久しぶりに歌舞伎座にお邪魔しました。あぁ、やっぱり歌舞伎座は歌舞伎座だ~♪入るだけで楽しいです。
泉鏡花(1873年生~1939年没)の4本立てということで、幕開け早々意外な装置と演出に・・・ワオッ!でした(笑)。私が拝見したのは昼の部の「夜叉ヶ池」と「海神別荘」です。坂東玉三郎さんの企画で4本全部についての演出(監修)をされています。
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ストーリーを知ってから観に行っても問題ないと思いますので、ここからネタバレしましす。
■「夜叉ヶ池」
≪あらすじ・みどころ≫ 歌舞伎座メールマガジンバックナンバーより。(役者名)を追加。
越前国の山奥を訪れて、夜叉ケ池の伝説を聞かされた萩原晃(段治郎)。
伝説とは、鐘をつくのを怠れば村は水没するという池の竜神と人間との約束。
鐘楼守となった晃は美しい村娘百合(春猿)を妻とし、日に三度鐘をつき続けます。
一方、夜叉ケ池の主白雪姫(春猿)が恋い慕うのは、白山剣ケ峰千蛇ケ池の御公達。
姫が白山に向かえば、洪水が起こって村は水没してしまうのですが…
春猿が百合と白雪姫の二役、段治郎が萩原晃を演じます。
≪ここまで≫
上手には晃と百合が暮らす家。下手には鐘楼堂。まずセリフが現代口語に近いことにちょっぴり違和感。そしてスーツ姿の市川右近さんが登場してびっくり!「そっか、これは歌舞伎だけど泉鏡花だった!」と、やっと認識しました。
前半は蟹や鯉、竜神(=白雪姫)らが登場する幻想的な世界と、晃と百合、晃の友人・学円(右近)の純愛と友情が描かれます。ちょっと退屈しちゃいましたね。中盤からは社会を象徴する村人たちが現れ、彼らの偏見や差別、集団の暴力から、人間の醜さにがにじみ出てきます。一気に現代社会との距離が縮まり、私自身の生活などと重ね合わせながら拝見しました。
干ばつに苦しむ村人たちが、よそ者の晃以外に身寄りのない百合を人柱に選び、夜叉ヶ池に無理やり連れて行こうとします。
神官の宅膳(欣弥)「私が姪(=百合)は、ただ此の村のものばかりでない。一群六ヶ村、八千の人の生命ぢや、雨乞の犠牲(にへ)にしてな。それぢやに、……其の犠牲の女を連れて行くのは、八千の人の生命を、お主が奪取って行くも同然。百合を置いて行かん事には、此処は一足も通されんわ。百合は八千の人の生命ぢやが……さあ、何(ど)うぢやい。」
8000人の命と1人の命の重さ・・・どちらが重たいかなんて図れないのに、村人たちはさも当然のごとく百合を殺そうとします。・・・戦争ですよね、これ。
百合が自害してしまったため晃はもう鐘をつくのを止めると決心し、撞木(しゅもく・鐘をつく棒)を吊る綱を切り落とした瞬間、津波が村を襲うのです。百合を人柱にし、晃を追放しようとした村人たちが、水色の長い布で巻き込まれていきます。布を持って操作するのは水の世界の住人たち(蟹、鯉など)です。
この演出が素晴らしかった!私は2階席でしたので役者さんの動線を上から眺めていました。シンプルで無理のない動きの重なりから、ダイナミックで躍動感のあるシーンが生まれているんですね。
幕間の45分間に手打ちそば処・宮城野に行きました。
鴨せいろは御だしがちょっと甘い目でしたが、美味しゅうございました♪
■「海神別荘」
≪あらすじ・みどころ≫ 歌舞伎座メールマガジンバックナンバーより。(役者名)を追加。
海底の琅かん※殿に住む公子(海老蔵)は、陸から若き美女(玉三郎)を妻として迎えます。
陸の親に自分の生きている姿を見せたいと、公子に訴える美女。
もはや人間の目からは大蛇にしか見えないと公子は語りますが、
美女はその言葉を信じることができずに陸へ向かいます。
人間界では自分が蛇体にしか見えないことを悟り、嘆き悲しんだ美女は……
玉三郎の美女、海老蔵の公子という魅力の顔合わせにご期待ください。
※“かん”は、実際には“王へんに干”ですが、文字化けの恐れがあるため変えて表記しております。
≪ここまで≫
舞台は海底の宮殿です。この“海底”の“宮廷”の美術がすごかった!そそり立つ可動式の白地(白だけじゃないっぽいけど)の壁には、ゴールドの装飾がふんだんにほどこされており、さらに照明でターコイズ・ブルーやピンク、紫、黄色などのあざやかな色に染められます。宝塚っぽい!日生劇場っぽい!
