野鳩は第14回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルに出場した劇団です。稽古場レポートのレポーターがチェルフィッチュの岡田利規さんなのが面白いですね。作・演出・出演の水谷圭一さんとのインタビューの内容が濃いです。
私は今回が初見です。ロリータ男爵の加瀬澤拓未さん がお元気になられたんですね。配役もぴったりでした。
前売2,200円(平日昼は1500円)は高いとは思わなかったですが、意図的であろうとなかろうと“へなちょこ”は“へなちょこ”なんですよね。その意味では大人向けの作風じゃないと思います。お好きな方もたくさんいらっしゃると思いますが、私は特にお勧めはしないですね。でも1度観ただけで判断はできないので、次回の再演作にも期待したいと思います。
≪あらすじ≫ 少々ネタバレしています。これからご覧になる方はお読みにならないでください。
右村(みぎむら・畑田晋事)は身頭野(みずの・加瀬澤拓未)とともに漫画家を目指している学生だ。ある日、亮子(白井暁子)に失恋した右村は、ショックのあまり凄い勢いで走り出し、道路に飛び出してトラックに轢かれてしまう。右村を止めようとした身頭野も、同時に右手をトラックに踏まれてしまった。右村の上にかぶさったトラックをよけてみると、なんと身頭野の右手が右村になっていた。
≪ここまで≫
おおざっぱに言ってしまうと、右村と身頭野という2人の男子学生の友情と青春の物語です。そこに、人が手になったりというナンセンスが挟み込まれます。
紙芝居のような進み方をするお芝居だと思いました。紙芝居じゃなければ絵巻物とか漫画とか。セーラー服と学生服姿の若い役者さんが、セリフを絵本の読み聞かせのように語り、漫画のコマのように言葉も動きもピタっと静止するんですよね。あ、作品全体のイメージとしてはペープサートが一番近いかも。
漫画が題材のお話ということで、本屋やトラックなどの大道具はいかにも漫画チックな、白黒のイラストのパネルが使われていました。学校の机も白くて、黒い線を何本も引くことで影がついていたのがかっこいいなと思いました。
役者さんは妙なところで力を抜いたり入れたりして、トリッキーで難しい演技をされています。でも、グイっと惹かれるような瞬間を作っていた人は少なかったですね。一番印象に残ったのは藤子不二雄の向かって右側の方(赤い帽子)を演じられた村井良助さん(ですよね?)。嘘っぽい笑顔とわざとらしい瞬きが良かったです。
トラックに轢かれた後、身頭野の右手となった復活した右村は、やはり死んでしまいます。右村の夢から始まり、身頭野がその夢を一人ぼっちで実現することで終幕するのは、感動を生むうまい構成だと思いました。
ラストに大きな仕掛けがありました。身頭野は出来上がった漫画を見せるために、あこがれの 藤子不二雄(であろう2人組の人気漫画家)の家へと向かいます。なくなった右手をじっと見つめながら、身頭野が一人で舞台中央にたたずんでいると、真っ黒で殺風景だったステージが、パタパタするりと一面の青空に変わります。可愛らしくて爽やかなサプライズでした。そこでサラっと終演したのも後味がとても良かったです。
出演=畑田晋事/堀口聡/村井亮介/菅谷和美/山田桐子/佐々木幸子/加瀬澤拓未(ロリータ男爵)/白井暁子(白井劇団)
作・演出=水谷圭一 舞台監督=海老澤栄 照明=増田純一 音響=中村嘉宏(atSound) 舞台美術=仁平祐也 小道具=中島香奈子・畠山直子 イラスト=来ケシノ 宣伝美術=水谷圭一 制作=山田桐子・佐々木幸子 Alice Festival2005参加公演
全6ステージ 前売2,200円 当日2,500円(全席自由・日時指定・整理番号付) 平日昼割→前売1,500円 当日1,800円
公式=http://f32.aaa.livedoor.jp/~nobato/
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