2005年11月04日
SPARKO『Witch Tank』11/03-06王子小劇場
高羽泰雄さんが作・演出されるSPARKO(スパーコ)の久しぶりの本公演です。大ファンなのですっごく嬉しい!「ガールズ・アーティフィシャル・ポップ」を新たなキーワードとして活動を再開されるそうです。
スパーコは“若手女優限定の演劇プロジェクト”でもあるので、若いピチピチ女優の品評会的楽しみもあり(笑)、私はそれにも期待しています。毎公演、最前列はお兄さんたちが陣取ってますし・・・(笑)。今回もきゃわい~女の子たちが観られました。
レビューはこちらにも⇒休むに似たり。
≪あらすじ≫
舞台は水槽、のようなタンク。小さな魔女たちが飼育されている。お隣りには魔王たちのタンクがあり、定期的に“お見合い”が行われ、マッチしたカップルは繁殖用タンクに移される。彼等の運命はすべて主人が握っているのだ。
主人には息子があり、息子とその妻との3人暮らしだが、主人と妻とはあまりうまく行っていない。まず妻の目から見たタンクの様子が描かれる。
≪ここまで≫
最初は少したどたどしい静かな雰囲気でとっつきにくかったのですが、敢えて人形のように演じられるキャラクター同士の触れ合いが少しずつ描かれる内に、ストーリーに入り込むことができるようになりました。
魔女と魔王の生活を舞台で表現しながら、彼等を飼っている人間たちのドラマも描かれます。こういう構成は第一回公演の『PLAY SET』でも観られましたね。想像力が掻き立てられてとても面白いです。
ただし今回は、舞台奥・上部のスクリーンにアニメーション映像で人間を映し出していました。味気ない人間の動きに一喜一憂する魔女・魔王たちが、バカっぽくて切ないです。でも動画と演技のコンビネーションがそれほどうまく行っていなかったのは惜しいですね。初日の1ステージ目だったからかもしれませんが。
照明とセリフだけでさまざまな場所に移動するのですが、転換の際の暗転が多く、時間も少々かかり過ぎだった気がします。女優の衣裳と演技を変えるだけで登場人物を自在に変化させられるのですから、その辺りはよりスピーディーにできたのではないかと思います。
また、ストーリーも今までの作品に比べると数段わかりやすいものになっており、ちょっと私には物足りなかったですね。とはいえ最後はホロリと来ちゃったんですが。
ここからネタバレします。
魔女と魔王たちを多世代に渡って描き、同時に彼等を飼っている人間達の家族の変遷も描かれます。人間の状況が魔女や魔王に重なるところがあるのが面白いです。親から子へ、子から孫へとつらなっていく命は人間も魔女も同じということで、坦々と切り取られた時間の羅列の中から言葉では言い表せない愛の存在を感じることが出来ました。
休むに似たり。にもありますように、衣裳が黒だったのは私も残念・・・カラフルで、ちょっとエッチな感じなのが好みですね、スパーコなら。
スパーコ所属の小関ゆかりさん、高園陽子さんはさすがの貫禄と言いますか(笑)、演じる役柄それぞれにわかりやすい特徴を持たせて、演じ分けがはっきりとしていて良かったです。スパーコ常連の佐藤陽子さんは三世魔王の若い頃と年老いた頃を連続で何度も入れ替わりながら演じられているのが大変だなぁと思いました。あそこはもったいないですね。
畔上千春さん(ダンスが上手い魔女、気高い血筋の2世魔王など)、円谷久美子さん(自分で子供を育てようとする魔女、第3幕で振られる魔王)も、人形のような、ちょっと型にはまった役作りのまま、その役の感情をしっかりと表せていて引き込まれました。
出演=小関ゆかり/高園陽子/佐藤陽子(天然ロボット)/畔上千春(ボーダビッチ)/和田好美/土谷朋子/円谷久美子/真下かおる(くねくねし)/桜井奈都子/福島久美子
脚本・演出:高羽泰雄 照明=兼子慎平 音響=みづのかえる 舞台監督=金坂友美 美術=サノアヅサ 音楽=渡辺靖文(フロッタージュ) 小道具=藤井純子 衣装=宮川智美 メイク=高村マドカ 映像=赤虫プロダクション 映像協力=春日智文 振付=小関ゆかり 演出助手=宮本彩香 制作=岡野和義
前売¥2500 当日¥2800
SPARKO=http://www.apartment.gr.jp/sparko/
11月5日(土)夜にFM西東京「たけがき2」に出演します。