そこに大きなマントをひるがえしながら、全身黒の衣裳と長髪オールバックの海老蔵さんが、ババ、バーーンッと登場!ヒロインの玉三郎さんはスパンコールがビッカビカの純白ロングドレスですから、もーゴージャスすぎて目がちかちかしちゃうよ!(笑)
舞台奥の風景は書き割りではなく巨大なスクリーンになっており、泡や魚など、水中の映像が映し出されます。歌舞伎座で大画面動画を観られるなんて全く予想していませんでした。
美女(玉三郎)は黒潮に乗って地上から海底へやってきます。黒潮は短めの黒マントを羽織った数十人のダンスで表現するのですが(日生劇場版ではバレエダンサーが演じていたそうです)、巨大な白蛇の張り子もリアルに蛇行して(規模は違いすぎますがこんな感じ)、目を見張る美しさでした。
「夜叉ヶ池」と同様この作品でも、異世界に対する人間の無条件の偏見や心の狭さが描かれます。
公子「何処まで疑ふ。お前を蛇体と思ふのは、人間の目だと云ふのに。」
玉三郎さんの柔らかい、しかし全てコントロールしているのがわかる声に惹きこまれました。
美女「ああ、貴方。私を斬る、私を殺す、其の、顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清(すず)しさ、眉の勇ましさ。はじめて見ました、位の高さ、品の可(よ)さ。最う、故郷も何も忘れました。早く殺して。ああ、嬉しい。」
【2作品を通して観た感想】
独白が多いので、演技が上手い役者さんが語られる時は集中できるのですが、下手な(下手だと私が感じる)役者さんの時は眠くなりました。文節ごとにブツブツとセリフが途切れるように感じたり、語感や音調がワンパターンに感じると、とたんに退屈しちゃうんですよね。あとは意味が伝わって来ない時とかも。
私は海老蔵さんが舞台でセリフを話すのを初めて観たのですが(セリフなしで舞うのは観たことあり)、いつもあんな感じなのでしょうか・・・?ギャグなのかしら!?と、ちょっと戸惑いました。
私があらためて言うことではないのですが、朝の11時から夜8時半まで、毎日ずーっと休みなしに公演があるってことが・・・凄い。歌舞伎はやっぱり普通の現代演劇とは違いますね。
「夜叉ヶ池」
出演=市川春猿/市川段治郎/市川右近/坂東薪車/上村吉弥/ほか
作=泉鏡花 監修=坂東玉三郎 演出=石川耕士 美術=中嶋正留 照明=池田智哉 作曲=枡屋巳吉 補曲=豊澤淳一郎 作調=田中傳次郎効果=内藤博司 立師=市川瀧之 狂言作者=竹柴正ニ
「海神別荘」
出演=坂東玉三郎/市川海老蔵/市川笑三郎/市川猿弥/市川門之助/ほか ハープ=朝川朋之
作=泉鏡花 演出=坂東玉三郎 演出=戌井市郎 美術=天野喜孝 装置=中嶋正留 照明=池田智哉 作調=田中傳次郎 編曲=朝川朋之 効果=内藤博司 衣裳考証=天野喜孝/坂東玉三郎 小道具デザイン=田中義彦 演出補=菅原道則/大場正昭 グラフィックデザイン=成田剛 立師=市川瀧之 舞台監督=藤森條次
6/15(木)10時より発売 1等席15000円 2等席11000円 3階A席4200円 3階B席2500円 1階桟敷席17000円
歌舞伎座=http://www.kabuki-za.co.jp/
公演公式=http://www.kabuki-za.co.jp/info/kougyou/0607/7kg_1.html
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