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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年07月30日

TOKYOSCAPE/風琴工房『紅き深爪』07/27-08/01人間座スタジオ

 私のTOKYOSCAPE第一回目の観劇は、人間座スタジオの風琴工房になりました。場所はちょっとわかりづらかったですね。まずアトリエ劇研を目指して行かれると良いかもしれません。人間座スタジオは道を挟んでちょうど向かい側あたりです。

 終演後は舞台上で“ろばカフェ”(←写真の後ろ姿は私)が開かれ、作・演出の詩森ろばさん、出演者の松岡洋子さん、笹野鈴々音さんと一緒に約2時間もの間、ゆっくり、じっくりお話ができました。こんな贅沢ってあり?!

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 レビューをアップしました(2006/07/31)。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 深夜の病室。もう覚めないかもしれない眠りを貪る女。そこをたずねてくる娘たちとその夫。4人の会話はやがて、今や死にゆく女から姉妹が受けた加虐の記憶へと辿りつく。
 ≪ここまで≫

 題材は親による実の子の虐待です。「虐待」という言葉を見ただけで、「つらい」「苦しい」という印象が先に立つかもしれません。でも、人間誰しも数十年以上生きていれば何かしら重大な問題を抱えているもので、舞台に居た人々はそれぞれに、私たちと同じように苦しみながら生きているのだと思えました。もちろんその苦しみの深さは同じではないですが。

 下記は当日パンフレットの文章より一部抜粋。

 「虐待」を扱った作品ではありますが、わたしはできることならそれを「重いテーマ」の作品とはいいたくありません。だってそうではないですか?わたしたちの芝居は一時間で終わりますが、彼女たちの日常は365日、ずっと続いていくのです。演じるということが他者に身体を貸す覚悟であるとしたならば、「重い」などということばで他人事にすることだけはしたくない。
 そんな俳優たちの決意があの稽古場には宿っていたような気がします。

 具体的なストーリーや事の結末までの過程にも納得できましたが、目の前で人間が本気で係わり合う様と、そこで生まれる感情の一つ一つをつぶさに味わえたのが、何より面白かったです。やっぱり役者さんが上手いと思います。私にとって風琴工房は、役者さんに会いに行く劇団になってきました。

 ここからネタバレします。

 ≪あらすじ2≫
 50代にして亡くなろうとしている女を介護するのは、その娘・睦美(松岡洋子)。彼女は自分の意思に反して幼い娘・知奈(笹野鈴々音)を虐待してしまっている。彼女自身が母親にずっと虐待されてきたからだ。睦美の姉・妙子(藤田るみ)もまた睦美と同じく母親の虐待を受けていた。妙子のお腹には夫・宏治(好宮温太郎)の子供がいるのだが、妙子はどうしても産みたくないと言い張る。酒とタバコもやめようとしない。
 ≪ここまで≫

 睦美(松岡洋子)の小さな爪に塗られた真っ赤なマニキュアを、姉の妙子(藤田るみ)がリムーバーで無理やり拭き取るシーンで、なぜか泣けてきてしまいました。「あぁ、この二人は姉妹なんだ。二人で一緒に、同じ家で、同じ親と一緒に育ってきたんだな」と、胸にずしんと来ました。
 下記、心に残ったセリフです(完全に正確ではありません)。

 睦美「(母に)想像力があったら初めからこんなことにはならない」
 睦美「殴る方も痛いんだとか言いますけど、普通に、殴られた方が痛いですよ」
 知奈(の幻?)「痛いのはママなの?知奈なの?」

 先週こちらの作品を観た時も想像力こそ優しさだと思ったので、タイムリーに重なりました。今、虐待はものすごく日常的にニュースになっていますよね。それは想像力を育む学校教育や社会生活が欠けているからじゃないかしら。短絡的かもしれませんが、私の中ではそうつなげざるを得ません。
 虐待の理由、その連鎖を断ち切る方法・・・終演後のろばカフェで、ぽつりぽつりとお話しました。なんて豊かな優しい時間だったことか。心から感謝します。

 妙子(藤田るみ)と宏治(好宮温太郎)の熱烈なキス&愛撫シーンはかなり過激で、私は「うわっ、かっこいい!」と思いつつ、やっぱり恥ずかしくて見てられなくって(苦笑)、少しうつむき加減になってしまいました・・・それぐらい見どころです(笑)。

 そのラブシーンの裏の意味が後からわかります。宏治は性同一障害(トランスセクシャル)で、さらにレズビアンでした。また、妙子は睦美の夫(鈴木歩己)に対して居様に失礼で高圧的な態度をとります。どうやら妙子は“男”が嫌いらしい・・・妙子は父親から性的虐待を受けていたというバックストーリーもあるようです。つまり妙子と宏治は女同士のカップルなんですね。すごく複雑な関係です。

出演=松岡洋子/藤田るみ/笹野鈴々音/鈴木歩己(グリング)/好宮温太郎(タテヨコ企画)/大藤寛子
作・演出=詩森ろば 照明=木藤歩(balance,inc. DESIGN) 舞台設営=西田聖 音響設営=奥村朋美 照明操作=山ノ井史 音響操作=浅倉洋介 美術・衣裳・音響=LIVESTOCK STYLE
全席指定 一般=前売2,800円/当日3,200円 学生=1,800円(前売・当日とも、要学生証提示) セット券などあり
公式=http://www.tokyoscape.org/products/index.php?C=2

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Posted by shinobu at 2006年07月30日 22:50 | TrackBack (0)