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2006年08月19日

【ワークショップ】日本演出者協会『チェルカスキイ 演出家育成ワークショップ』08/09-22芸能花伝舎内スタジオ(8/17レポート)

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チェルカスキイWS

 セルゲイ D. チェルカスキイ氏のワークショップに再びお邪魔いたしました(⇒まとめページ)。ほぼ中日の8/17(木)の聴講レポートです。この日の参加者は31名で、男15人/女16人でした。

 スケジュールなどはこちらでどうぞ。聴講(1日5000円)は当日申し込み可能です。

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 見学しながらノートにメモしたことを書きます。「(かぎかっこ)」はチェルカスキイ氏、およびガリーナ氏の言葉です。“⇒”以降は私の感想です。

【ガリーナさんのムーブメントの授業】

 色んな体操(エクササイズ)をする授業です。はじめの柔軟体操から、自分を知る、相手を感じる、その関係を作るヒントがいっぱいです。下記、印象に残ったものです。

 「息を吐くときに、体はリラックスしている。緊張が緩和する。」

●2人1組のペアになる。一方は目を閉じる。もう一方が相手の体の部分を指で触る。触られた方は、触られた部分から、触られた方向に動く。相手から衝動をもらい、それに反応する。

 ⇒目をつぶって動いている人が、ものすごくきれいに見えます。体の神経を研ぎ澄まして、触られたところに集中し、ゆるやかに動き続ける様子はセクシーです。

 2人1組をやめて、全員でやってみる。永遠に動き続ける生き物みたいに。

 ⇒面白かった!みんなが影響しあって、カオス状態。

●全体を2チームに分ける。一人を中心に置き、周りを丸く囲む。中心の一人は目を閉じて、棒のようにしっかりと力を入れて立つ。そして好きな方向に倒れ、体を周りに完全にまかせる。周りはそれを支えて、違う方向へと誘導する。キャッチボールのように。

 相手との信頼関係のムーブメント。
 中心の人が自分から倒れ、その後は周りにまかせっきりにする。
 最初はゆっくりと始める。
 重い人は必ず二人で支える。
 絶対に中心の人を落とさない。
 倒れる人は体を堅くしておく。ぐちゃっとくずれないように。首をまっすぐ、頭もまっすぐ、床に着いた足を絶対に動かさない。
 倒れる人が怖がっていたら、円を小さくする。
 人数は関係ない。
 
●2人1組のペアになる。稽古中の「かもめ」で相手役になっている人はその相手と組む(トレープレフとニーナなど)。
 向い合って離れて立つ(稽古場の端と端に、全員が2列に分かれて並ぶことになる)。ガリーナさんが鳴らすシンバルの音を合図に、相手に向かって全速力で走る。ぶつかる直前で止まり、互いに目を見詰め合う。次のシンバルの音でもとの位置に走って戻る。その繰り返しをしている間に、音楽が鳴る。音楽が鳴ったら、その音楽にあわせて自由に演技をする。言葉は使わない。シンバルが鳴ったら、走って離れ、同じことを繰り替えす。
 「相手の目、自分の目」
 「楽で、自由で、自然でいられる状態。」
 「相手からもらってください。」

 ⇒過剰に感情を動かそうとする音楽が多く、照れが入ってしまう人が多々いました。私もかなり笑っちゃいました。でも、少しずつその状態に溶け込んでいく人が増えてくると、その人たちの世界がすごく生き生きとして見えて来ました。
 ⇒コミカルなやりとりに進むペアや、「ロミオとジュリエット」のように、お互いの瞳に吸い込まれるように見つめ合い続ける美しいカップルも生まれました。完全に観客気分で楽しんで拝見しました。

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奥に見えるのが稽古場

【チェルカスキイさんの演技の授業~「かもめ」の1シーンの発表~】

 大きく「詳細」と書かれた紙が、部屋の壁に貼ってあります。
 チェーホフの「かもめ」の1シーンを6組(7組?)のチームが発表する。各チームの出演者は3名(トレープレフ、ニーナ、ソーリン&ヤーコフの2役)、演出家は2名(?)。
 下記はそれぞれのグループの発表の前や後に、チェルカスキイさんが話された言葉です。

 「人間は感じる情報の80%以上を目と耳から得ています。」
 「この設定の中に、居る、ということ。」
 「自分だったらどうするか。」
 「ニーナはこの時、10kmの道のりを馬に乗ってやってくる。髪はぐちゃぐちゃ。顔は泥まみれ。でも大事な人に会うためにおしゃれをしているはず。それを汚してはいけないから、どんな工夫を?・・・(ニーナの状態をたくさん説明)」

 「スタニスラフスキーは1930年代後半から、俳優が自ら考えるという方向へ。」
 「自分の人生の経験から何か出してください。」
 「自分で考えて下さい。」

 「行動とは、時間と空間において、与えられた設定(given circumstances)との闘いの中、何らかの形で表現された目的を、達成しようとしているプロセス。」

 「内面における人生。記憶、その内容に重点を置く。」
 「内面と外面を引き離すのは有害。」
 「設定(人生)には障害がある。」
 「人生には2通りの終り方がある。目的を達成するか、もしくは事件が起こって目的自体を変えてしまうか。」

 「言葉で説明するのではなく、行動で表す。」
 「設定を自分の人生のものにする必要がある。」
 「愛は身体性から演じなければいけない。」

 「(突然の大雨。大道具をいっせいに片付ける生徒たち)これがなぜ面白かったか。それは今、ここで起こったことだったから。この先どうなるかがわからなかったから。観客はこの瞬間を求めて劇場にやってきます。」

 ※設定を現代に変え、セリフも変えた作品を発表したグループに対して
 「チェーホフの設定に近づかなければ行けない。それを自分達に近づけるのではなく。」
 「テーマにそってエチュードを演じるのとは違う。テキスト暗記とも違う。」

 ⇒出演者の演技の種類がバラバラで、観客視点でいると困惑しちゃう状況でした。でも、どんな発表についてもチェルカスキイさんによる“詳細”にわたる解説・提案があるので、それがすごく面白かったです。登場人物一人一人がすごく身近で、大切になりました。人間は多様で、ひとりの人間は誰とも同じでないですね。
 観客は座席から舞台上の詳細を観て、感じています。役者さんはそれを自分で表さないとだめなんですね。
 参加者から聞いた言葉ですが、「役を演じない。役から演じる。そこで遊ぶ。楽しむ。」という意味が少しわかった気がします。

チェルカスキイ SERGEI D. TCHERKASSKI 演出家と俳優のための本格的ワークショップ
講師:セルゲイ D. チェルカスキイ(ロシア国立サンクトペテルブルグ演劇大学国際関係副学長、演技・演出教授)/ガリーナ・コンドラーショヴァ(女優・振付師・演出家・ムーブメント・ティーチャー・チェルカスキイ氏の奥様)
コーディネーター:村井健 通訳:久保遥/上世博及 国際部担当:佐々木/黒澤 主催:日本演出者協会 協力:日露演劇会議 2006年度文化庁優秀指導者特別指導助成事業
日時:2006年8月9日(水)~8月22日(火)10:00~17:00 参加費用:50,000円 応募〆切=7/31必着

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Posted by shinobu at 2006年08月19日 23:53 | TrackBack (0)