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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2006年04月04日

青年団若手自主企画vol.27多田企画『別』03/31-04/04アトリエ春風舎

 東京デスロック主宰で青年団演出部所属、そして動物電気の役者さんでもある多田淳之介さん の、青年団若手自主企画内・多田企画。帰国直後で観に行けないかと思っていたのですが、けっこう元気だったので千秋楽に間に合いました!
 すっごく面白かった~♪上演時間が85分と短めなのも気持ちいいです。アトリエ春風舎はほんとにハズレが少ないですね。

 多田淳之介さんのJNSK OFFICIAL DIARYでこのレビューをご紹介いただきました!超うれしー!!使用楽曲も公開されています。(2006/04/06追記)

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 ≪あらすじ≫ 当日パンフレットより。改行を変更。(役者名)を追加。(夫の)を追加。
 とある地域に、信じられないくらい雨が降った。たかが雨でも家屋は沈み死者も出た。人々は仮設住宅への入居を余儀なくされ、復興へ向けての生活を始めた。
 その数年後。仮設住宅の撤収も決まり、入居者も近田夫婦(永井秀樹&山村崇子)・津久井みどり(75歳)の二世帯のみとなっている。近田夫婦は被災直前に離婚を決めていた。原因は夫の浮気。(夫の)再婚相手は被災して死んでいる。明日は近田夫婦の退去日。今日はお別れ会が予定されている。
 その日の朝。津久井みどり(75歳)が自分の部屋で首を吊って死んだ。お別れ会は津久井さんの通夜の後行われる事になった。
 ≪ここまで≫

 本日夜公演で千秋楽なのでネタバレします。

 舞台は仮設住宅の中の畳の部屋。殺風景な壁に折り紙などで“お別れ会”の飾りつけが施されています。低いテーブルにはお酒もおつまみも用意されていて、親しい人たちが集まるのであろう歓待のムードが漂ってはいるのですが、役者さんが話している言葉(方言)が全く理解できない・・・どうやら造語?? 

 わからないながらも声の種類や大きさ、身ぶり手振り、話す相手とのアイコンタクトなどを見ていると、徐々にどの言葉がどの意味を指すのかがわかってきました。でも、意味がわかってから初めて面白くなったのではなく、全然わからないままに、ただ人々がコミュニケーションを取っているのを眺めているだけでも、面白かったんですよね。
 特に怒鳴り合うところなんて、たくさんの人が同時に、バカみたいに大きな声でしゃべり出すものだから、それだけでプっと吹き出して笑っちゃいました。言葉がわからなかったおかげで、発せられた声の種類をより多様に味わえた気がします。これは表情や動きなどにも当てはまりますね。

 開幕したばかりの時は露骨な悪口が矢継ぎ早に出てきて、乱暴なしゃべり方が多いように感じましたが、そういう方言なんだな、と徐々に受け入れられるようになり、親しみも沸いてきました。独自に作り出した言葉をその域まで自然に表現できていたのは、役者さんと演出の力だと思います。

 最初は菊川真子(荻野友里)と金髪の幟喜一(山本雅幸)がいちゃいちゃしていたので、彼らは恋人同士なのかしら?と思っていたら、実は喜一には寺井りく(後藤麻美)という彼女がいたんですよね。だから真子とはただの浮気なのです。お別れ会の主賓である近田夫婦は、夫の浮気で離婚することを決めているし、仮設住宅の職員の三田雅巳(山田伊久磨)と、祖母が死んだばかりの津久井由布(村井まどか)は、お互い恋人が居るのに濃厚にキスしちゃうし。終盤ではりくと真子が喜一を挟んで三角関係になりますが、三田がりくに手を出した(と、喜一が誤解した)のが原因だったのかな?どちらにせよ、あの修羅場はめちゃくちゃ面白いですね。他人の不幸は密の味です。
 若くても大人でも、田舎でもどこでも、たとえ被災地でも、やっぱり恋愛が人生を振り回します。結局、意味がわかろうがわかるまいが、あの仮設住宅の一室で話されていた内容って、男と女の痴話げんかでしかなかったんですよね。それが愚かだし可愛いです。

