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しのぶの演劇レビュー
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2005年12月28日

演劇集団円/円・こどもステージ『おばけリンゴ』12/18-28シアターX(カイ)

 円・こどもステージは岸田今日子さんの企画で今回が24回目です。両国の劇場に小さな子供たちがいっぱい!
 ヤノーシュの絵本『おばけリンゴ』をもとに詩人の谷川俊太郎さんが戯曲化されたそうで、何度か再演されています。劇場そしてお芝居ならではの演出もあり、和やかで楽しい時間でした。

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 ≪あらすじ≫ 公式ページより引用。(役者名)を追加。
 ある村に、まずしくて、運が悪くて、不幸せな男ワルター(小森創介)が住んでいました。ワルターは、リンゴの木を1本もっているのですが、いまだかって、リンゴがなったことがありません。まいにちまいにち神さまに、まっかなリンゴがなるようにお祈りしました。そしてある晩、ワルターのリンゴの木にひとつだけ白い花がさいたのです・・・
 ≪ここまで≫

おばけリンゴ
おばけリンゴ
posted with 簡単リンクくん at 2005.12.28
ヤーノッシュさく / やがわ すみこやく
福音館書店 (1978)
通常24時間以内に発送します。

 上手にキーボードやギター、打楽器の生演奏チーム、下手には主役のワルターの家。中央には太いリンゴの木のパネルが置かれています。いわゆる児童劇っぽい大道具でアーティスティックではないですが、幼稚園児ぐらいのお子様にはこれぐらいが適当なのかなという美術です。

 一人暮らしの不運な男ワルターを見守るマママ(高橋理恵子)とパパパ(小久保丈二)が観客の視点、もしくは天使と悪魔の視点を担いつつ、解説者にもなりながらお話が進みます。
 こども達はすっごく楽しそうでした。毛糸の玉が転がるだけでも笑うし、役者の表情が少し変わるだけでも見逃しません。子供は本気で笑いたい時しか笑わないんですよね。大人の自分が気づかない面白ポイントを子供達に教えてもらったりもしました。

 ここからネタバレします。

 ワルターの木に花が咲いてリンゴが生るまでが特に面白かったです。たった一つ咲いた花を見守るワルターがけなげですし、リンゴがぐんぐん大きくなっていくのを、ワルターの一人マイムだけで見せるのが圧巻。最初は眉唾物なんですが、徐々に大きなりんごの輪郭が見えてくるんですよね~。

 しかしながら中盤をずしりと支配している巨大怪獣に襲われる街の王様のシーンでは眠くなっちゃいました。王様や側近、秘密警察(アンサンブル)の役者さんたちの演技がちょっと・・・。舞台に立ってはいるけれど、魅せるところまで行っていなかったんじゃないでしょうか。子供から大人までボーダレスに楽しめる作品ってすごく難しいですよね。そもそも戯曲自体が子供向けになっていますから、大人には退屈です。一生懸命にセリフを言っている役者さんを眺めながら、演じている人自身が楽しんでいるという状態が、まず必要なのではないかと思いました。
 両国駅から劇場ロビーへとやってきた怪獣が、とうとう劇場の中に入ってきた!ということで、客席の上手側の壁を突き破って怪獣のしっぽが現れたのは面白かった!

 テイストはほんわかしているのですが、実際はあからさまに教訓や示唆に富んだ物語でした。ワルターは始めは「僕の木にリンゴが生って欲しい」ということだけを望んでました。でもリンゴが生って大きくなり始めると、彼の望みはコロリと変わります。「どんどん大きくなってリンゴに高い値がつけば、お金が手に入る。そしてそのお金で鍋を買おう。ベッドももう一つ買って二つにしよう。お嫁さんに来てもらうから」というように。リンゴ自体への欲が消え、その先に違う世界を見るようになってから彼の人生は狂い始めます。
 王様が登場するシーンは、政治や経済の黒い世界を表していたようですし、罪のない怪獣を秘密警察が殺し、怪獣の友達の男の子がその死を悲しむシーンは、発見できなかったイラクの大量破壊兵器を思い起こさせます。
 
