2005年11月25日
ペンギンプルペイルパイルズ『不満足な旅』11/16-23ザ・スズナリ
『ワンマン・ショー』で岸田國士戯曲賞を受賞した倉持裕さんが作・演出されるペンギンプルペイルパイルズの再演作品です。私はOFF OFFシアターでの初演を拝見しましたが、残念ながら初演の方が面白かったですね。OFF OFFシアターのあの狭さが良かったのかもしれません。
出演者の小林高鹿さんのブログに舞台写真がアップされています。他の日の日記にも写真が沢山ありますので、ぜひチェックしてください。素敵な装置でしたよね(2005/12/02加筆)。
《あらすじ》チラシ・公式サイトよりそのまま引用。(役者名)を追加。
着々と死傷者を出しながらはしゃぎ狂うカーニバル真っ最中の国。入国するなり恋人とケンカ別れした男(小林高鹿)は、この旅行で初めて知り合った彼女の弟(吉川純広)と、世界一周旅行敢行中のアカの他人(宮崎吐夢)と共に、蒸し暑い安宿に取り残される。窓を開ければ耳をつんざく楽団の演奏。
パオーン!
あわやパレードの象に踏まれかけたところを救われた会社員(玉置孝匡)は、
「河口湖で死んだ同僚を想うあまり調子に乗りました」と舌を出す。
しかし何だ・・・・・隣から聞こえる呪文は何だ?
「同窓会よ」と隣室から来た女(ぼくもとさきこ)は言った。
「子供の頃、ワニと一緒に寝かされても泣かなかった勇敢な女たちの同窓会よ」
彼女たちの狙いは、カーニバル終盤に現れるという“生き女神”の暗殺だった。
《ここまで》
うーん・・・タイトルどおり『不満足な旅』でした(笑)。あらすじの最後の一文「暴力、博愛、人見知りについて、きわめて感情的に記された旅のしおり」は素晴らしいですね。この通りの内容だったと思います。
公演が終了していますので、ここからネタバレします。
OFF OFFシアターの不自然なまでの狭さが、このお芝居の面白いところだったんだなぁとしみじみ思います。はるばる遠い国に旅行に来たのに、じめじめした狭い部屋に閉じこもり、窓の外には賑やかなカーニバルの音。その狭い空間に次々とヘンな人間が増えていく・・・というのが奇想天外で良かったんですよね。
美術はいつもどおり、すごく良かったです。壁のよごし、窓の異常な小ささ、込み入ったドア。2台あるベッドの下手側の方は、黒い壁にひっついていて途中でぶっつりと切れています。これがチョーカッコイイ!
照明も良かったですねー。(小林高鹿)の彼女の弟(吉川純広)が死ぬ前に見た幻(「マイ・ウェイ」を合唱)は秀逸。
初演に引き続き出演されている劇団員の小林高鹿さん、ぼくもとさきこさん、玉置孝匡さんは演技が上手くなられてると思いました。順序良くこなしているようにも見えて、初演で心地よく感じた“うさんくささ”が薄れ、可笑しみが減っていた気がします。難しいですね、上手いのに越したことはないはずなのに。
宮崎吐夢さんが演じられた世界一周旅行中の男役は、初演では中山祐一郎さんが演じられていました。やっぱり中山さんの面影がちらつきましたね。宮崎さんはいかにもバックパック旅行をしそうな風貌で、そういう意味でのリアルさがありました。中山さんは人物としての存在感が大きく、旅行をしているのかどうかが曖昧な感じだったんです。“得体の知れない放浪者”という雰囲気に説得力があって、すごく印象に残っています。
出演=小林高鹿/ぼくもとさきこ/玉置孝匡/吉川純広/宮崎吐夢(大人計画)
作・演出=倉持裕 舞台監督=橋本加奈子(SING KEN KEN) 照明=清水利恭(日高照明) 音響=高塩顕 舞台美術=中根聡子 音楽=星野源(SAKEROCK) 宣伝美術=坂村健次 宣伝写真=引地信彦 制作=土井さや佳 企画・製作=ペンギンプルペイルパイルズ
指定席3,600円 当日3,900円 ベンチシート前売3,400円 当日3,700円(整理番号付自由席)
公式=http://www.penguinppp.com/
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プラチナ・ペーパーズ『ラフカット2005』11/23-27全労済ホール/スペース・ゼロ
ラフカットは毎年スペース・ゼロで開催されている(→2003)全キャストがオーディションで選ばれる企画です。30分の短編4話のオムニバス形式で、脚本家はそれぞれ違いますが、全作品の演出が堤泰之さん(今回は)。途中休憩10分を挟んで2時間20分ぐらいでした。
堤さんの演出について改めて実感しました・・・女優の体の露出度が異常に高い!胸がっ!足がっ!・・・男性には前の方のお席がお薦めです(笑)。あ、でも全席指定ですね・・・。