 幕開けや途中で、舞台を覆う緞帳のように閉められた黒幕に映像が写されます。実際に水害にあった地域のニュース映像だと思うのですが、画質や編集が荒くてちょっと不満でした。でも最後に流された映像(=お別れ会が終わってから、職員の増村と三田が部屋をどんどん片付けていきます。すっかりきれいになって2人が去ったら、バチっと砂嵐に切り替わり、しばらくして終演)で、腑に落ちました。
 素直に解釈すると、このお芝居はニュースで報道されていた被災地の数年後の出来事だったということなのですね。傍観者である私たちは事件が起こった時だけ大騒ぎしますが、事件後も現地で生活は続いています。被災地に居ない者には知り得ない人間の営みが、ちゃんとそこにあるということなんですね。
 しかしながら、実は黒幕がかけられた舞台の額縁は四角い枠で囲まれていました。お芝居全編がテレビの中の出来事だったとも受け取れるのではないでしょうか。フィクション(テレビドラマや映画)とドキュメンタリーの、どちらとしてでも解釈可能だと思います。お芝居という嘘の中にもう一つ嘘の枠を作って、流暢な造語による生き生きしたコミュニケーションを、敢えてヴァーチャルな(嘘っぽい)ものに変質させてしまう過激なラストシーンだったと思います。
 
 使われていた言葉は日本のどこか架空の地域の方言になりますよね。笑っちゃうほど下品な言葉に変更していましたね~(笑)。例えば、男=ちん、女=まん、彼氏なんてちんこですからねっ(うわ、書いちゃった)。他には、呑む=やる、関係ない=つながらない、浮気する=またぐ、帰る=き(帰)る、等。初演の時は全編標準語だったそうです。今回のために新しい方言を作ったんですね。

 カラオケに行ってきた人たちが部屋に帰ってきても歌っちゃう歌は、「別れても好きな人」「氷雨(飲ませてください もう少し~)」「嵐の素顔」など。ありきたりすぎて最高です。乾杯する時に長淵剛の「乾杯」(省略版)を歌うのも可笑しかった。“君に幸せあれ~”の最後は「いとしのエリー」のラストみたいになってなかったかしらん?
 合間にかかる音楽(曲)も良かったです。オープニングの曲は何かな~、すっごく合ってたな~。最後の「ラストダンスは私に」は誰が歌ってるヴァージョンかしら。聞き惚れました。

 山内健司さん。丸いメガネをかけた仮設住宅の職員、増村役。何をやってもやらなくても、面白かった・・・あぁしみじみ。突然怒鳴りだすことがめちゃくちゃ多かったのですが、全然いやな気がしませんでした。タッパーの蓋をわざわざ持ち出したのに、人を指すこと以外に使わなかったのが可笑しかった。
 山田伊久磨さん(エッヘ)。上半身裸で寝てた時「やっぱり・・・」ってちょっと思いました(笑)。寝てる演技は本当に寝てるみたいだった。津久井由布(村井まどか)とのキスシーンも本気でいいわー。ほんとかっこいー人だわー。白ブリーフ姿よりもエッチでセクシーでした。

出演=山内健司/山村崇子/永井秀樹/村井まどか/山本雅幸/荻野友里/後藤麻美/山田伊久磨(エッヘ)
作・演出・音響・宣伝美術=多田淳之介 照明=伊藤泰行 舞台美術=濱崎賢二 舞台美術アドバイザー=鈴木健介 総合プロデューサー=平田オリザ
終演後にポストパフォーマンストーク有りの回あり。31日:牧田明宏(明日図鑑主宰)/2日:三浦大輔(ポツドール主宰)
予約・当日共2,000円 日時指定・全席自由・整理番号付 発売=2月14日
劇場=http://www.komaba-agora.com/line_up/2006_3/tada.html

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Posted by shinobu at 2006年04月04日 20:52 | TrackBack (0)