見逃さないようにしているtpt。『血の婚礼』はスペインの劇詩人ロルカによる1933年初演の戯曲です。演出はアメリカ人のアリ・エデルソンさん(⇒過去レビュー)。出演者はワークショップ・オーディションで選ばれた若い俳優さんが揃っていて、エデルソンさんも30代前半だそうなので、ものすごくフレッシュなカンパニーでした。
うーん・・・詩のようなセリフが多くて、若い役者さんには難しかったようですね。美術が美しかったです。
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≪あらすじ≫ 公式サイトおよびパンフレットより。(役者名)を追加。
婚礼のさなか、花嫁(宮菜穂子)が一人の男(パク・ソヒ)と抜け出した。
その男とは、花嫁の父親と兄を殺した一族の人間だった……
運命と情熱に導かれるまま愛し合い、死へと駆りゆく若者たち。
花嫁「あたしは炎の女。心も体も苦しみに燃えていた。あなたの息子は一滴の水、子宝と健康を恵んでくれるはずだった。もう一人の男は闇を流れる大きな川、切り裂かれた木々を運んで、葦のざわめきと水の歌声を聞かせてくれた。」
≪ここまで≫
劇場に入ったとたん、黒く広がる空間に魅せられました。足を一歩踏み入れると、そこは舞台の花道になっており、黒光りする通路を通って客席へと向かいます。ステージの形はL字型。四角い劇場の中で斜めに配置され、客席がその舞台の三方を囲むので、通常よりも広く感じるし一体感もあります。天井から白い大きな布が垂れ下がっており、役者さんがロープで調節してさまざまな効果を生み出しました。めっちゃくちゃ綺麗でした。美術は二村周作さんです。
歌とダンスが多用される幻想的な演出でした。シェイクスピアの『夏の夜の夢』の森の中のように感じることがしばしば。衣裳がすっごく可愛かったですね。特に靴がかっこよかったな~。
ただ、詩のような、というか、詩そのものであるセリフをしっかりと語ることが出来ていた役者さんは、残念ながらいなかったように思います。70年以上前の戯曲ですし、難しいのは当然ですよね。
花嫁が昔の男と一緒に婚礼の宴を抜け出してしまうという、情熱的で破滅的な恋のお話です。できれば、二人一緒に死に向かってまっ逆さまに墜落していく姿から、官能を感じたかったですね。
ここからネタバレします。
婚礼から逃げ出した男と花嫁を、花婿や村人たちが追いかけます。「男と花嫁が心中しちゃうんだろうな」と思ったのですが、大ハズレ。男と花婿が殺し合って死んでしまい、花嫁だけが戻ってくるのです。花嫁は「私を殺して!復讐して!」と花婿の母親に言いますが、母親は「あなたを殺して何になる!?」と言い返し、花嫁を殺そうとしませんでした。あんなに息子を溺愛していて、怖い性格の姑だったのに・・・正論ですよね、圧巻でした。
ラストシーンは女だけがずらりと勢ぞろいでした。いつの時代も残されるのは女、ということかなと思いました。
花嫁役の宮菜穂子さん。可愛らしい方ですね~。タンゴを踊る時に足がスコーンと上にあがってセクシーでした。でも血がたぎるほどに燃えさかる恋心を感じられたかと言うと、それはなかったですね。
花嫁と逃亡するレオナルド役はパク・ソヒさん。期待を裏切らない肉体美(笑)。舞台上で自然な存在感だったのはパクさんだけかも。でも、もっともっとセクシーになれるはずだと思います。
花婿役は斉藤直樹さんで、その母親役は板垣桃子さん。斉藤さんは清潔でひ弱な感じが可愛らしかったです。でも、もうちょっと目立って欲しかったですね。板垣さんはお若いのにガツンと来る凄みが良かったですが、セリフの語り方は紋切り型で気になっちゃいました。
第3幕で長い詩を語る“月”役は中村音子さん。振付もされています。オープニングでロフトから下を覗く姿に見とれました。でも、やっぱり詩は難しいのでしょうね。長い時間たった一人で独白されますが、大変そうでした。
“月”の相手の“死”役は野口卓磨さん。山の手事情社『牡丹燈籠』で注目していたのですが、今作品でも色気があって良かったです。ギターを弾きながらもギラっと目力が出てました。ただ、言葉がもごもごして聞き取りにくかったのは残念。
スペイン最大の劇詩人ロルカの三大悲劇
出演=宮菜穂子/板垣桃子/パク・ソヒ/斉藤直樹/中村音子/松岡美希/鈴木智香子/野口卓磨/中村伝/倉本朋幸/小川祐弥/田村元/廣畑達也/井上裕朗/河野由佳/篠山美咲/夏川永聖/海老原礼子/大沼百合子
作=フェデリコ・ガルシア・ロルカ 演出=アリ・エデルソン(アメリカ) 台本=広田敦郎 美術=二村周作 照明=佐野雅昭・鈴木直之 音楽=後藤浩明 衣裳=原まさみ ヘア&メイク=鎌田直樹 音響=木暮拓矢 舞台監督=山口勝也
7月8日(土)前売開始 全席指定5,250円 学生料金3,150円(TPTのみのお取り扱い)
公式=http://www.tpt.co.jp/
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