敷はなぜか増築され続けており、それは兄の命令によるものなのですが、実は兄はすでに殺されてゴキブリになっていて・・・という不可思議な世界が徐々に現れてきます。これもたぶん小さい空間だったらゾクゾクするような恐怖とスリルが生まれていたんじゃないかな。スロウライダーは小さい劇場で上演される時にまた観たいですね。

MITAKA "Next" Selection 6th.
出演=芦原健介/日下部そう(ポかリン記憶舎)/青木宏幸/数間優一/吉田友彰/脇坂圭一郎/木田尊大/梅澤和美(Hula-Hooper)/佐藤真義(タテヨコ企画)/森啓一郎(東京タンバリン)/後藤飛鳥/山中隆次郎
作・演出=山中隆次郎 舞台監督=西廣奏 舞台美術=袴田長武(ハカマ団) 照明=森川敬子 音響=加藤温 衣裳=伊藤梨絵(コブラ会) 小道具=大橋路代(パワープラトン) 舞台監督補佐=田中隆博 演出=谷川純一(カタカナ) 山野井譲 宣伝美術=吉川久河(id production) 仲麻香 WEB運営=栗栖義臣 制作補佐=坂本明 制作=三好佐智子 企画・プロデュース=有限会社quinada 主催=(財)三鷹市芸術文化振興財団
[前売] 会員2,200円 一般2,500円 [当日] 会員2,500円 一般2,800円 高校生以下1,000円(前売・当日共)
劇団=http://www.slowrider.net/
(財)三鷹市芸術文化振興財団=http://mitaka.jpn.org/calender/star/064.shtml#s2

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Posted by shinobu at 23:38 | TrackBack

青年団『S高原から』09/30-10/05こまばアゴラ劇場

 若手演出家による『S高原から』連続公演企画の締めくくり。本家本元の登場です。舞台写真はこちら

 1991年に書かれた戯曲で、その時から20~30年後の“近未来”を描いた作品だったんですね。そういう視点で観ると『ニセS高原』の4作品とはスタートラインが全然違うんだなぁと思いました。

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 ≪公式サイトより≫
 高原のサナトリウムで静養する人、働く人、面会に訪れる人・・・。
 静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
 新演出、新キャストで、今、平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。
 ≪ここまで≫

 「死」はあんまり感じなかったですね。それよりも、資本主義にどっぷりはまり込んで、美とか命とかよくわからなくなった下界の人々(健常者)と、そういう社会とぷっつりと縁切りをさせられて、弱っていく体を自覚しつつ、ただ生きるということをコツコツ実践している人々(病人)との差異が、具体的に表れていたように思いました。
 特に画家の西岡(奥田洋平)とその婚約者(辻美奈子)のシーンで顕著でした。西岡は病院でモデルをやってもらってる前島(能島瑞穂)と恋に落ちているんだろうなぁと、ラストシーンで思いました。その前島はもう1年も持たないんですが。

 好き嫌いとか自分が楽しめたかどうかという点では、この作品は私にとってはあまり面白くなかったです。役者さんの演技がわざとらしく見えることが多かったからですね、たぶん。朗らかだったりおっとりしていたり、全体的に柔らかい印象なのに、突然ナイフで刺しかかってくるような暴力的な言葉や表情をするのが、どの登場人物にもまんべんなく仕込まれていたように感じました。

 『ニセS高原』に出ていた青年団の役者さんで今作にも出てらっしゃる方が多くて、配役が違ったりするのが面白かったです。

出演=志賀廣太郎/たむらみずほ/辻美奈子/秋山建一/月村丹生/岩崎裕司/端田新菜/能島瑞穂/古屋隆太/奥田洋平/田原礼子/古舘寛治/井上三奈子/大竹直/村井まどか/山本雅幸
作・演出=平田オリザ 舞台美術=杉山至×突貫屋 舞台美術写真=田中流 装置=鈴木健介 照明=岩城保 宣伝美術=工藤規雄+太田裕子 宣伝写真=佐藤孝仁 制作=澤藤歩 田代麻衣 西山葉子 協力=(有)あるく (株)メディアプレス 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
日時指定・全席自由席・整理番号付 前売・予約・当日共:一般=3,500円 学生=2,000円 高校生以下=1,500円
青年団=http://www.seinendan.org/
公演=http://www.seinendan.org/jpn/info/info050714.html

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Posted by shinobu at 22:30 | TrackBack