カラーが全然違う4作品でした。私が好きだったのは第二話「コインランドリーマンズ」。全体の完成度が高かったのは第四話「晩秋に吠えろ」だと思います。第三話では男優さんがかなり頑張っていました。
下記、ところどころネタバレあり。
■第一話 「震度2」脚本=樫田正剛<劇団方南ぐみ>
あらすじ→テレビ局の会議室。自分勝手で気難しい部長のせいで深夜まで会議が延びそうだ。若い社員は嫌気がさしている。
いわゆる下手な小劇場芝居みたいになってしまっていて、残念な仕上がりでしたね。脚本の樫田正剛さんはテレビのお仕事もされているので、テレビ局の実情をご存知だから書いてらっしゃるのでしょうけど、これが現実ならかなり恥ずかしいですよね。
地震・・・あんまり必要性を感じませんでした。とってつけたような終わり方でした。
吉田真琴さん。大女優役。堂々としていて良かったです。帽子をとって髪がファサッとなったのはかっこ良かった。
■第二話 「コインランドリーマンズ」脚本=桑原裕子<KAKUTA>
あらすじ→コインランドリーに集まる人々の群像劇。サラリーマンVSフリーターなど。
面白かったーっ!コインランドリーって実は無料でたむろできる便利空間だったんですねぇ(笑)。大人になって、資本主義社会にどっぷりはまって生きている。でもおでんは美味しいし、恋人のことは大好きだ。夢と現実がいつの間にか乖離していってしまう、あらゆる普通の人たちの、ささやかな欲望とジレンマ。
三浦知之さん(InnocentSphere)が超素敵!細くて小さな彼女(星野友紀)を抱きしめるシーンでほろりと来ちゃったよぉ。三浦さんは体格が良いからでしょう、上半身裸シーンもありました(笑)。
■第三話 「バカ少年。」脚本=中島淳彦<道学先生>
あらすじ→昭和51年のどこかの田舎町。ガラス工場の2階に溜まるダメ高校生たち。
きちんとパネルも立ててリアルな部屋が出来上がって驚きました。ダメダメ感に満ちた昭和の空気に「うわー・・・・この感じ、知ってるわぁ(油汗)」といやな気分になりつつ、徐々にその中に入っていけました。ストーリーは好きではないですが、ちゃんと作品になっていて楽しめました。セリフが方言になっているので、役者さんはけっこう大変だったんじゃないでしょうか。
それにしても教師に乱暴された女子高生(秋山夏美)の胸元、V字の襟ぐりで露出しすぎ!「隙がある」どころじゃないよぉ(笑)。でも、すっごくきれいな胸元でした。
■第四話 「晩秋に吠えろ」脚本=堤泰之<プラチナ・ペーパーズ>
あらすじ→テニスクラブで生まれる大人の恋の物語。悪い女に気をつけろ。
テニスですから。女子はスコートですよ、スコート!キワモノキャラの五反田マコ(蛭田真知子)の衣装は異常(笑)。テニス用ユニフォームと言いつつ、どう見てもボンデージ・ファッションで、実態は赤いプロレスラーでした。目が離せないですよ、あらゆる意味で(笑)。
お話はとってもよくできていて、役者さんもこの回が一番レベルが高かった気がします。作・演出の両方が堤さんだからかも。
レビューを書きながら思ったのですが、「役者」に対して非常に率直な演出ですね。若い人は若いからこその持ち物(ぴちぴちした肉体等)を、年配の方は年配ならではの持ち味(年輪を感じる佇まい等)を、お客様に披露するのです。ちょっぴり酷かもしれないけど、実はそこで勝負するしかないですものね、舞台でさらされる役者さんは。ラフカットはありがたい経験になるのではないでしょうか。
出演(オーディションで選ばれた役者たち)=《第一話》五十嵐富子/日下部千太郎/工藤良輔/熊野善啓/榊原健一/鈴木那奈/中川智咲子/福井利之/松本永倫子/吉田真琴/渡辺裕樹 《第二話》荒木秀行/岡戸三樹/奥田直樹/窪田道聡/小堀友里絵/野辺富三/濱田龍司/星野友紀/三浦知之/横山真弓 《第三話》赤星アメ/秋山夏美/おがわじゅんや/落合孝裕/加古臨王/北野ジン/鈴木穣/長尾健太郎/東川清文/村岡奈緒美/吉村公佑 《第四話》石田誠二/尾上康代/片山重滝/河合咲/白神允/津之村真子/西村理沙/蛭田真知子/田村義晃/山本東
演出=堤泰之 脚本=中島淳彦/樫田正剛(劇団方南ぐみ)/桑原裕子(KAKUTA)/堤泰之
4人の作家によるオムニバス。演出は堤泰之。
美術=本江義治 音楽=樋口亜弓 照明=倉本泰史(A・P・S) 衣装=渡辺まり 舞台監督=古賀裕治(ワーズ) 演出助手=奥村亜紀 制作=冨山絵理・藤野和美(オフィス・REN) 協力=洗い屋本舗 イラストレーション=ゴトウヒロシ 写真=大須賀博 宣伝美術=鳥井和昌 全席指定 前売・当日共 3,500円
プラチナ・ペーパーズ=http://www.platinum-papers.com/
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