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しのぶの演劇レビュー
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2006年03月09日

DULL-COLORED POP『ラパン・アジルと白の時代』03/03-05阿佐ヶ谷アルシェ

 谷賢一さんが作・演出するDULL-COLORED POPの第2回公演です(第1回のレビューはこちら)。モーリス・ユトリロおよび彼を取り巻く人々を描きながら、彼の画家人生を紹介していく作品でした。
 初日に観に行ったのは失敗だったかな・・・とちょっと後悔しました。20代前半の学生が集まった劇団で、第2回公演ならまあ仕方ないかも、というところです。ただ、チケット代が今上演中の五反田団と同じで前売り1500円なんですよね~・・・小劇場の若手劇団はチケット代の値段設定に深慮が必要でしょうね。まず五反田団を観てみなきゃだめなんじゃないかな。

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 間口が狭く、奥行きがちょっと広い空間の全体を白い壁で囲み、ユトリロの絵(のコピー)を飾ってギャラリー風にしていました。客席の方までずっと白い壁が続いていたので、より広く感じました。舞台上にあるのは膝下ぐらいの高さの白くて四角い箱が数個だけ。この箱をイスと見立てて、色んな場面(フランスの街、酒場、モーリスの家、画廊など)に転換します。

 イスしかないわけですから、後はすべてマイムで表現します。テーブルもないし、グラスもないところで飲んだくれる演技をするのは大変です。マイムって簡単にできることではないですからね、色んな不都合が発生していました(たとえば床にあるはずの嘔吐物をどんどん踏んじゃってました)。低予算公演でよくあるタイプの演出ですが、リスクが大きいと思います。

 脚本は面白かったです。特にサス(スポットライト)を浴びて登場人物が一人一人独白をしていくのがとても良かった。「実は彼は~だったんですよ」と誰かが言うと、違う誰かにサスが当たり、「それは嘘だ!本当は~」と、次々に話していくのです。
 若きモーリスは酒代を稼ぐために絵を描いて売るという日々を送っています。すごいアル中で、けんかっぱやい不良だったんですね。彼がそんな性格になってしまったのは彼の母親のせいだという視点から、途中でモーリスではなく彼の母親の若い頃も描くようになりました。一人の男を描くためにその周り(特に母親)を描くことは効果的ですし、結果的にその時代の画家というもの全般についても表すことが出来ていたように思いました。
 あと、ギャグが面白いんですよね。役者さんのアドリブ的なネタじゃなくて、脚本にすでに書かれているであろうものが。
 何年後かに再演されたらいいのではないでしょうか。皆さんがもっと成長されてから。

 モーリスがずっと室内でイーゼルに向かって絵を描いているシーンで、照明が朝、昼、夜と変わっていくのはきれいでしたね。人物同士が対峙したり、セリフのやりとりがない場面でシーンが成立しているのは、前回公演ではあまり見受けられなかったことです。サス下の独白や抽象美術および衣装の点からも演劇的なアプローチが多く、演劇作品としては前回よりも見所がありました。

 役者さんはちゃんと正面(客席の方)を向けない人がほとんどで、普通に観てられたのは8人中2人ぐらいですね。これは若手の小劇場劇団でよくある状況ですので、私はもう慣れました。イヤだけど。

 モーリス役の富所浩一さんは、絵を描く筆さばきがとっても様になっていて、画家に見えました。
 はじめにサスに入って独白を始めたモーリスの友・ユゼ役の大野遙さん。この方の独白からやっと普通のお芝居になりました。
 立っているだけで目を引いたのは、最後の方に登場したモーリスの妻・リュシー役の清水那保さんでしたが、あまりにセリフを間違うので驚きました。そうか、演技じゃなくて天然だったんですね・・・。

 初日ということで・・・かなりドタバタしていたようです。目に付いた不手際がたくさんありました。たとえば開場・開演ともにかなり遅れていました。また、当日パンフレットに予告されている画集が舞台上に用意されていなかったり。
 作・演出の方が開演前に長い前説(実はセリフ)を言われましたが、たどたどしくて・・・。物語をそのまま上演するだけでも伝わってくることだったと思いますので、あれはない方が良かったですね。やるならちゃんと役づくりが必要でしょう。例えばギャラリーのオーナー役になって、訪れた客(=観客)に話しかける設定はどうかしら。
 これは初日だったからかどうか(後半で改善されたかどうか)はわかりませんが、絵が入っていない額が多数あったのは、ストーリーや演出から考えても、単に全部揃わなかっただけなのでしょう。そう思われても仕方ないと思います。

 ※チケットを作っていない公演でした。私はチケットを領収証がわりにしていますので、チケットがない場合は領収証をもらうことにしています。この劇団に限ったことではないですが、制作さんには領収証の書き方をマスターしておいてもらいたいです。

出演=池田学/岩藤一成/遠藤恵一/大野遙/清水那保/高橋絵梨佳/富所浩一/堀奈津美
作・演出=谷賢一 舞台監督=三友良平 照明プラン=松本大介 照明操作=滝井麻美 音響効果=鮫島あゆ 舞台美術=萩原未来 衣装=杉崎真由子 宣伝美術=ofj 小道具=新井宏美/高野翼 制作=大藤多香子
5ステージ 前売り1500円、当日1800円
公式=http://www.dcpop.org/

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Posted by shinobu at 2006年03月09日 13:27 | TrackBack (0)