 ワルターの巨大なリンゴは巨大怪獣を退治するために使われるのですが、そのリンゴを奪いに来た王様の家来達にワルターが暗殺されました。まさか殺されるとは思わなかったな~・・・そして後で生き返っちゃうのにまた驚き。既にリンゴは奪われていたし怪獣も死んでいたし、殺される必要があったのかしら?そしてなぜに生き返ったのかな?そのあたり、いろいろ唐突で腑に落ちませんでした。途中で寝ちゃったからかもしれませんけどね、ごめんなさい。
 
 小さな子供達とその親御さん、そして知的障害のある方々も観劇にいらしていて、上演中に客席がシーンとなることはほぼありませんでした。でも全然気にならなかったですね。最初の暗転で「おうち帰る~っ」と泣き出した子がいて、すっごく和みましたし(笑)。
 科学者に向かって王様が「くしゃみをするな!」と言うシーンで、絶妙のタイミングでくしゃみをされたお客様がいて、客席で大笑いが起きました。あのタイミングで舞台上の王様がアドリブを入れてくれていたら、さらに盛り上がっただろうな~。

 来年は同じくシアターXで別役実さんの新作「青い鳥小鳥なぜなぜ青い」を上演されるそうです。子供向けの不条理劇になるのかしら(笑)。すっごく楽しみです。

≪両国、湘南台≫
出演=込山順子/小久保丈二/高橋理恵子/小森創介/馬渡亜樹/関貴昭/林真里花/茶花健太/佐々木睦/内埜則之/手塚祐介/冠野智美/寺尾貴裕/松本理奈/横大路伸/永井琴絵 ※佐藤銀平がケガで降板。代役は佐々木睦。
原作=谷川俊太郎(ヤーノシュの絵本「おばけリンゴ」福音館書店刊より) 演出=小森美巳 企画=岸田今日子 装置・照明=皿田圭作 衣裳=川本喜八郎 音楽=小森昭宏 効果=斉藤美佐男 ステージング=村田大 舞台監督=田中伸幸  演出助手=林紗由香 劇中絵=和田誠 宣伝美術=ミネマツムツミ 制作=桐戸英二/桃井よし子
指定席:4,000円 おとなさじき:3,000円(劇団扱いのみ) こどもさじき:2,000円(3才~中学生)など
演劇集団円=http://www.en21.co.jp

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Posted by shinobu at 21:40 | TrackBack

パルコ・プロデュース『12人の優しい日本人 The Gentle Twelve』11/27-12/30(11/27-29はプレビュー)パルコ劇場

 とうとう拝見してまいりました。オープンから1ヶ月経っているんですね。1990年初演で映画化もされている名作です。テレビ・映画のスターや、三谷幸喜作品常連の熟練舞台俳優などの超豪華キャスト。今年もっともチケット入手が困難だった公演なのは間違いありません。
 充分に面白かったんですが・・・映画でストーリーを既に知ってたのが悔しい。何も知らなかったらもっと楽しめただろうな・・・。
 ★1/28(土)19:00よりWOWOWで生中継されます。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより引用。一部漢字をひらがなに変更(問い正し⇒問いただし)。
 もし、日本にも陪審員制度があったら・・・。
 ある事件の審議のため、12人の陪審員が、無作為に選ばれた。職業も年齢も異なれば、互いに名も知らぬ、12人の一般市民。陪審員たちは、多数決で「無罪」に一致、審議は早々に終了するかに見えた。しかし陪審員のひとりが、無罪の根拠を問いただし始めて・・・。
 評決には、全員の意見の一致が必要だが、次第に有罪の可能性も浮かび上がり、審議の様相は混迷を呈していく。果たして彼等は、「真相」を究明し、全員一致の議論に辿り着けるのか。
 ≪ここまで≫

