映画『レインマン』の舞台化の世界初演です。映画公開ははるか17年前なんですね~、映画館で見たな~・・・。で、舞台ですが、映画よりもずっと良かったです!
4人芝居でチケット代が8500円って高いよな~・・・と思って、A席7000円を買ったんですが、絶対近くで見るべきでした・・・・今週末で東京公演は終わりますが、土日は完売で、明日、あさっては空席が有るそうです。どうぞお問い合わせください⇒チケットスペース 03-3234-9999
ネット上の記事⇒朝日新聞、読売新聞、イープラスtheatrix!(1、2、3)
レビュー⇒IT'S SHOWTIME!!
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レビューを全アップしました(2006/02/16)。
≪あらすじ≫ 公式サイトより引用。(役者名)を追加。
幼い頃に母親を亡くし、厳格な父に育てられたたチャーリー(椎名桔平)。父親の真の愛情に気付くことなく、憎しみだけを抱いたまま家を飛び出し孤独に生きてきた。そんな彼にやってきた人生最大の転機、それは父親の死から始まった。恋人・スザンナ(パク・ロミ)を連れ、遺産目当てに帰郷した彼は、ほぼ全ての遺産を相続する実の兄がいることを知る。ブルナー医師(大森博史)のもと施設で暮らす自閉症の兄・レイモンド(橋爪功)。スザンナの忠告にも耳を傾けず、遺産欲しさにレイモンドを連れ出すチャーリー。全く違う人生を歩んできた二人の過去が、ロスに向かう旅の中で徐々に明らかになっていく。不器用で人間らしく、繊細な二人の心の対話はやがて長い空白の時間をも埋めていき・・・・・
≪ここまで≫
美術は抽象舞台で、モノトーンを基調としたシャープな印象です。机やイス、ベッドは透明・半透明のアクリル製(であろう)ボックスが多用され、黒い床に生えます。長細いステージの真ん中が白い壁で仕切られてニ分割されており、それぞれが八百屋舞台になっています。回り舞台なのでシーンごとに回転して、かなり動きがあります。舞台写真はこちら(音が出ます)とこちら。
原作戯曲や小説はなく、映画をそのまま舞台化していますので、内容はかなり変わっていました。まずチャーリーの職業がネットトレーダー(インターネット上で株の売買をする人)になっていました。これは椎名桔平さんのスマートなルックスとも合っていますし、今の時代にもばっちりフィットしていました。
また、映画はいわゆるロードムービー的要素が強いのですが、この舞台は父と息子、そして家族の愛を発見していくドラマであるということが、まっすぐに伝わってきました。父親に愛されなかったと信じ込んで、堅く閉ざされていたチャーリーの心が、実の兄レイモンドとの出会い、語らいによって、するするとほどけるように柔らかく開いていきます。
登場人物それぞれのバックグラウンドが役者さんの佇まいや対話からしっかりと現れていたので、4人芝居とは思えない世界の広さと分厚さがありましたね。
特にレイモンド役の橋爪功さんのぶっきらぼうな優しさが嬉しくて仕方なかったです。私はダスティン・ホフマンがあんまり好きじゃないんですよね・・・。不恰好な役を進んで選んでいるように見せて、実はいつも自分が一番目立って、好かれるように演じている、計算高い人な気がするからです(勝手ですみません)。
橋爪さんのレイモンドはダスティン・ホフマンのそれとは全く違いました。彼は自分が自閉症であることを自覚し、しっかりと受け止めています。それを踏まえて他人と付き合う覚悟があります。人に優しくしたい、愛したい、抱きしめたい、だけどできない自分をすごく歯がゆく思っています。そして優しくしたいと同時に優しくされたい自分にも気づいており、それをおずおずと態度に示そうとするのが素直で愛らしいです。一見カチカチに固まっているように見えるレイモンドの方が、実は健常者であるチャーリーよりもずっと柔軟で心が広いということが、橋本さんの演技で瞬間的にわかりました。だからこそチャーリーが変化するのです。
ここからネタバレします。
