倉持裕さんが作・演出されるペンギンプルペイルパイルズの新作です(過去レビュー⇒1、2、3、4、5、6)。上演時間は約2時間10分。ポストパフォーマンストークのある初日に伺いました。
体感時間的に長かったですが、最後の最後には爽快な気持ちになりました。
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≪あらすじ≫
海が見える街にあるモーテルの一室。道子(伊藤留奈)はナミコという女を調査をしている。6年前にもナミコについて調査していた女・砂恵(ぼくもとさきこ)がいたが、彼女も行方不明になっていた。6年前と同様に、ナミコを知る人々がモーテルにやってきて証言をし始める。
≪ここまで≫
6年前と現在が照明の変化だけで素早く場面転換します。過去と現在の時間が同時に舞台上で流れることもしばしば。
今回も装置がかっこよかったです。何より、ど真ん中の大きな窓が理不尽な位置関係で良かった。照明も美しかったですね。ペンギンプルペイルパイルズの舞台の、肌に残るような質感がすごく好きです。
ナミコという女についての証言を聞いていくにつれ、ナミコの人物像が明らかになる・・・はずなのですが、うまくつながらないんですよね。集まる情報があまりにバラバラで、ナミコという人をリアルに想像しづらいのです(意図的に)。ナミコよりもむしろ証言をする人たちの6年前と現在の対比や、それぞれの異常さが面白いです。曖昧な目的のためにぞろぞろと同じ部屋に集まる人間たちの滑稽さと、正体不明のナミコという女に振り回されていく不気味さが、じわじわと肩にのしかかり、体に沁み込んでくるようでした。
ひとつのシーンが終わるごとに、お芝居が途切れて一区切りついて、新たに違うシーンが始まるように感じることが多かったです。もったいない気がしました。終盤になるに従ってパーツが組み合わさっていき、クライマックスに向かって一体になって転がっていくように感じられたら、お芝居自体の長さも気にならなかったのではないかと思います。でも昨日は初日でしたし、これからどんどん良くなるのではないでしょうか。
ここからネタバレします。
モーテルは道子の会社が所有する保養所で、たしか左遷先でした。自分のことよりも他人の要望の方に気を取られて、自分のやるべきことが達成できない性格の砂恵は、職場ではいじめられていましたが、モーテルでは証言者たちに重宝がられます。自分達を(証人として)必要としてくれて、居場所を提供してくれて、しかもわがままを聞いてくれる便利な人なんですよね。その砂恵には意外な顛末が待っています。
道子は砂恵とは違って証言者に好かれるタイプではありませんでした。めぼしい協力は得られずに調査は頓挫し、別居しはじめた夫とその愛人(?)との関係もきな臭いものになってきます。
最後に道子は突然、水色のビキニ姿になって舞台中央の大きな窓に飛び込みます。これがすごく美しかった!ドッキリして、体がビクっと震えました。私にとって脈絡は全くつながっていなかったし、ただただ唐突だったんですが、道子と一緒にすっかり解放された気持ちになり、視界がパっと晴れ渡ったように感じました。
隣の部屋の住人の蕨(加藤啓)に「水着を着たいなら着ろよ」と言われて「いやよ!」って応えたはずなんですよね。なのに自分からスパっとワンピースを剥ぎ取ると同じ水着を既に着ていて、すかさず海に飛び込むんですから・・・矛盾だらけです(笑)。でも、それが良かった。意味はわからなかったけど、気持ちはわかるような気がして、とにかく爽快でした。
衣裳がとってもおしゃれでした。特に道子が最後に着ていた葉っぱの柄のワンピースと、水色のショールが素晴らしかった。まさかあんな仕掛けがあるとは全く想像しませんでしたし(笑)。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ 印象に残ったことの記録です。かなりネタバレしています。
出演=倉持裕/赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT)/徳永京子(ライター)
赤堀「犬のアパッチの仕掛けは?(犬の姿はなく綱だけが見えていた)」
倉持「アパッチは『スマイル・ザ・スマッシャー』にも登場してた犬です。ああいう仕掛けは安っぽければ安っぽいほど面白いですよね。テンションが上がります。」
徳永「砂恵がなぜ腹部から血を出したのか、道子がなぜ水着になって窓から海に飛び込んだのか、そういうことはヤボなので敢えて聞かないことにしますが(笑)。」
倉持「全部こたえを用意しているわけではないです。」
徳永「今回のお芝居の発端は何からですか?」
倉持「しょっぱなは机です。大きな机を舞台に出したかった。そこから取調室、とか・・・」
倉持「(今回の作品のテーマは)他人の要求ばっかり聞いていると本人は滅ぶ、とか。攻撃する側もあまり自覚的ではないんです。自分の体験からもあるんですが。気づいた時には本人は瀕死の状態になっている、とか。長いことかけて微量の毒薬を投与されているような状態ですね。」
徳永「今回は倉持さんの脚本にしては珍しくわかりやすいなと思っていたんですが、最後になって軸をずらされたように感じました。」
倉持「道子は密告者(夫の愛人?)に、砂恵はナミコに振り回されます。そういう姿のない、姿を見せない存在が高まってきたから、最後は肉体にしてもいけると思いました。概念が大きくなったところで、生の肉体を持ってくることができた、というか。」
徳永「下ネタが多いのもちょっと意外です。」
倉持「肉体から来てるのかもしれません。出てこない、肉体のない人間の話ばかりしますから。それと対比する意味で性の言葉を使った(のかもしれません)。」
赤堀「倉持くんの芝居は双眼鏡で見ている感覚がある。双眼鏡の先に見える人たちの滑稽な姿というか。」
徳永「倉持さんは海の音、と書きますが、赤堀さんだったら海の匂い、かもしれません。」
倉持「匂いっていいですよね。音は役者が聞いていればお客さんも聞いていますが、匂いは舞台上では表現できないので、いいなと思います。」
≪東京、大阪≫
出演=小林高鹿/ぼくもとさきこ/玉置孝匡/内田慈/近藤智行/吉川純広/松竹生/山本大介/伊藤留奈/加藤啓(拙者ムニエル)
作・演出=倉持裕 舞台監督=武藤晃司(SING KEN KEN) 舞台監督助手=金子晴美 照明=清水利恭(日高照明) 音響=高塩顕 舞台美術=中根聡子 衣裳=松本夏記(ミシンロックス) 大道具= 小道具= 宣伝美術=坂村健次 宣伝写真=江隈麗志 チラシイラスト=今枝大輔 WEB製作=いのくちあきこ ステッカー製作=雨堤千砂子(WAGON) 舞台写真=引地信彦 制作=土井さや佳 主催=ペンギンプルペイルパイルズ
前売り開始7月16日(日) 指定(いす席)前売3,600円 当日3,900円 自由(前方ベンチシート、日時指定、整理番号付)前売3,400円 当日3,600円
公式=http://www.penguinppp.com/
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