鈴江俊郎さん(劇団八時半)の戯曲の2本立て公演です。演出は『髪をかきあげる』に引き続き『待つ』を拝見してまいりました。『待つ』は1994年度KYOTO演劇フェスティバル大賞&脚本賞 受賞作品です。
『髪をかきあげる』よりも上演時間も短かく、軽い感覚で観られました。ク・ナウカもそうだけど、青年団の女優さんってきれいな人が多いですねーっ。
レビュー⇒踊る芝居好きのダメ人間日記 、休むに似たり。
この2~3週間ほどの間にしみじみと感覚を確かめているのですが、大劇場や中劇場で上演される演劇よりも、小劇場演劇の方が面白い作品に出会える確率が上がっていると思います。私の好みが変わってきているのかもしれませんが、小劇場へ行くときの足取りの方が確実に軽くなっているのです。
≪あらすじ・作品解説≫ 公式サイトより引用。踊る芝居好きのダメ人間日記に詳しいあらすじあり。
若い女(鈴木智香子)の部屋、中央にこたつ。女の部屋を次々と訪れる人々。
人々は女の部屋に、 様々なコトガラを落としていく。
待ちかねた人は、本当に待ち人なのか。
コドクではないと嘘ぶいて、ひたすらに待っている人の物語。
1994年度KYOTO演劇フェスティバル 大賞&脚本賞受賞作品。
≪ここまで≫
『髪をかきあげる』は真っ黒で閉塞感のあるシャープな空間でしたが、『待つ』は若いOLの一人暮らしの部屋が中央にありますので、温かい生活臭のする美術でした。上手前にはラーメン屋のカウンターがあって、上手奥のスペースには床にテニスボールが多数転がっており、ベンチとセットでテニスコートを表していました。
『髪を・・・』と同様、やっぱりセリフの言い方が面白いんです。大声で叫んだり、詩のようだったり、つぶやきだったり。いわゆる静かな会話劇なのですが、私の日常的な感覚とは違った対話が常に生まれていて、一言ひと言をじっくり味わいながら楽しく最後まで観させていただきました。
パンフレットに書かれた演出の田野さんの文章より↓ (部分的に中略)
『待つ、というのは、ひょっとしたらものすごく積極的かつ攻撃的な態度の表明、なんじゃないだろうか。存在を確かめるための。』
『待つ、ことは、賭ける、ことだ。賭けは、希望だ。
待つ、ことは、祈る、ことだ。祈りは、心からの行動だ。
じゃあ、何を祈る?』
青森だったか、どこか東北地方のニュースの音が流れていましたね。あれは舞台が東北だという意味なのかしら。
ここからネタバレします。
24歳OLの小川マキ子(鈴木智香子)はテニススクールで出会った妻子もちの高島(太田宏)と不倫の関係にあります。果たして彼を待っているのか、何かを待っているのかはわかりませんが、休みの日はずーっとこたつに入って、本を読んだり音楽を聴いたり一人言を言ったりして、ズルズルと時間を過ごしています。何度も手に取る本は、新興宗教(おそらく幸福の科学)の本です。
いつもなら誰も来ないマキ子の部屋に、不倫相手の高島(太田宏)、職場の先輩(たむらみずほ)、係長(西村和宏)の4人が同時に集ってしまうのがすっごく可笑しいです。もし本当にこんなことが起こったら、きっとこんな静か~に気まずくて、意外と何も隠さずにポンポコと話をしてしまうものなんだろうなと思いました。
ただ、係長からもらったネックレスのラッピング箱の残骸について、マキ子が具体的に「係長が持ってきて・・・(云々)」と説明してしまうのは、わざとらしい気がして残念でした。
市役所での出世にアグレッシブな23歳の大山田(長野海)と、28歳でテニススクールのコーチに叶わぬ恋心を抱いている杉村(たむらみずほ)、そして不倫をしている小川マキ子(鈴木智香子)という、3人の20代女性にスポットが当たったところが良かったです(その横で誰がどんなセリフを言ったかは残念ながら忘れてしまいました・・・)。10年前から今も変わっていない、もしかするとエスカレートしてしまった、若い女性のあり方が胸に刺さりました。孤独で寂しいですよね。
鈴木智香子さん。『地球の片隅で ライフ・レント編』でも強く印象に残る女優さんでしたが、今回もまたうるんだ瞳とゆるい口元がグサっと来ました。
たむらみずほさんのスコート姿もお宝ものですよね。スタイルいーなーっ。長野海さんも可愛かったです。
太田宏さんはやっぱり渋くてステキだと思いましたが、『髪をかきあげる』の方が恐ろしくてセクシーで良かったです。
係長役の西村和宏さんは第三エロチカの方だと思っていたのですが、今はサラダボールの演出家で、青年団の演出部にも所属されているんですね。おまぬけさんな演技が可愛かったです。でもくしゃみについてはちょっとわざとらしいような・・・あれは演出なのかな。
『待つ』出演=鈴木智香子/たむらみずほ/長野海/太田宏/西村和宏/古屋隆太
『髪をかきあげる』出演=山本雅幸/古屋隆太/荻野友里/山本裕子/太田宏/天明留理子/大塚洋
作=鈴江俊郎 演出=田野邦彦(青年団演出部) 舞台美術=鈴木健介 照明=西本彩 音響=薮公美子 制作=岩佐暁子+RoMT 宣伝美術=太田博久 総合プロデューサー=平田オリザ 企画・制作=青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 協力=劇団八時半 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
2/1休演日。各10ステージ。前売・予約・当日共同じ値段。日時指定・全席自由・整理番号付。一般『待つ』2,000円/『髪をかきあげる』2,500円学生・シニア(60歳以上) 【両公演とも】1,500円 高校生以下【両公演とも】1,000円/平日マチネ割引、2演目セット券あり
劇場内=http://www.komaba-agora.com/line_up/2006_1/romt.html
青年団内=http://www.seinendan.org/jpn/infolinks/infolinks051124.html
稽古場日記 RoMT Live!=http://blog.livedoor.jp/romt2005/
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