チャーリーが心のよりどころにしていた空想の人物レインマンとは、実はレイモンドのことだったがわかるシーンが、とても静かにやってきました。ジャジャーン!と、いかにもすごいことが起こったような演出でなくて良かったです。チャーリーの体中のやけどの本当の理由もわかり、チャーリーとレイモンドの父親、母親、そしてその4人家族の歴史が鮮やかに私の胸の中に浮かんできました。
父親の遺言では、チャーリーには愛車ビューイックとバラ園、残りの大金300万ドルをレイモンドに遺すことになっていました。チャーリーは最初、それが不服でレイモンドを誘拐したのですが、レイモンドとバスで旅をする内に、大切なのはお金じゃないということが徐々にわかってきます。だって自分はうなるほどのお金を持っているけれど全然幸せじゃないんですものね。父親はチャーリーのことを本当に愛していたんだなって思いました。だって自分が最も愛し、大切にしていたものを、チャーリーに贈ったんですから。
映画ではレイモンドの暗記能力をギャンブルに利用するシーンがありましたが、そういうところが全カットされていたのが素晴らしいと思います。
最後にチャーリーとスザンナが赤ちゃんを連れてレイモンドに会いに行くという、大胆なハッピーエンドにも共感できました。ラストシーンでは2人の間(もしくは人間の心)を閉ざしていた白い壁が倒れていて、その奥にあった森林を思わせるスクリーンが広がりました。美しかったです。
レイモンドが昔、チャーリーを抱きながら歌っていたのはビートルズの"good night"(リンゴ・スターがヴォーカル)でした。かかる回数がちょっと多い目かなとも思いましたが、柔らかく優しいムードでした。
チャーリーが「(病院に)帰る」と言ってきかないレイモンドを説得しようとして、「いろんなことに、ゆっくりと慣れていけばいいんだ」と言います。これはチャーリーの口から出たとは思えない言葉でした。こういう言葉を、実生活で自分が言えるようになりたいです。
椎名さんも橋爪さんもサッカーがお上手ですよね!2人でリフティングが20回続くまでやってくださって、サービス満点!・・・かと思ったら、20回続いた後に喜んで抱き合ったあの瞬間が、2人が初めて触れ合った時だったんですね。その決定的なシーンをライブで見せてくださるなんて、素晴らしい演出だと思います。
橋爪功さん。レイモンド役。自閉症を決しておおげさにならず、キュートに見せてくださいました。『シラノ・ド・ベルジュラック』でも大感動したんですが、橋爪さんって本当に優しい方ですよね。膨大なセリフのぼう読み(笑)が圧巻。
椎名桔平さん。チャーリー役。やっぱりカッコイイ役がいいですね、椎名さんは。クールなスーツがよくお似合いです。椎名さんもたくさんのセリフをさらりとこなしてくださいました。
パク・ロミさん(漢字が載せられません)。チャーリーの恋人のスザンヌとダイナーのウェイトレス役の2役。スタイルいいわ~、みとれたわ~。演劇集団円の方なんですね。声優さんで、歌手なんです。この公演で一気にファンが増えそう。
大森博史さん。医師役。何の問題もない。素晴らしい。
"Rainman" Based on the Metro-Goldwyn-Mayer motion picture written by Barry Morrow
≪東京、大阪、名古屋≫
出演=椎名桔平/橋爪功/朴ろ美(パク・ロミ。ろは王へんに路)/大森博史
演出・脚本=鈴木勝秀 原作=バリー・モロー 音楽=横川理彦 美術=二村周作 照明=倉本泰史 音響=井上正弘 衣裳=原まさみ 演出助手=長町多寿子 舞台監督=二瓶剛雄 プロデューサー=河出洋一(TBSテレビ) 主催・企画・製作=TBS
22ステージ。(月)休演。2005年10/15発売開始。S¥8500 A¥7000 ※未就学児童の入場不可。
劇場=http://www.tglobe.net/
チケットスペース内公式=http://www.ints.co.jp/rainman/index.htm
TBS=http://www.tbs.co.jp/event/rainman.html
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