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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年02月28日

ネルケプランニング『tatsuya 親愛なる者の側へ』02/28-03/05紀伊國屋ホール

 何度も再演を重ねた鐘下辰男さんの代表作(1991年初演)ということで観に行きました。津田健次郎さん目当てでもあったんですが。
 紀伊國屋ホールのロビーで若い女の子のキャーキャー声が聞こえてくるなんて意外でしたよ(笑)。なんでかしらと思ったら『テニスの王子様』のミュージカルなどに出演している男の子たちが出てるからなんですね。

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 ≪あらすじ≫ チラシより。
 ハシモトタツヤ 19歳。 本籍・北海道網走市呼人番外地。網走で母親に捨てられ、貧困のどん底を生き抜き、集団就職で上京してきた少年、タツヤ。学生デモが繰り広げられる混乱の街・新宿。彼の周りに渦巻くのは理不尽な差別と凄まじい暴力、そして裏切り・・・絶望の中、手にピストルを握り締めるタツヤの脳裏をよぎるのは、笛のようにこだまする風の音と、容赦なく打ち寄せるオホーツクの海だった。
 高度成長の日本で実際に起きた19歳の少年による連続射殺事件「永山則夫事件」を題材にした作品。色あせることのない鐘下辰男の代表作。
 ≪ここまで≫

 19歳の連続射殺犯・永山則夫は昭和44年に逮捕され、平成9年に死刑執行されて亡くなっています。永山則夫をモデルにした主人公のtatsuya(津田健次郎)がいかにして殺人を犯していったのか、そして彼の不幸な生い立ちも辿っていく、ドキュメンタリー風のお話でした。

 学生紛争とかクスリ漬け&レイプとか、暴力的なシーンが多いです。あらすじにありますように「理不尽な差別」「凄まじい暴力」「裏切り」ばかりが続きます。そしてピストルで連続殺人ですからね。いやな緊張を何度もしました。正直、見続けるのがちょっとつらかったです。
 舞台は学生紛争が激化していた高度成長期の日本です。「なぜ今、これを上演するのかしら?」という疑問を持ちつつ、でも知らないことを教えてもらえるのはありがたいな、という気持ちで最後まで拝見しました。

 tatsuyaが殺人をするに至った経緯を知るにつけ、いたたまれない気持ちになりました。かわいそう、というより、「なぜ?」っていう気持ちが大きかったですね。超ありきたりな感想ですが、やっぱり人間は優しくならなきゃなって思いました(なんだか恥ずかしい・・・)。

 つらい話で大変そうな役を、役者さんは皆さん必死で演じてらっしゃいました。皆さん体当たりされていて甘えが全然なかったので、かなり好感を持って拝見していました。ただ、言葉も演技もちょっと直接的すぎるんじゃないかと思いました。怒りのぶつけ方が一辺倒だったり、一度叫んだらほぼ同じトーンで叫び続けるんですよね。キャラクターの色付けが一色に統一されているというか。もっと複雑に、繊細に作っていただけるとリアリティーが増すのではないでしょうか。

 演出は扉座の茅野イサムさんです。茅野さんといえば『サクラ大戦』歌謡ショウの演出ですよね。エンタメ系の演出だなと感じるところが多かったです。特に音楽の鳴らし方と照明の使い方はわかりやすかったですね。鐘下辰男さんだったら絶対にこれはないな~とか思いつつ(笑)、私にはソフトなタッチで良かったかもしれません。

 ここからネタバレします。

 まず死刑の判決がくだったところから始まり、そこから時間を遡っていきます。ちょっと前から、かなり過去へ、そして“現在”に戻ったりもします、「今演じられているのは“いつ”なんだろう?」と探りながら観ることもしばしばでした。tatsuya役の津田さん以外の役者さんが色んな役を演じるのですが、時どき誰が誰なのかわからなくなることもありました。私は結構楽しかったですが、混乱しちゃう人も多いかもしれません。

 tatsuyaが獄中で書いた手記であろう文章が何度もマイクで流れるのですが、その朗読は誰がされていたんでしょうね。津田さんではない気がしたのですが(津田さんだと思った時もありました)。ちょっと感情を込めすぎなんじゃないかと思いました。

出演=津田健次郎/伊藤裕子/鈴木省吾/大口兼悟/和田正人/渡辺修
作=鐘下辰男 演出=茅野イサム 音楽=佐藤太(BQMAP) 舞台美術=金井勇一郎 舞台監督=宇佐美雅人 照明=林順之(ASG) 音響=青木タクヘイ 衣裳=木村猛志(衣匠也) 演出助手=大江祥彦 宣伝美術=森阪ゆう子 宣伝写真=設楽光徳 スタイリスト=岡井雄介 プロデューサー=松田誠 製作=ネルケプランニング
全8ステージ 発売日=1月8日(日) 前売り4,500円(全席指定・税込)※未就学児童の入場不可。
*1991年の初演後、繰り返し上演されて、1992年に文化庁芸術選奨 文部大臣賞 新人賞受賞を受賞。
ネルケプランニング=http://www.nelke.co.jp/stage/tatsuya.html
ぴあ内=http://info.pia.co.jp/et/promo/play/tatsuya.jsp

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Posted by shinobu at 2006年02月28日 23:48 | TrackBack (0)