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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年11月13日

KOKAMI@network『トランス youth version』11/08-27紀伊國屋ホール

 『トランス』というと、山崎銀之丞×ともさかりえ×河原雅彦出演・木野花演出版を観たことがあります。初演情報(1993年)はこちら。今回私が拝見したのは高橋一生×すほうれいこ×瀬川亮版(youth version)です。
 戯曲はやっぱり面白いな~と思いました。でも演出は心底楽しめるというわけではなかったです。若者向け、じゃないかしら。

 全然関係ないですけど、ライブドアの堀江社長が観に来ててちょっとびっくりしました。開演直前に堀江さんに名刺を渡しに行くビジネスマンが居て、これまたびっくり。あきれましたけど、たしかにこんなご縁はめったにないですよね(苦笑)。

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 ≪あらすじ≫
 雅人(高橋一生)はフリーのライター。自分の記憶がすっぽり抜け落ちている時間があることに気づき、高校時代の同級生の礼子(すほうれいこ)を訪ねて精神科にやってきた。また雅人は偶然に、礼子と同じく同級生だった参三(瀬川亮)とも再会する。参三はゲイバーで働いていた。
 数年ぶりに再会した3人は嬉々として旧交を温めるが、雅人の行動に異変が起きて・・・。
 ≪ここまで≫

 白を基調にした装置でした。ちょっと汚れたりぼろぼろになった家具(机・ベッド等)が全て白く塗られていて、壁はタイルのような四角いパーツが並んで出来ています。ピンク、黄緑などのパステル系の派手な照明が頻繁に使われましたが、清潔感があって良かったです。 

 ストーリーをすっかり忘れていたので、ふむふむと普通に楽しく追いかけていましたが、スカッと元気な若々しい演出が出てくると、気持ちにストップがかかってしまいました。

 ここからネタバレします。

 若者が一人ぼっちで手探りしながら、泣きそうになりながら現代社会を生きているのが伝わってきました。これは10年前も一緒だったのかな。生真面目でまっすぐで、強がりながらも救い(愛)を求める若者の言葉って胸を打ちますよね。

 若者3人がポップソングが流れる中はつらつと踊ったりするシーンは引いちゃいました。病院の屋上で青い空を見上げながらのピクニック、というような根っから明るく楽しい状況で、ハッピーな雰囲気の歌が流れて踊ってしまう・・・というのを素直に受け入れづらい年齢になってしまったようです(苦笑)。もしかすると皮肉を込めたシーンだったのかしら・・・?

 誰が患者なのか医者なのか、誰が本当のことを言っているのかわからなくなるのは楽しいです。ただそういう作品ってよくあるので新鮮さや衝撃はなかったですね。でも目新しさなんて目指してらっしゃるわけがないですから(何度も色んな方の手によって再演されている演目だし)、それは期待するのがおかしいですよね。

 高橋一生さん。記憶が飛ぶ雅人役。期待通り、でした。陛下になってからはあんまり面白くなかったな~・・・ってこれは役柄だからしょうがないんですが(笑)。
 すほうれいこさん。新興宗教にはまっていたが、大学に入りなおして精神科医になった礼子役。明らかに演技が下手なんですよね・・・3人芝居なので比べられちゃいますしね。キリっとした表情で正面切って独白するのはきれいでした。きれいな女の子はやっぱり良いです。
 瀬川亮さん。おかまバーで働く参三役。小須田康人さんに似てる!って思いました。体のキレがあって、元気で良かったです。

youth version出演者=高橋一生/すほうれいこ/瀬川亮 elder version出演者=松本紀保/みのすけ/猪野学
作・演出=鴻上尚史 美術=松井るみ 照明=坂本明浩 音響=堀江潤 衣裳=山本華漸(Future Eyes) ヘアメイク=西川直子 舞台監督=澁谷嘉久 制作=高田雅士・森田友規子 制作協力=細川展裕
一般5,800円 学生席3,800円(ぴあ店頭扱いのみ・要学生証)
公式=http://www.thirdstage.com/knet/trans2005/index.html

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Posted by shinobu at 21:40 | TrackBack

ひょうご舞台芸術『芝居~朱鷺雄(ときお)の城~』11/08-13紀伊國屋サザンシアター

 ひょうご舞台芸術は見逃さないようにしています。山崎正和さんの戯曲の再演で、豪華キャスト&スタッフですから否応なしに期待が高まったのですが、「期待のしすぎ」だったかも・・・。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイト内のあらすじはこちら
 八州朱鷺雄(やしま・ときお=辻萬長)は超売れっ子作家。しかしこの2年ほどは駄作続きで人気も名声も低迷している。朱鷺雄は昔からの友人を呼び出して「即興で芝居をしないか」と持ちかけた。友人とは朱鷺雄を担当する編集者の瑠璃(田島令子)、朱鷺雄の作品について本を出している評論家の滝(水野龍司)、そして朱鷺雄を政界へ誘い込もうとしている政治家の鰐渕(勝部演之)の3人だ。
 彼等は朱鷺雄の誕生日に朱鷺雄の豪邸に集合したが、呼び出した当人は不在。住み込んでいる作家の卵の下沢耕治(大沢健)と、若い娼婦の園美(宮本裕子)がその“芝居”の記録係となっていた。
 十数年ぶりに再会した3人は、朱鷺雄についてそれぞれの思いを話しだし、彼等の青春時代の中心人物だった天才作家・風間敏の死のについて、重い口を開きだした。
 ≪ここまで≫

