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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年07月17日

青年団若手自主企画vol.29『会議』07/13-17アトリエ春風舎

 別役実さんの『会議』を青年団演出部の武藤真弓さんが翻案・演出されます。武藤さんは青年団で作品を発表されるのは初めてだそうですが、それでこの豪華な出演者陣なんですから、青年団は豊かだな~としみじみ思います。
 ポストパフォーマンス・トーク(「別役戯曲の魅力」について)に宮沢章夫さん(遊園地再生事業団)と松井周さん(青年団)が出演される回に伺いました。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 会議用の椅子を運び込む道具方たち。
 そこへ「第一社会心理学研究所」の男(古舘寛治)が現れ、この会場で、人間に備わった≪会議本能≫を観察するための「実験」を行うという。
 1人、また1人と集まり、やがて「会議」が始まったかに見えたが…。
 得体の知れない男がやってきたことにより、この「会議」は思わぬ方向へ進んでいく。
 ≪ここまで≫

 別役実さんというと不条理劇。演出の武藤さんが翻案もされていて、脚本は日常的な言葉になったり、削除されたり、かなり書き換えられてたようです。

 スタイルは青年団のお芝居らしいいわゆる“静かな演劇”でした。ときおり奇想天外な演出が登場して、「ほへ!?」っとあっけにとられて笑ったり、徐々に関係性がおかしくなっていくのを見守ったり。
 でも・・・とにかく・・・・イライラした!!(笑) だって会議場にやってきた人たちは全員めちゃくちゃ自分勝手で、意味が分かってないのに発言をやめないし、その発言を止める人もタイミングが読めないし、まとめようとする人も完全に間違ってるし・・・。さらにわざと(?)声を小さくしてセリフを聴こえないようにしているのにも、イライラ!!こんなにイライラしながら客席に座り続けている自分が笑えました。だってわざわざお芝居見に来て、ずっとイライラしてるんですから(笑)。

 役者さんは皆さんあるレベルを超えた演技を見せてくださいました。青年団のお芝居は安心して観られます。
 今回もやっぱり古舘寛治さんの奇行(笑)に釘付けでした。たまんなくイライラしたっ。『地下室』の教祖(?)役も凄かったんです。

 ここからネタバレします。

 「人間はある程度の人数が集まると、おのずと会議を始めてしまうものだ」という、人間の“会議本能”を立証する実験のために、不特定多数の人が自然と集まった・・・という設定で始まります。それ自体がありえない(不条理)なことなのですが、中盤から怪我をした見知らぬ男が登場し、「私をリンチしたのはあなたたちです」と、これまたありえないことを言い出します。終盤で実験が嘘だったことが暴かれるため、その男の言うことが真実なのかと思いきや、彼は一方的に一人の男を殺して退場して(消えて)しまいます。そしてその後、会議場ではまた不毛な会議が始まる・・・。

 「これは現代社会のこの部分を表しているのではないか」とか、そういう深読みをしたくなるまでには至りませんでした。「こういうこと、あるよね~」って思えなかったんですよね。そもそもがありえないことだと言えば確かにそうなんですが、それでもどこかに自分の人生や社会との関わりを見つけたかったですね。興味本位で(イライラしながら・笑)眺めている状態でした。

 「自分はここにいる人たちにリンチされたのだ」と言う怪我だらけの男が、主張をしながらピストルで一人を殺してしまうのを、全ての動作を早送りにしたような振付(ダンス?)で表現されました。あそこは観ていて楽しかったです。でも取って付けたようにも感じちゃいました。

 白いパラソルをさして脈絡のない行動を起こす女性が、連続して3度登場するのですが、意味がわかりませんでした。意味なんてわからなくて良かったのかもしれませんが、特に面白いと感じなかったのは個人的に残念でした。※原作だと一度通り過ぎるだけだそうです。


 ≪ポストパフォーマンス・トーク≫
 出演=宮沢章夫さん(遊園地再生事業団)、松井周さん(青年団)、たまに武藤真弓さんも。

 このトーク目当てで来ているお客様が多かったようで(私も然り)、ほとんどの方が残っていましたね。作品の上演時間は約1時間20分だったのですが、このトークが1時間以上!面白かったですが、かなり疲労しました。下記、宮沢さんがおっしゃったことで印象に残ったことです。うろ覚えなのでお許しを。

 「この戯曲には“市民社会はいかにして差別を生み出してしまうか”ということが書かれている。」
 「“いつの間にか、そうなっている”というのが、別役実戯曲のすごいところ。いつの間にかある人物が溶け込んでいて、日常会話の中で実現している。」
 「ダンヒルのライターがどういう価値なのかわからなかったので、買いに行ったら5万円だった。」
 「別役戯曲を出していた出版社がつぶれたので、別役作品を読む機会が少なくなってしまっている。」

 「無自覚なところで生まれる悪意。色んなところに悪意(=差別)が発動する。」
 「2600年の演劇の歴史の中で、演出家(かな?)が生まれたのはたかだか100年前ぐらい」
 「劇場の扉を初めて閉めたのは、ワーグナーだった。それまでは扉は開いてたし、客席も明るかった。どうやったら観客が舞台に集中するかを考えたワーグナーが、扉を閉め、客席を暗くし、舞台だけを明るくした。でも(時代的には)たかがワーグナーだよ(笑)。だから“これが演劇だ”なんてことはない。何やったっていいんです。」

 「現代口語演劇とは、関係性の演劇。」
 「主体となる人物ではなく、状況が劇を動かす。」
 「平田(オリザ)君がうまく言ったけど“これは机である”というのが客観性の演劇。“歯が痛い”というのが主観性の演劇。」
 「客観性を描けば描くほど、世界は小さくなる。そこで・・・(失念)」

出演=永井秀樹/安倍健太郎/村井まどか/田原礼子/後藤麻美/古舘寛治/工藤倫子/根上彩/山本裕子/高橋智子/熊谷知彦(パパ・タラフマラ)/他
作=別役実 翻案・演出=武藤真弓 舞台美術・宣伝美術=河村竜也 照明=松本明奈 音楽=薮公美子 舞台監督=西村和宏  宣伝イラスト=山口マオ 制作=齋藤由夏 立蔵葉子 総合プロデューサー=平田オリザ 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
予約受付開始5月15日(月)日時指定・全席自由・整理番号付 予約・当日共 一般2,000円 学生1,500円(要学生証)
公式=http://www.seinendan.org/jpn/info/wakate060502.html

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Posted by shinobu at 2006年07月17日 01:15 | TrackBack (0)