2005年10月16日
劇団唐組『カーテン[電子城IIより]』10/08-09, 10/15-16西新宿原っぱ
やっと、やっと、やっと、唐組初見でございます。テント公演って苦手なので、ずっと避けていたのです・・・で、案の定、2度目の途中休憩で帰ってきてしまいました。これはね、もうね、好みによるんです。それだけです。
舞台上の唐十郎さんをはじめて生で観て「なんて素敵なおじさんなんだ!」って思いました。面白いしカッコいいし可愛いし。
未知のままで放置していた世界と、やっと遭遇できた・・・という気持ちです。私には合わなかったですが、テント内は大盛り上がり。笑いもいっぱいですし拍手喝采ですし、客席からは、登場する役者さんに歌舞伎のように「唐十郎!」と声がかかったりしていました。
最後列の招待(だろうと思われる)席以外はすべて桟敷席です。本当の意味で桟敷。広っぱの土の上にゴザが敷いてあり、そこにそのまま座りますから。
上演時間は2時間40分、途中休憩は10分が2回。第1幕が終わった時点で帰りたかったのですが、幕の向こうでトンテン、カンテンと何かを組み立て、作っている物音がします。「そうか、装置が変わるのね??」と気づき、2幕も観ることを決意。2幕は唐十郎さんの出番が少なくて眠気にも襲われたため、次の休憩で劇場を後にしました。
お話は・・・ゲームソフトを作っている人の話、も、ありましたね。全然わからなかった、というか、ストーリーをわかろうという気力が生まれませんでした。役者さんは膨大なセリフを早口でしゃべりつづけます。すんなり意味が伝わってくることもあれば、そもそもかつ舌が悪いため言葉が聞こえてこない人もいて・・・って、こんなこと書いても意味が無い気がします。これは唐組という劇団の紅テント公演という、一つの確立されたジャンルなんだと思います。あのテントの中には“ここにしかない世界”がありました。観客にはリピーターもいっぱいだし。
唐組の役者さんって目が血走ってます。どこか、私達が住んでいる世界とは違う世界を見つめているみたい。テントから装置から何から何まで劇団員が作って、受付も観客の誘導もすべてやってから、舞台に立って演じてらっしゃいますものね。舞台の転換も休憩時間に自分達でなさってますし、しかも装置は移動させるだけではなくてバラして建て込み直すのですから大変ですよね。
でも唐十郎さんについては「血走ってる」とは感じなかったですね。舞台で思いっきり遊んでる子供みたいでした。「はるかな尾瀬~♪」って歌われたりして、爆笑しちゃった。
先日の劇団唐ゼミ★の『黒いチューリップ』よりはずっと面白かったです。パワーが違う。心根も違う。やっぱり本家本元を観ておいてよかったです。
≪西新宿原っぱ、雑司が谷・鬼子母神≫
出演=唐十郎/鳥山昌克/久保井研/辻孝彦/稲荷卓央/藤井由紀/赤松由美/真名子美佳/丸山厚人/多田亜由美/植野正士/高木宏/岡田悟一/気田睦/西川高史/野村千絵
作・演出=唐十郎 宣伝美術=合田佐知子 作曲=大貫誉 舞台美術=劇団唐組 制作=劇団唐組制作部 版下作成=森崎偏陸 協力=(株)文化印刷
唐組(唐ファン)=http://homepage3.nifty.com/shibai/
インタビューや稽古場の充実映像あり!=http://mars.eplus.co.jp/ss/kougyou/syosai.asp?kc=004296&ks=19
関連公演:Bumkamura『調教師』=http://eee.eplus.co.jp/s/chokyo/
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ヒューリッド・プロデュース『Sleepless Express』10/12-16王子小劇場
オフィス・ヒューリッドは公演ごとに役者を集めるプロデュース系の劇団です。個人的にたくさんのお友達が関係しているので観に行きました。
劇団の将来の目的・目標がまだ定まっておらず、試行錯誤しているご様子。東京にたくさんある、いわゆる“小劇場劇団”の一つでしょう。
≪あらすじ≫ 当日パンフレットよりそのまま引用。(役者名)を追加。
落盤事故によって命を落とした駅長がいた。その駅で一人佇む駅長のひとり息子(湯田昌次)。彼にはもう生きてゆく場所がなかった。止めようのない空虚と孤独。そんな彼の前に一人の少女(田中まこと)が現れる・・・
≪ここまで≫
原因不明の落盤事故で駅長や乗客が亡くなる悲惨な事故が起こった、片田舎の駅が舞台。若い売れっ子漫画家(橋本ユウキ)が体験談を語る形式で物語は始まります。
本日の夜公演が千秋楽ですので、ここからネタバレします。
チラシに“不思議なチカラと不思議な体験が小さな奇跡を巻き起こす”とありますように、日常生活では絶対に起こりえないことが次々と起こります。まず、漫画家(橋本ユウキ)が描いた漫画の中での出来事が、現実世界で起こるのです。これがそういうファンタジーって素敵だと思うんですが、根拠がないから受け入れられないんですよね。
