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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年01月13日

NODA・MAP『贋作・罪と罰』12/06-01/29シアターコクーン

 1995年初演のNODA・MAP第2回公演の、キャスト・演出を一新しての再演です。私はミュージカル『天翔ける風に』(初演)は拝見しましたが、野田さんのオリジナルは今回が初見です。
 言うまでもなく豪華キャスト&期待度も非常に高い、大人気公演です。NODA・MAPは毎年かならず演劇界の話題の中心にのぼりますし、チケット争奪戦が厳しいですよね。
 3月にWOWOWで放送されます。『透明人間・・・』と『走れ・・・』も同時期に再放送されるそうです。

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 ≪あらすじ≫ 公式ページ「~ものがたり~」より部分引用。改行を変更。(役者名)を追加。
 江戸開成所の女塾生・三条 英(さんじょう はなぶさ=松たか子)には、ある確固たる思想があった。
 『人間はすべて凡人と非凡人との二つの範疇に分かたれ、非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、既成の道徳法律を踏み越える権利がある。』
 その思想に突き動かされ、英はかねてよりの計画通り、金貸しの老婆殺害を実行に移してしまうが、偶然そこに居合わせた老婆の妹までも手にかけてしまう。この予定外の殺人が、英の思想を揺さぶり、心に重い石を抱かせてしまう。
 殺人事件の担当捜査官・都 司之助(みやこ つかさのすけ=段田安則)は、事件の確信犯的な性質を見抜き、次第に英に対して疑惑の目を向け始めた。それに気づいた英は、都の仕掛ける執拗な心理戦を懸命にしのごうとする。
 一方、英の親友・才谷 梅太郎(さいたに うめたろう=古田新太)は、罪の意識に苛まれ苦しむ英の異変に気づき、その身を案ずるが、才谷もまた、同時代の、より大きな歴史的事件の渦中にいたのだった。(以下、省略)
 ≪ここまで≫

 ドストエフスキーの『罪と罰』を下敷きに、舞台を日本の幕末に置き換えた物語。野田秀樹さんが実体験した学生紛争もモチーフになっています。無差別に人間を殺す爆弾(=戦争)にも触れていました。
 ちょうど昨日、遅ればせながら漫画「MONSTER」を読了いたしまして(ハリウッドで実写映画化されるんですね)、「殺してもいい(不要な/居なくてもいい)人間なんて居ない」ってことをじっくり考えました。

 いつもどおり達者な役者さんが舞台を疾走し、全力投球でイリュージョンを生み出してくれました。でもスポーツみたいに見えてしまって・・・私にはちょっぴり退屈でしたね。美しいセリフがスっと胸に届き、心が動かされることもあるのですが、ごくたまにしかないんですよね。セリフが早口で、がむしゃらに前に放るような話し方がほとんどなので。
 野田さんのお芝居はそういうものだ、と思えば済むことなのかもしれませんが、自分が退屈しちゃうのは止められないし・・・残念です。

 ここからネタバレします。

 舞台は2方向から客席にはさまれた島舞台で、形は正方形。客席に対して斜めに設置されているのでダイヤ型に見えます。何も置かれていない灰色のステージの四方は、一部が階段、一部がスロープになった通路に囲まれています。ステージを降りると、客席と舞台袖に挟まれた三角の空間になっていて、そこには色んな種類のイスが山のように並べられており、役者さんの待機スペースにもなります。
 イスと蛍光灯のように光る棒だけで、何もない舞台上に全てを生み出します。効果音も役者さんが鳴らします。棒は部屋の柱になったりドアになったりその他さまざまに変化します。倒れても割れないし少し曲げても大丈夫のようで、いったいどんな素材なんだろ?!
 両方の客席から舞台を隠すように、2枚の灰色のカーテンが上下(かみしも)を移動しました。照明の当て方によっては透けたりもします。『農業少女』の時もそういう演出がありましたよね。

 プチプチ(断衝材)を多用してらっしゃいましたが、あんまりきれいじゃなかったなぁ。美術や演出について感じたのは、「面白いけど、美しくはない」ということ。別に美しさを目指してらっしゃるのではないでしょうけど。
 小判と一緒に金雪が降り注ぎ、「血ではなく金が流れる」というのには感動しました。※金雪に見えましたが、照明でそう見えていたのかもしれません。後の方では白い雪になっていました。

 役者さんは、中村まことさんがリラックスムードを作ってくださったのが良かったです。「あ、マーガリン出しっぱなしだ」とか。
 松たか子さん。三条英役。英は冒頭で罪を犯してしまうので、ずっとナーバスな状態なんですよね。観てるのがきつかったです。でも最後に古田新太さんと二人で語らうところは泣けちゃったな~。嗚咽が本当に嗚咽だし、熱演でした。
 野田秀樹さんには『2001人芝居』での演技にめちゃくちゃ感動したんです(2001年の私のNo.1男優)。『パンドラの鐘』のおばあさん役も面白かったし、最近は『赤鬼』連続上演でも俳優・野田秀樹っていうのを見せ付けられたんですけどね。今回はあんまり・・・声も聞きづらかったです。

《東京、大阪》
出演=松たか子/古田新太/段田安則/宇梶剛士/美波/マギー/右近健一/小松和重/村岡希美/中村まこと/進藤健太郎/野田秀樹
脚本・演出=野田秀樹 美術=堀尾幸男 照明=小川幾雄 衣裳=ひびのこづえ 選曲・効果=高都幸男 ヘアメイク=大和田一美 技術監督=野中昭二 演出助手=坂本聖子 舞台監督=瀬崎将孝 プロデューサー=北村明子 企画・製作=NODA・MAP 提携=Bunkamura(東京)
S席¥9,000 A席¥7,000 コクーンシート¥5,000 ※この公演は座席の形状が通常と異なります。
公式=http://www.nodamap.com/

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Posted by shinobu at 2006年01月13日 14:59 | TrackBack (0)