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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年05月04日

P.E.C.T.『まどろむ魚』05/03-07劇場MOMO

 チェルフィッチュ『三月の5日間』に出演されていた役者さんが3人(瀧川英次、山崎ルキノ、東宮南北)も出てらっしゃるので観に行きました。P.E.C.T.(ペクト)は16周年を迎える劇団なんですね。今回の脚本はProject ONE&ONLYの白土硯哉さんです。

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 レビューを全部アップしました(2006/05/05)。

 ≪あらすじ≫
 東京郊外の町の公立野球場のバックネット裏。さびれた売店とベンチがある。その小さなベンチに腰掛けて、橘隆(佐々木覚)と葵晋之助(瀧川英次)は頭を悩ませていた。2人で書いた小説が賞を取ったのだが、“橘葵(たちばな・あおい)”というペンネームで、しかも女性として応募していたからだ。その秘密を知っているのは出版社社員だけ。とりあえず“橘葵”は隆の姉だということにするが、後援会を作りたいというファンが押しかけてきたり、地元の有名文筆家から圧力がかかったりして・・・。
 ≪ここまで≫

 野球場のあるのどかな公園のベンチに、色んな人がやってきて去っていくというスタイルです。主軸は小説家を目指す若者2人。劇場MOMOに高い壁ができていて、劇場の天井がとても高く見えました。先週の芝居(会社の倉庫の中のお話)と全然違ったので、勝手に比較したりして楽しかったです。

 初日だったからでしょうが、中盤まではドタバタしていて落ち着きが見えず。でも、イヌをつれたおばあさんたちの井戸端会議シーンが終わってから一気に良くなりました。
 素直な会話から日常を描く大人しいめのドラマかと思いきや、突然ぬいぐるみを使ったり、漫画のようにデフォルメされた動作や演技をしたり。役者さんがまだまだ手探り状態だったのでうまく成立はしていなかったけれど、アイデアは個性的だし面白いと思いました。たぶんこれから良くなっていくのでしょう。

 橘隆(佐々木覚)と葵晋之助(瀧川英次)以外の役者さんはどんどん着替えて複数の役を演じられます。後から本流につながっていく役もありましたが、全然関係ない役(親の離婚で離れ離れになる子供たち)は、いったい何だったのかな~。

 戸惑いながらの観劇だったのですが、最後にふわんと良いムードの後味になって、正直なところ驚きました。エンディングがとても良いので、途中はもっと自信を持ってはじけちゃっていいのではないかと思います。

 ここからネタバレします。

 地元の有名文筆家の直筆によるこいのぼりにはムリが有るな~と思いました。直筆でわざわざ描くほどの絵じゃないな、とか。マンホールに入れて引っ張るには長さが足りないな、とか。どうせムリなんだからもっと漫画っぽくやったりしていいんじゃないかしら。あと、散歩している犬のぬいぐるみをかぶって、いきなり犬の本音語りになるシーンとか、なぜか「おしまいだー!」と皆で叫んで走るところとかは(書いてみたら本当によくわかんないシーンだな・笑)、堂々とやってもらいたかったですね。演劇ならではの面白い演出ですし、成立させられないわけじゃないと思います。

 すったもんだの後、隆と晋之助はそれぞれ別の道に進んだらしく、ラストは数年後の同じ場所で、カジュアル・ルックの隆とパリっとスーツ姿の晋之助が同じベンチに座っているシーンに戻ります。ものすごく優しくて、味わいのあるムードになっていました。その前に売店のおばちゃん(松本美香)がスーツケースを持って、店をたたんで旅立っていくシーンがあったからこそ、生まれたんじゃないかなと思います。それぞれが自分の選んだ道を進んで別れ別れになっていく、潔さとさわやかさがありました。

 葵晋之助役(メガネ)の瀧川英次さんが、落ち着いた演技で流れをひっぱっていました。最近、瀧川さんを舞台でよくお見かけしますが、キャラクターの変化がすっごく多彩で的確、そして魅力的です。笑いも確実に生んでくれます。次は6月のOi-SCALE『キキチガイ』ですね。楽しみです(その前に漫談出演もあり)。

出演=東宮南北/佐々木覚/井上つぐみ/波田野淳紘(820製作所)/佐藤拓道/山崎ルキノ/山崎いさお(Project ONE&ONLY)/瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)/松本美香
作:白土硯哉(Project ONE&ONLY) 構成演出=P.E.C.T. 舞台美術=齋田創+突貫屋 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響=荒木まや 打楽器指導=オーギー・リン 衣裳協力=佐宗乃梨子 小道具協力=廣瀬亜矢子 写真=相川博昭 イラスト=太田ひろこ 広告デザイン=北見大輔(beam-up) 制作協力=川井麻貴(SEABOSE) 制作=薄田菜々子
一般前売2800円 当日3000円 高校生以下割引2500円★リピート割引:半券お持ちの方は1000円にて再度御来場いただけます。
公式=http://www.pect-inter.com/

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Posted by shinobu at 2006年05月04日 12:12 | TrackBack (1)