登場人物が多すぎるし全体的に散漫でしたから、何をやりたいのか、どんな世界を描きたいのかが、この作品を作り始める時点で決まっていなかったんだろうなと思いました。
漫画の人気キャラクターのからあげマン(勢登健雄)の頭のからあげを食べて、ゾンビ(鈴木健之)に殺された刑事(古池清貴)がよみがえるのは、楽しいアイデアだったと思います。駅の名前が「じごく」や「みゆき」に変わるのも可愛いですし、ギャグも面白かったし、部分的に良いところは沢山ありました。数年前に観た作品よりもずっと良くなっているのは間違い無いですので、これから劇団の独自性を見いだして、ひとつの世界を作れるようになってくれたらいいなと思います。
王子小劇場の高い天井をしっかりと生かして、客席に対して斜めに建て込まれた舞台装置でした。下手奥のトンネルや2階の漫画家のアトリエ、吊られた鉄線など、全体の構成がとても絵になっていましたし、プラットフォームの黄色い線、じゃり石、折れた木の柵などの細かい所もすごく良かったな・・・と思ったら、美術は福田秀暢さん(F.A.T STUDIO)なんですね、ナットク。
湯田昌次さん。死んだ駅長の息子・俊介役。最初に登場した時の“引き篭もり少年”である姿がとてもよかったです。空想シーンのヲタク王子役での「アスカ(エヴァのキャラ)以外死ね!」には爆笑させていただきました(笑)。後半の深刻そうな演技は心が入っているようには思えなかったな~。
田中まことさん。不思議な少女ミユキ役。最初から最後まで役にしっかりとなりきっていたのはこの方だけだったかな。JACROW『袋小路』で初めて拝見しましたが、今回は数段レベルアップされていました。
小島フェニックスさん。駅長(長井教行)の友人で(株)エターナル重役の悪者役。アドリブ三昧だったようで(笑)、すっかり観客を自分のものにしていましたね。私もいっぱい笑わせていただきました。次回出演が乞局(こつぼね)の『雄向葵(オマワリ)』というのが意外。どんな変貌を見せれくれるのかが楽しみです。
出演=湯田昌次/田中まこと/長井教行/橋本ユウキ/黒田朋子/大湯純一/渡辺このみ/新保智子(BLUE HIPS)/吉永隆之/小島フェニックス/中村裕美/白鳥恵三郎/勢登健雄/古池清貴/鈴木健之
脚本=橋本ユウキ 演出=勢登健雄 舞台監督=杉江聡(Z.A.P) 舞台監督助手=村田真紀(グワイニャオン) 舞台美術=福田秀暢(F.A.T STUDIO) 音楽=長崎勉(london, paris) 音響=広田河(三日月座) 照明=上川真由美 小道具=湯田商店 衣裳・メイク=中西瑞美 宣伝美術・WEB=橋本ユウキ 制作=黒田朋美(JACROW)・鶴田貴子・亀川朝子 制作協力=中嶋亮太 企画・製作=オフィス・ヒューリッド
前売・当日¥2500 ウェブ予約¥2300 金曜の昼のみ¥2000
劇団=http://www.hu-lid.com/
公演=http://www.hu-lid.com/sleep/index.html
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(社)日本劇団協議会/創作劇奨励公演『痕-KON-』10/08-16青年座劇場
今井一隆さんの書き下ろしを青年座の伊藤大さんが演出されます。文化庁がお金を出しているプロデュース公演なのかな。青年座劇場に青年座の座員以外の俳優がたくさん出られています。
最近、自分の感覚が変わってきている気がしていたのですが、この作品で確信しました。舞台上でコミュニケーションをしている役者さんが好きですね、私は。それ以外の役者さんのことは、目に入りづらくなりました。
≪あらすじ≫ チラシより部分抜粋。(役者名)を追加。
とある地方の一軒家。猛暑。居間のエアコンが壊れている。修理の電気屋を待つ内田シゲル(五十嵐明)と義兄 宮本マサヤ(岸博之)。入院している父の見舞いから帰って来る母 内田アキコ(大崎由利子)と姉 宮本ミドリ(入江純)。シゲルの高校時代の友人で、同じ天文部に所属していたヤグチ(石井揮之)。ワケアリで東京の大学から帰省した、シゲルたちの従姉妹サキ(森脇由紀)。そして、父の本妻の娘 森リエコ(藤野節子)・・・。
≪ここまで≫
ある家族のお話、なのですが、ものすごく複雑な家族構成でした。しかもセリフ説明が非常に少ないため、聞き逃すとすぐに意味がわからなくなります。でも、「あ、もしかして彼女は・・・」「いつからあの関係なのかしら・・・」等と頭をぐるぐる動かしながら観るのはなかなか面白かったです。
ただ、ググっと引き込まれる対話もあれば、一方通行にセリフが発せられて言葉が流れ去ってしまうこともあり、その差が激しかったですね。もっともっと面白くなるんじゃないかと思うシーンが多かったです。