 俳優座劇場ぐらいの小さな劇場で観たかったですね~。サザンシアターの後ろの方では届いてこなかったです。

 演出も美術も想像の範疇を超えないもので、正統派というよりは単に地味だなぁと感じるばかり。脚本は・・・内容は面白いと感じることが多かったですが、言葉遣いや役者さんの語り口がどうも古臭いように思いました。

 田島令子さん、水野龍司さん、勝部演之さんの演技に真実味が感じられませんでした。だからといって辻萬長さん、宮本裕子さん、大沢健さんがすごく良かったと言えるわけでもなく・・・。やっぱり演出のせいですかね。 

 ※ここからネタバレします。公演は終わっていますし推理部分は書きませんので、読まれても大丈夫かと思います。

 子供から大人になって何十年も社会にもまれて汚れてきた人間は、何が本当なのかわからなくなっていて、自分でも本当のことを知りたいと思わなくなっています。嘘にまみれた自分の人生に嫌気が差して“本当のこと”を探していたら、朱鷺雄はサーカスに出会いました。「サーカスは、演技をしている人間が恐怖を感じている(だからあれは本当だ)」と。

 辻萬長さんと宮本裕子さんが筋トレしながら談笑するシーンは、お2人の肉体美にみとれつつ、日ごろから鍛えてらっしゃるのが伝わってきて少々身につまされる思いもありました(笑)。これは肉体という絶対的な存在の、健全な美しさを表したのかな、とも思いました。朱鷺雄のサーカスに対する賛美とも重なるし、思想や感情が伴わない、ただの肉の塊にも本物の美が存在するという意味も感じました。

 サーカスから発展して、娼婦の園美が「人間はサーカス(見るからに本物であること)だけに感動するんじゃない。“夢”にも感動する。そしてその“夢”というものを作り出すのは“物語”という完全な嘘だ」と言います。さらに「“物語”には2種類あって、それは人間の未来への夢と過去の思い出だ」と。作家と娼婦との禅問答のような会話から、論理的かつ明快で、だけど論理の中にはおさまらないもの(夢や物語など)の存在を肯定・賛美する確固とした思想が現れます。
 この娼婦(宮本裕子)のセリフでかなり感動したのですが、う~ん・・・それだけだと不満だなぁ。もっと衝撃とか官能とかが欲しかったです。推理劇としてはテンポがスロー過ぎる気がしました。

 ※ここから推理のネタバレをします。

 天才・風間の死について、朱鷺雄を含む友人4人全員に動機がありました。そして朱鷺雄が風間の作品(および構想が書かれたノート)を盗んでいたという事実も徐々にあらわになり、とうとう朱鷺雄自身が風間の作品を自分の名で発表してきたと白状します。でも朱鷺雄は自分のためではなく、風間を愛していたが故に、自分を殺して彼になりきって生きてきたのです。これには驚き、そして腑に落ちました。

 「嘘だらけの世界」とか「通じ合えないことへの絶望」がこの多重構造の“芝居”の中の前提部分を占めていたと思いますが、もっと深いところまで掘下げてから、主張へと移った方が良かったのではないかと思いました。私達の現状はもっと深刻で、深刻ぶっても仕方がないぐらい日常的になってしまっているから、悩む前にその中で生きる術を編み出して実践してしまっていると思うんですよね。
 若い人の小劇場作品を観慣れているからかもしれませんが、どうしても古いと感じざるを得ませんでした。 

≪兵庫、東京≫
出演=辻萬長/宮本裕子/大沢健/田島令子/水野龍司/勝部演之
作=山崎正和 演出=鵜山仁 美術=島次郎 照明=勝柴次朗 衣裳=緒方規矩子 音響=斉藤美佐男 ヘアメイク=佐藤裕子 演出助手=城田美樹 舞台監督=北条孝 宣伝美術=東學 プロデューサー=三崎力(兵庫県立芸術文化センター) 制作=荒川由紀(R・U・P) 芸術顧問 =山崎正和 製作=兵庫県芸術文化協会
全席指定 5,000円
アール・ユー・ピー=http://www.rup.co.jp/
※イープラスの得チケで2,500円!(手数料が別途300円かかります)
http://click.eplus.co.jp/?5_301041_22010_11

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Posted by shinobu at 20:38 | TrackBack