鈴木省吾さんがプロデュースするSHOW-GO PRODUCEの第1回公演です。豪華キャストでチケットは早々と完売していました。当日券は用意されているようです(当日券は開演の1時間前より発売)。
脚本は明日図鑑の牧田明宏さん、演出はウォーキング・スタッフの和田憲明さんということで、予想はしていましたが、上手い役者さんと緻密な演出のおかげで、気分の悪いこと極まりない展開の(笑)、濃密な会話劇に仕上がっていました。私は前から2列目の席だったこともあってか、ものすごく疲れました・・・が、最後の最後にストンと腑に落ちて、心地よい疲れとなりました。
≪あらすじ≫ 予備知識なしで観るのが面白い気がするので、さわりだけ書いておきます。
都会から農村に移り住んできた2組のカップル。村の人々と少しずつ仲良くなり、農業にも慣れてきたように思っていたが、ある事件を機に歯車が狂いだす。
≪ここまで≫
人間はどんなにきれいに生きようとしても、なかなか聖人のような人生を送ることはできません。そして年を取れば取るほど大きく、厚く積み重ねられた過去が足かせになって、生きることがどんどん困難になっていきます。すべてやり直したい、新しい人生を生きたいと願っても過去を捨てたり消したりは決してできないから、人間はドス黒く絶望してニヒルになったり、開き直って捨て身になって幸せになろうとしたりするんですよね。
欲望と悪意にまみれた人間の汚さをとことん描ききり、何事も決して望み通りにはならない残酷な運命を見せることで、最後には全てへの愛と許しが見えた気がしました。疲れたけどとっても充実した演劇体験になりました。
ここからネタバレします。
2組のカップルとは元リサイクル・ショップ店主の白井(宇納侑玖)とその妻・美那子(小林愛)と、元大学講師の暮石(多根周作)とその妻・茜(佐伯花)です。赤の他人同士の一軒家での共同生活が少しずつ崩壊していきます。最初からいかにも幸せそうに装ってるぎこちなさと、気まずいムードが流れていました。こういう細かい演出をじっくり味わえるのが何より嬉しかったです。
都会の人と田舎の人との間の大きな溝を核に、登場人物一人一人のバックグラウンドがしっかり書きこまれた脚本でした。堅く決心していた約束を自ら破ったり、隠し通してやりすごそうと思っていたことがバレたり、命がけで逃げてきたのに発見されてしまったり、物事がことごとく暗い方へと向かいます。でも全く降らなかった雨が最後の最後に降り始めて、赤ん坊を抱く女がいて・・・というエンディングで、胸が悪くなるほど醜い人間が、可愛らしく、いとおしい存在になったように感じました。
東京から地方へ移り住んだ白井たちを取材しにやってきた、女性記者(松山美雪)とカメラマン(森山栄治)の過剰な主従関係(女がボスで男が奴隷)が笑えました。終盤でその関係がひっくり返ったのも痛快でした。ずっと気持ちを抑制していたカメラマンが、上司(=記者)をぐいっと引っ張ったのには胸キュンでしたね(笑)。
シーンとして一番臨場感があってゾクゾクしたのは、元ヤクザの村上(鈴木省吾)と年下のヒットマン・森(別紙慶一)が向かいあうところ。村上がこっそりとカバンの中から銃を取り出したのが、森に見つかったか見つからなかったか・・・という無言の間が最高にかっこ良かったです。森が村上に銃を向ける前に、少しなみだ目になって迷った(演技をした)のも、このシーンの真実味をぐっと増していたと思います。
エンディング・ノートってこんな意味なのかしら。だとしたら最後に村上が森に連れて行かれる前に、書き残したメモがそれになるのかな。
一番笑ったのは記者(松山美雪)の足をむりやり村上(鈴木省吾)が揉むシーン。村上の異常なポジティブさに加えて、彼らを見つめる周りの人たちのリアクションがそれぞれにリアルだったんですよね。
美那子の妹(佐伯花)が白井(宇納侑玖)を誘惑して濃厚にキスしはじめた時、美那子が乳飲み子を連れて帰ってきます。あのタイミングも展開もありがち過ぎて爆笑でした。
こういった、クソ真面目にやるからこそ笑えるところがもっとあれば、作品の厚みが増すんじゃないかなと思いました。
役者さんでは自動車整備工役の山本了さんが強烈でしたね。いやらしい笑いとかずけずけした態度とか、本当に気持ち悪くて良かった(笑)。女性記者役の松山美雪さんの大胆なヒステリー気味の演技も、あそこまで振り切れていると潔くてかっこ良かったです。カメラマン(森山栄治)もセクシーだったな~。
出演=小林愛(TEAM発砲・B・ZIN)/鈴木省吾/三鴨絵里子(ラッパ屋)/森山栄治(*pnish*)/鶴水ルイ/宇納侑玖(ラッパ屋)/廣瀬麻衣/佐藤治彦(経済とH)/松山美雪/多根周作(ハイリンド)/山本了(同居人)/佐伯花/ユータ/別紙慶一
作=牧田明宏(明日図鑑) 演出=和田憲明(ウォーキング・スタッフ) 照明=佐藤公穂 音響=小笠原康雅(OFFICE my on) 音響協力=長柄篤弘/徳久礼子 美術=塚本祐介 舞台監督=蓮樹謙 意匠協力=木村猛志(衣匠也) 宣伝美術=石曽根有也(らくだ工務店) 宣伝写真=福島裕二 宣伝写真助手=清水隆裕 Web制作=廣瀬麻衣 制作=津田はつ恵/山内三知/菊池摩美 制作協力=THEATER/TOPS 企画=鈴木省吾/小林愛/和田憲明
前売3300円 当日3500円(全席指定) 前売発売日:3月19日
公式=http://www.show-go.net/
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