舞台中央に10畳(8畳?)ぐらいの和室があり、部屋をかこむ障子には和紙が全く貼っていないため、木の枠だけで壁がない状態です。部屋の周りには具体的なものは何も置いておらず、黒い床に白いチョークのような線で、玄関や靴箱、石畳、植木などが描かれています。チョークの線から子供の頃の遊びや『ドッグヴィル』を思い出し、面白いなぁとおもいました。
照明と音響は・・・好みの問題だと思うのですが、私はわざとらしいシリアスさを感じてしまいました。特にキメの瞬間に母親のアキコ(大崎由利子)に当てるサス(スポットライト)は、やらない方がいい気がしました。
先述しましたが、最近、自分の感覚がすごく変わってきた気がしていまして、この作品を観てそれがはっきりしました。昔だったら魅力的だとか、上手いとか思っていた役者さんが、今では下手に見えることが多いのです。
舞台の上で、本当に感情が動いているか。話している相手や同じ空間に居る人のことを感じているか。自分以外の人の言葉を本当に聞いているか・・・など、役者さんがその役柄としてお芝居の中で生きているのかどうかが、最重要ポイントになりました。
特にこの作品は、一言のセリフで多くの意味や感情を伝える必要があったため、舞台に居る役者さんの存在の仕方によって空間の重みが大きく左右されました。
一緒に観劇した人が終演後に「(舞台の上で役者がちゃんと生きていないと)メッセージが届かない」とおっしゃって、私もその通りだと思いました。その意味では、この作品の中でその役を生きていた人というと、入院中の父親の本妻の娘・リエコ役の藤野節子さんだけだったのではないかと思います。母親アキコ役の大崎由利子さんも藤野さんと一緒に居るシーンはすごく良かったのですが、他の、特にあのスポットライトが当たるところはわざとらしかったです。あれは演出のせいかもしれませんが。
ここからネタバレします。
≪あらすじ 続き≫
内田家は父、母、姉、弟の4人家族だったが、子供達が幼い頃に父親が死んでしまった。そして父親の友人だった男が転がり込んできて、いつのまにか新しい父親として住みつくようになった。それから数十年(?)経って、父親が入院。姉のミドリは宮本マサヤのもとに嫁に行き、今は妊娠5ヵ月で実家に帰ってきている。しかしマサヤはミドリが妊娠した頃から失業中。弟のシゲルは不動産屋で働いており、隣りに建つ分譲マンションの営業担当だが、近所でそのマンションの建設反対運動があったため内田家はプチ村八分状態。
母の姪(つまりミドリとシゲルのいとこ)のサキが、年の離れた男性と関係を持っていることがわかり、大学を退学してむりやり実家に連れ戻されたらしい。サキは実の母親とうまくやっていけず、叔母のアキコがしばらく預かることになった。
平和で平凡な家に見えて、実は簡単には解決できない問題が溢れかえっている内田家。そこに、父親の本妻の娘リエコが訪ねてきた。父親が死んだ時のことを相談するために。リエコは自分の父親の内縁の妻アキコに向かって、強い調子で言い放った。「父の持ち物はすべて返してください。お葬式にも出ないで欲しい」と。
≪ここまで≫
比較的淡々と会話が交わされますが、あぶり出されてくる事実がかなり厳しい、しかし面白いものの連続なので、一言一言を聞き漏らすまいと頑張って見ていました。でも、役者さんがそこに生きていないとそのセリフも聞こえてきません。それがつらかった。
本妻の娘リエコ(藤野節子)が石田家の隣りだとは知らずにマンションを購入しようとして、不動産屋のシゲル(五十嵐明)と出会っており、その二人の間にどうやら恋のようなものが生まれた、かも・・・?という前振りがありました。それ、めちゃくちゃ複雑ですよね、観客としてはぜひとも起こってもらいたいトラブルです(笑)。だって面白そう!・・・しかしながらシゲル役の五十嵐明さんがずっと“心ここに在らず”という演技だったため、リエコ(藤野節子)との間にはそんな艶っぽい雰囲気は全く生まれませんでした。
五十嵐明さんって青年座の中でもかなり重要な、中心的な役柄を演じられることが多いですよね。だけどこの作品の中で一番コミュニケーションができてなくて、言葉が紋切り型で、嘘っぽかったような気がしたんですが・・・どうしてなのかしら。ま、私の感じ方がものすごく変化したのは間違いないんですけど。これからゆっくり考えます。
出演=五十嵐明/川上英四郎/森脇由紀/石井揮之(青年座映画放送)/岸博之((株)大沢事務所)/大崎由利子((有)レトル)/藤野節子(フリー)/入江純(演劇集団円)
作=今井一隆 演出=伊藤大 装置=伊藤雅子 照明=中川隆一 音楽=後藤浩明 音響=高橋巖 衣裳=竹原典子
宣伝美術=早田二郎 舞台監督=今村智宏 制作=佐々木聡一 主催=(社)日本劇団協議会/創作劇奨励公演 制作=劇団青年座
一般 3,800円 学生 3,000円
公式=http://www.seinenza.com/performance/bunkacho/2005.html#2005-1
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