劇団道学先生の中島淳彦さんの戯曲を加藤健一さんが演出。私は2004年の紀伊國屋ホール公演を拝見しています。出演者の年齢がちょっと上がったのと、カトケン・テイストの明るい演出になっていました。
平日マチネに伺ったので客層もかなり高年齢になっていたようで、私にとっては意外なところで笑いが起こって楽しかったです。舞台写真はコチラ。
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。
1970年、大阪にて日本万国博覧会(EXPO'70)が開幕。この史上最高の大イベントに日本中が大騒ぎしている頃のこと。舞台は九州・宮崎県、海と山に囲まれた静かな田舎町。この町のある家では、突然の母の死で残された家族たちが右往左往していた。それはこの平穏な町におとずれた、ちょっとした事件だったのだ――。
日本中の誰もが明るい未来を信じて懸命に生きようとしていた昭和の時代。不器用だけど優しく、いとおしい人々の姿を繊細に描いた人気作家・中島淳彦流ハートウォーミング・コメディ、カトケン版「エキスポ」。バラエティに富んだ魅力的なキャスティングでお贈りします。
≪ここまで≫
私はお葬式ものが苦手です。でもこの戯曲は本当によく出来たコメディーで、大げさな深刻さとか、わざとらしいドラマとかがなくって素直に楽しめます。しかもちょっとエッチ(というか助平)なのがいい(笑)! 客席は笑いがいっぱいでしたし、私も笑えたところが沢山ありました。
ただ、作品全体を一本貫くような世界観というか、筋道などが感じられず、シーンごとにバラバラだった印象です。演出は2004年(黒岩亮さん演出)の方が良かったと思います。まず、幕開けから登場人物の雰囲気が明るすぎて、お通夜だっていうことが伝わってこなかったです。実の母親が死んだばかりなのにすっごく軽い足取りなんですよ、残された家族が。母親が経営していた連れ込み旅館(ラブホテル)には村の人々の甘い秘密がたくさんあるわけで、もうちょっとじんわりとほのめかすようにしてから、徐々に露わにされていって欲しかったですね。すぐにセリフと演技でスパッと説明しちゃうので余韻が少なかったように思います。
ここからネタバレします。
加藤健一さんは父親ゆずりの甲斐性なしの長男役で、浮気はするし香典は盗むし、かなりのダメ男です。でもそんな風に見えなかったんですよね~、カトケンさんはやっぱりカッコイイしちゃきちゃきしてるから・・・。
有福正志さん。妻に先立たれた父親役。やっぱりこの年齢の方じゃなきゃ、ですね。お骨をかかえて万博に行き「人間の進歩と調和げな」と何度も声を張り上げられる姿には、ホロリと来てしまいました。
富本牧子さん。よく働く長男の嫁役。何かにつけこの人が中心になってるんですよね。お茶の葉の入れ物の蓋を本当に落としちゃって、あわててらっしゃるのが面白かった(笑)。生の笑いの良いムードを崩さずに、素早く復帰されたのが見事でした。
若い俳優さんが良かったですね。演技に息が通っているというか、どうしても目が惹きつけられました。
浅野雅博さん。葬儀屋役。そもそも浅野さん目当てで観に行ってますのでね、私は(笑)。いつも期待通りに楽しませてくださいます。笑いを生む呼吸が上手いんですよね。出戻り長女役の加藤忍さんとの掛け合いでは、力の入った加藤さんとリラックスした浅野さんとのデコボコ関係が笑えました。
加藤健一さんが演出された『-初恋』でお見かけした若手のお2人が出演されてました。
伊原農さんは東京のレコード会社の社員役。やっぱり・・・スーツ姿で超かっこいいんですよ、体が(笑)。そしてゲイに惚れられるという・・・ハマリ役。演技も良かったです。
横山利彦さん。ゲイ・カップルの一人。柱にすがっておよよと泣き崩れるのに爆笑させていただきました。
出演=加藤健一/加藤忍/畠中洋/富本牧子/新井康弘/高橋麻理(扉座)/さとうこうじ/横山利彦/篠田剛
(演劇集団キャラメルボックス)/浅野雅博(文学座)/石坂史朗(扉座)/伊原農/有福正志/外波山文明(椿組)
作=中島淳彦 演出=久世龍之介 美術=柴田秀子 照明=五十嵐正夫 音響=松本昭 舞台監督=鈴木政憲 方言指導=濱崎けい子 製作=加藤健一事務所
18ステージ チケット発売1月15日(日) 前売¥5,000 当日¥5,500 全席指定 高校生割引¥2,500(要学生証提示・当日券のみ・予約不可)
公式=http://homepage2.nifty.com/katoken/62-index.htm
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