 ここから少しネタバレします。ストーリーには直接は触れません。

 2時間15分の上演中に暗転は一度もなく、音楽もエンディングだけ。役者さんは全員がずっと出ずっぱりの会話劇です。
 舞台は裁判所の中の一室。数個の弧型の机が中央に並べられ、丸い円を描いています(舞台写真はこちら)。少し薄汚れた白い漆喰の壁と天井に包まれた部屋は、広いんだけど閉じ込められているように見えるのが良かったです。吊られている照明が梁(はり)で全く見えないのが凄いですよね。

 無作為に選ばれた一般市民は、誰が何をしゃべっても少しカルチャーショックを受けるぐらい、それぞれに住む世界が全く違います。そんな人たちが12人も閉じ込められているというシチュエーションが滑稽で、それだけでも面白いです。陪審員制度って実際に施行されたらこうなるんですよね。怖いな(笑)。

 パルコ劇場で9,000円のお芝居としたら全く文句はないし、観られただけでも良かったとは思うのですが、好きかどうかというと・・・特に私の心に残る作品ではなかったですね。見かけも中身もひっくるめて全体が、きらびやかな包装紙とプレゼントボックスの中にきちんと納まってしまっているように感じました。

 ここからネタバレします。

 事件の被告は若い女性で、別れた夫を突き飛ばしてトラックに轢き殺させたという容疑がかかっています。トラックの運転手、事件の目撃者のおばちゃん、そして被告の女性の3人の証言から真相を探っていくのですが、舞台に居るのは12人の陪審員だけなのに、証言した3人の姿もリアルに現れてきました。脚本が凄いのだと思います。

 筒井道隆さんが「(被告は)どうしても悪い人には見えない」と主張し続け、堀内敬子さんが「何かがひかっかる」と言って、決して「有罪」側に折れない様子は、見た目はかなり子供っぽく映ります。でも自分の直感を信じ続けることってすごく大切ですよね。その直感を頭ごなしに否定する論理的思考は、ただただ放棄するしかありません。論理の土俵に立った瞬間に直感なんて存在できないですものね。
 彼等がかたくなに「理由はわからない。だけど無罪だと思う。」と言い続けたことは、すっごく勇気が有ると思いました。かっこ良かったな~。自分もそういう「優しい日本人」であることを、逃げとかあきらめではなく、積極的に受け入れたいです。だからといって論理的思考を全否定しちゃダメですけど(笑)。 

 温水洋一さんのイスだけ異常に小さかったのは、「それ反則だよっ!」って叫びたくなるぐらい面白かったです。腰掛ける後姿が愛らしすぎました。
 小日向文世さん。本当に歯医者だった性悪オヤジ。めちゃ渋です。松尾スズキさんがサディスティックなキャラで小日向さんを使うのがわかる気がしました。
 石田ゆり子さんは細くて美人で居るだけで幸せにさせてくれるような女性でした。でも役柄としてはもうちょっと何か欲しかったですね。
 江口洋介さんは背が高かったです。超かっこ良かったです。

"The Gentle Twelve"
≪東京、大阪≫
浅野和之/石田ゆり子/伊藤正之/江口洋介/小日向文世/鈴木砂羽/筒井道隆/生瀬勝久/温水洋一/堀内敬子/堀部圭亮/山寺宏一(五十音順)
作・演出=三谷幸喜 美術=堀尾幸男 照明=服部基 衣裳=黒須はな子 音響=井上正弘 ヘアメイク=河村陽子 舞台監督=松坂哲生 宣伝美術=高橋雅之 宣伝写真=細川晃 製作=伊東勇 プロデューサー=佐藤玄 制作=毛利美咲 企画=(株)コードリー プロデュース=(株)パルコ
一般料金 9,000円(全席指定)※プレヴュー公演11/27,28,29 8,500円(全席指定)
公式=http://www.parco-play.com/web/page/information/yasasii/

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Posted by shinobu at 00:02 | TrackBack