セルゲイ D. チェルカスキイ氏のワークショップの最終日に伺いました(⇒まとめページ)。8/22(木)の聴講レポート(前編)です。
稽古場に入ったとたん、のびのびとしていて柔らかな空気を感じました。毎日朝から晩まで13日間にわたるこのワークショップで、参加者の皆さんの関係がとても柔軟で、能動的なものになっているんですね。
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見学しながらノートにメモしたことを書きます。「(かぎかっこ)」はガリーナ氏の言葉です。“⇒”以降は私の感想です。
【ガリーナさんのムーブメントの授業】
●柔軟などの後、ニ人一組に。「今までやったことを確認しながら」、バランスを取るエクササイズを数個。
⇒皆さんがすごく自然にペアになって、自立しつつ助け合っているのがわかりました。
●約15人の二組に分かれる。番号順に一人ずつポーズをとって静止する。前の人との関係・位置を見て、空間を作っていく。
全体で何らかの意味のあるコンポジション(composition)を完成させる。見ている人がそれに題名をつける。1回目のチームは「井戸掘り」。2回目のチームは「阿弥陀堂めぐり」「観光」「新興宗教の説明会」等。
「前の人との関連性を見てください。」
「自分の体にファンタジーをふくらませなさい。」
●旅人の道を作る
旅人を一人選ぶ。旅人が進む道(道ならぬ道)を他の全員で作る。森、洞窟、岩場など。
旅人はずっと進み続ける。止まらない。道をつくる人も、旅人の前にどんどん作り続ける。
旅人が通り過ぎたら次の道へと加わっていく。
障害だけでなく、支えにもなるように。
一人の人に自分の体重をかけない。首にも体重をかけない。
「自分のファンタジーを広げて道を作ってください。」
「(エクササイズの目的は)相手をしっかりと感じること、見ることの大切さを知ること。」
「集団の練習です。相手の手、肩を感じることが大切。」
「ファンタジーが溢れていました。ハラショー(結構です)。」
●ニ人一組で「近づきたい」VS「近づかせたくない」
全員で大きな円になる。自然と二人一組になる。片方は相手に近づくように、もう片方は相手を自分に近づかせないようにする。お互いに近づくことができたら終了。
一方通行の状態が続いて停滞したら、近づかせない方からも何らかのアクションを起こす。言葉を使っても良い。
「相手をよく感じる練習です。」
「円の中から自然にパートナーを見つけられたのが良かった。」
「(ある男女の一組が、キスして抱き合うところまで至った。)貴重なものを見せてくれました。」
⇒マイズナー・システムのワークショップを思い出しました。目と目の、体と体の間で生々しく、大胆に通い合う感情!ものすごく刺激的です。
⇒キスまで至った2人がいたことについて、ガリーナさんが感激して涙を流されていました。見ていた人たちの中にも泣いている人がいました。私の座っている場所からそのカップルが見えづらかったのもありますが、私はあまりの気迫に負けてしまい、また、恥ずかしくなって目を開けていられず・・・。これは私の心がオープンでなかったからだと思います。情けない・・・。
●棒でつながり、からまり、ほどける。
2組に分かれる(約15人ずつ)。手の平だけで棒の先端を押さえ、同様にもう一方の先端を他の人が押さえ、人と人との間が棒でつながる状態になる。4~5人のグループが3つできる。棒を落とさないように、音楽に合わせてからまっていく。しばらくしたら、もとの3つのグループに戻る。
15人全員がつながる、大きな輪になる。同様にからまっていき、元に戻る。
「相手を感じるための練習です。」
しのぶ「こちらのチームは女性が多いから(腕力が弱いので)、よく棒を落としたのですか?」
参加者「いいえ、力は関係ありません。「わ、落としちゃった!」などと言って、素に戻って笑っていては出来ない。全体を感じて集中し続けなければいけません。」
●相手を感じて、同時に同じ方向に動く。
2人が舞台に出てきて客席に向かって立ち、横に並ぶ。合図(指示)を出したり、言葉を使ったり、触ったりせずに、相手を感じて、同時に一歩前に踏み出す。2人でそれが出来るようになったら、両端に1人ずつ増やしていく。8~10人ぐらいになるまで続ける。
「衝動を飛ばしてください。」
「あせらないで。」
「2人でひとつの塊になってください。」
「最初の2人の世界ができるのが、まず第一。」
⇒ガリーナさんは最後に、「近づきたい」VS「近づかせたくない」のエクササイズでキスまで至った2人を、最初の2人にしました。これが凄かった!ただ横に並んで立っているだけなのに、2人の体からもやもやと、何かが生まれているように見えました。いや、目には見えないので体で感じたのかもしれません。また、その2人の最初の一歩は、前方でなく後方だったんです!(初めの一歩は前方に進むというのが一応の決まりでした) 2人の動きはタイミングが完全にシンクロして、スピードも同じ!呼吸も一緒になってたんじゃないかしら?
その2人の後に2人、また2人と追加されて行きます。あせらず、じっくりと全体を感じていったそのチームの動きは、バラバラの人間の集まりなのに完全にひとりになったような状態でした。見ていて胸があつ~くなりました。
●ガリーナさんからのお言葉
「(参加者に向かって)皆さんはオープンな方々です。多くのことができました。見つけたものを忘れず、わかちあって、自分の中にいくつも貯めて、宝物にしてください。この先、仕事先などで出会った人(こと)から学んだことを、蓄積していってください。」
「このような素晴らしい文化がある、豊かな国では、新しい演劇が生まれると思います。すばらしい演出家、俳優たちでした。ご褒美に(笑)、皆さんにロシアのチョコレートです!」
チェルカスキイ SERGEI D. TCHERKASSKI 演出家と俳優のための本格的ワークショップ
講師:セルゲイ D. チェルカスキイ(ロシア国立サンクトペテルブルグ演劇大学国際関係副学長、演技・演出教授)/ガリーナ・コンドラーショヴァ(女優・振付師・演出家・ムーブメント・ティーチャー・チェルカスキイ氏の奥様)
コーディネーター:村井健 通訳:久保遥/上世博及 国際部担当:佐々木/黒澤 主催:日本演出者協会 協力:日露演劇会議 2006年度文化庁優秀指導者特別指導助成事業
日時:2006年8月9日(水)~8月22日(火)10:00~17:00 参加費用:50,000円 応募〆切=7/31必着
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