2005年12月06日
Bunkamura/毎日新聞社「スコットランド国立美術館展」11/05-12/25Bunkamuraザ・ミュージアム
「プーシキン美術館展」に行く予定だったのですが、急遽変更。こちらのブログでも好評でしたし、ゆったりしたかったので。
久しぶりに気持ち良い美術鑑賞タイムを味わえました。混雑した美術館ってすっごく苦手なんですよ、もともと田舎者ですから。展示については「悪くはないけど満足はできなかった」って感じ。だって数が少なすぎますよ。
鑑賞後はドゥ・マゴ・カフェでお茶したり、BOOK 1stでお買い物したり。楽しかった。
扉座『アトムへの伝言』12/02-11紀伊國屋ホール
扉座の作・演出家の横内謙介さん自ら「シリーズ最高傑作」とおっしゃる自信作。東京初日のミナクルステージを拝見しました。
まさかこんなにストレートなお笑いがあるとは・・・(笑)。「ロボットと人の融合を描く意欲作」(扉座TOPページより)ということで笑って泣けるドラマでした。
☆横内謙介さんの日記(2005.12.05)によると「紀伊国屋ホールは補助席が全面禁止に」なったとのこと。これはショックだわ・・・。
《あらすじ》 ※かなり簡略化しています。
史上初のお笑いロボットを作り出そうとしている研究所では、新型ロボットのカッパ(山中たかシ)の開発に躍起になっている。「お笑い芸人のラッパ(六角精児)のようなロボットに」という所長の要望により、カッパをラッパに弟子入りさせるが・・・。
《ここまで》
六角精児さんと山中たかシさんが息の合った漫才を山もり披露してくださいます。これが大きな見所のひとつ。いっぱい笑わせていただきました。
「人間とロボット」という重いテーマを師弟愛の側面から描いており、中盤まではかなり胸に響くものがありました。何度か泣けちゃったな~。ただ、後半の地雷云々の展開はちょっと・・・お涙頂戴な方向に進んでしまったようで残念。私としてはもっと哲学的テーマに突っ込んでいって欲しかったです。
役者さんは扉座っぽい親しみやすい演技と、笑いを生むためにきちんと計算された技術とを要所要所で使い分けてらっしゃって、さすがだなぁと思いました。鉄面皮の研究者・人見役の有馬自由さんが特に面白かったです。
ここからネタバレします。
ロボットのカッパは人を傷つける暴力(言葉も力も両方)を振るわないように設計されている、というのがミソでした。ラッパが言う「(生のお笑いでは)差別や暴力が結局一番面白い」っていうのは真実なんですよね。“つっこみ”として「バカヤロー」と言ったり、頭を軽く叩いたりできるのは、そのさじ加減がわかる人間ならでは。
しかしながら、人間同士よりもカッパ(ロボット)とラッパ(人間)の間に、本物の師弟愛が生まれていたという皮肉にも共感しました。インターネット社会は下克上を容易にし、個人の自由と機会の平等を明らかに広げましたが、日本人が大切にしてきた礼節などが軽視され、それゆえに生きづらい世界になっているのも否めません。
リラックスして笑うことができない研究員たちは、過去に開発したロボットが戦争で使用され、「自分たちは殺人ロボットを作ってしまった」というトラウマを持っていました。だからこそカッパに暴力を振るわせたくなかったし、人間に笑いという喜びを与えるロボットにしたかった、というバックストーリーに納得。結果的にカッパが人間に暴力を振るってしまい廃棄処分が言い渡されても、「自分たちが必死で作ったロボットを壊されたくない」「カッパはいい奴だから逃げて欲しい」という人間くさいエゴイスティックな面も描かれていて、研究員の人たちにはかなり感情移入できました。
研究者たちはラッパに“ズッコケて「あばば、すなぎも」と言う”という意味不明のギャグをやらされます。最後の最後までしぶっていた研究所のリーダー・人見(有馬自由)の心が動き、自らそのギャグをやった時は客席から拍手が沸き起こりました。
共感したり考えさせられたり、ストレートなお笑いに爆笑したり、中盤まではものすごく楽しませてもらっていたのですが、クライマックスの展開が私には合わなかったです。
廃棄処分が決まったカッパは、ラッパの提案で自ら進んで地雷を踏むことになります。人間そっくりのロボットが地雷でこなごなになるのをテレビで流すことで、地雷の残酷さを鮮明にアピールするのです。それはカッパだけにしか出来ない具体的な社会貢献になります。撮影現場で地雷を目の前にして、カッパとラッパは正真正銘、最期の漫才をする・・・。ロボットが人間のために自ら命を捨てるというのが漫画「鉄腕アトム」のエンディングと重なるなのですが、展開がとっぴ過ぎるし奇抜すぎじゃないかなと思いました。
演技がいささか粘っこすぎる(ラッパのマネージャー兼事務所社長役の中原三千代さんが演歌っぽすぎる等)のも好みに合わなかったですね。
カッパが地雷から足をはずした時の爆発音が鳴らなかったのが良かったです。その後は銀雪が散って終幕。サラっとしていて気持ちの良い余韻が残りました。
≪厚木、東京≫
出演=六角精児/山中たかシ/杉山良一/伴美奈子/有馬自由/鈴木利典/岩本達郎/田島幸/新原武/山口景子/中原三千代/高木智之/仲尾あづさ/上原健太/鈴木里沙/川西佑佳/山下幸乃/田中信也/安達雄三/上土井敦/江原由夏
作・演出=横内謙介 美術・技術監督=大竹義雄 照明=塚本悟 音楽=佐藤容子 音響=青木タクヘイ 衣裳=木鋪ミヤコ 演出助手=則岡正昭 舞台監督=大山慎一 制作=太田さやか アートディレクター=吉野修平 宣伝写真=山脇孝志 製作=(有)扉座 協力=舞プロモーション トップコート プランニングアート
全席指定 前売4,200円 当日4,500円 学生3,000円(劇団扱いのみ) 東京公演初日記念特別価格ミナクルステージ(12/2)3,000円
公式=http://www.tobiraza.co.jp/kouen/atomuhenodengon.htm
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