FM西東京の演劇情報番組「たけがき2」に出演いたします。毎月第一土曜日に出演の予定です。
今回は前半に『ブラウニング・バージョン』の感想をお話し、後半は11月に観られるお薦めお芝居を数本ご紹介します。翌日のセミナーの宣伝も少しさせていただきます♪
西東京市およびその周辺地域でお聴き頂けます。
11月5日(土)21:30~22:00(の内の約10分間)
FM 84.2MHz
たけがき2(ツー):http://takegaki.k-free.net/
【情報】ク・ナウカ主宰・演出家の宮城聰さんからメールを頂戴しました。
ただいま上野の東京国立博物館で上演中の『ク・ナウカで夢幻能な「オセロー」』の公式ブログに、私のレビューをトラックバックさせていただいたところ、演出家の宮城聰さんからお返事のメールを頂戴しました。
宮城さんが私の感想を読んでくださり、それについて直接コンタクトをしてくださったことに感激しています。メールの内容は私と宮城さんとの秘密ですが(笑)、観客と作り手の間にインターネットを介した直接の交流が実現して、それが現在上演されている作品に影響を与えるなんて・・・こんなに嬉しいことはありません。
これは演劇がライブ(生)の芸術だからこそ出来ることですよね。映画や小説では不可能です(次の作品に影響を与えることは不可能ではありませんが)。
残念ながらもう一度公演を観に行くことができないので、作品がどう変化したのかを確認し、それを味わうことができないのですが、観客の視点から見えたことを作り手に伝えることで、上演中の作品に何らかの変化を生み出すことができたことに感動しています。ホームページやってて良かった・・・・(感涙)!
こんな奇蹟が起こったのは、ク・ナウカの公式ブログに「観劇された方は、遠慮なく観劇ノートにコメントを残していってください。」と書かれた[観劇ノート]エントリーがあったおかげです。観に行かれた方はぜひコメント、もしくはトラックバックを!現在、質問コメントを記入された方には、宮城さんご自身からのお返事が書き込まれています。
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DULL-COLORED POP 『東京都第七ゴミ処理施設場 ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』11/03-06荻窪アールコリン
DULL-COLORED POP(ダルカラード・ポップ)は谷賢一さんが作・演出する劇団です。これが旗揚げ公演ということで荻窪まで行ってきました。谷さんは先々月の明大文化プロジェクト『マクベス』で演出をされた現役明大生です。
ちょっと暗い目ですが、学生真っ盛りって感じでした。中盤以降のストーリー展開が面白かったので、前売り1,000円なら納得、というところです。
≪あらすじ≫
東京のどこかのゴミ処理施設。ゴミに埋もれた仕事場で、労働者たちには仕事がない。なぜかゴミが運ばれてこないからだ。元ひきこもりの鏑木(岩藤一成)は少し疑問に思いつつも、先輩の島本(上野庸平)と北原(堀奈津美)、そして10年以上ここで働いている知的障害者の理子(高橋絵梨佳)と一緒に、時間から時間まで何もせずに暇をつぶすだけの日々を過ごしていた。
ある日、ゴミの中の壊れた冷蔵庫の中に、小学校低学年ぐらいの女の子(清水那保)が眠っているのが見つかった。こんな不祥事がバレると役所の審査が入り、書類改ざんやワイロのことが世間に知れてしまう。必死で隠そうとする北原らだったが・・・。
≪ここまで≫
役者さんの演技が下手で、最初は見ていて非常に困りました。舞台上でおどおどと迷っているように感じましたし、セリフの途中で素に戻っていたりもしましたから。
でも、長いおしゃべりの中に少しずつ仕込まれていた前振りが、中盤に入ってから徐々につながって、様々な秘密や企みが明らかにされるようになり、その辺りから役者さんの集中力も上がってきたので、楽しく拝見できました。
演出は良かったところもありましたが、まだまだ荒削りで意図がしっかりと実現できていないようでした。セリフは細かい薀蓄(うんちく)を披露して、それを嘲笑やあきれ笑いに持って行くのが多かったです。セリフの意味自体はとても面白いのですが、役者さんが伝えられていなかったですね。
旗揚げ公演の初日でしたから緊張もすごかったのでしょうけれど、役者さんには最初から自信を持って役割を果たしてもらいたいです。でないともったいないですよね。
ここからネタバレします。
鏑木たちは、もえに音楽を聴かせるため、および暇をつぶすためにゴミの中から楽器を集めてバンド演奏の練習をしはじめます。すると、なぜかゴミ処理場を訪れた大手音楽プロデューサー・漆原(佐藤弘樹)からスカウトされて、ユニフォーム姿のまま音楽TV番組に出演することになります。天地がひっくり返ってもありえない出来事が起こったので、このままストーリーが破綻するのではないかと冷や冷やしました。でも、ちゃんと裏があったのでホっとしました。
ゴミ処理場の赤字を補填するために、上司の成島(遠藤恵一)は個人で借金を重ねていました。音楽プロデューサーの漆原は、ある歌手のプロモーション・ビデオの撮影にゴミ処理場を使おうと見学に訪れたところ、偶然に鏑木たちの存在とゴミ処理場がかかえた問題を知り、成島と組んで一儲けしようと考えたのです。漆原は「ゴミ問題についてまじめに考えるゴミ処理員の若者が、ゴミの中から拾ってきた楽器でメッセージ・ソングを歌う。しかもそれは、ゴミ処理場で発見された捨て子のもえの両親を見つけるためでもあった」というバック・ストーリーを捏造します。楽器は成島が買いそろえて、ゴミの中にあらかじめ用意していました。
それにしても、まさか本当にバンドの生演奏があるとは・・・最初はちょっと引きました。でもオリジナルの歌(2曲)がけっこういい曲だったし、ヴォーカルの女の子(理子=高橋絵梨佳)も下手ではなかったので、結局は楽しく聴けて良かったです。ヴォーカルのマイクの音量がもうちょっと大きい方がいいんじゃないかしら。たぶんメッセージが強く反映された歌詞だったと思うのですが、ギターやドラムの音に消されてほとんど聞こえませんでした。
照明を手動で前後に動かし、ライブシーンらしい演出を見せてくれたのは嬉しかったです。こういう手作り感覚、大切ですよね。
知的障害者の理子が上司の成島(遠藤恵一)と肉体関係を持っていた、というのはなんとなく気づいていました。でも、冷蔵庫の中に捨てられていた女の子・もえ(清水那保)が理子と成島の子供だった、というのには驚きましたね。番組の生放送の時に真実が暴かれるのは緊迫感があって良かったです。でも、もっと上手くできて欲しいですね。何かとあたふたしているようでした。
納得が行かなかったのは、成島(遠藤恵一)と一緒に汚染度の数値を改ざんしていた北原(堀奈津美)の、子供に対する態度です。もえを発見した時、「子供なんてウザイ、バカだ、お荷物だ、なかったことにしよう」と思っているような態度だったのですが、数日後にはもえを家に泊めてやろうとしたり、最後はもえを養子に取るまでになります。そもそも北原は離婚して親権を取られて子供を失っている母親なのですから、冷蔵庫に閉じこもっている小学生を見つけた途端、なんとかして保護しようとか、助けようと思うのが筋ではないでしょうか。そうでないなら明らかに北原の中で何らかの変化が起きたわけですから、演技やセリフでそれがわかるようにして欲しかったです。
チラシに「チケットのご予約はお電話・メール・ホームページ,またはお近くの関係者に直接お尋ねください。」とありました。なるほど、お友達に渡すことを目的で作られたチラシなんですね。もともと内輪向けに披露する予定だったのかもしれませんが、あんまり感心しないですね。公式ホームページがオープンしていて誰でもチケットが予約できる時点で、もう内輪ではありません。次回公演が3月にあるそうですので、その時は改善されているといいなと思います。
出演=岩藤一成/上野庸平/遠藤恵一/佐藤弘樹/清水那保/高橋絵梨佳/谷賢一/堀奈津美
作・演出=谷賢一 舞台監督=鮫島あゆ 照明=海老沼佑貴 音響=宮袋充弘(みつひろ企画) 音楽監修・作曲=新戸崇史(melico) 舞台美術=カニクリームおじさん 衣装=磯貝朝海 メイク=TSU-BASA 小道具=新井宏美 宣伝美術=岩藤一成 制作=立入梓
前売り1000円/当日1500円※11月4日(金)の昼の回(14:00~)は、前売り・当日ともに500円引
公式=http://www.dcpop.org/
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