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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年09月13日

シス・カンパニー『獏のゆりかご』09/01-29紀伊國屋ホール

 グリング主宰の作・演出家、青木豪さんの新作です(過去レビュー⇒)。シス・カンパニーのプロデュース公演ですので、スタッフ・キャストともに超豪華。
 紀伊國屋ホールにぴったりの、優しい味わいのドラマでした。上演時間が1時間35分なのも、とても気持ち良かったです。

 日によっては残席のあるステージもあります。
 9/14(木)14:00公演終演後、出演者によるアフタートークあり。

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 ≪あらすじ≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
 小高い山の上にある、つつみヶ丘動物園。
 副園長の菅原(高橋克実)をはじめとする飼育員たちは、園内一の人気者のバクのユメゾー君の誕生日を祝うための準備に余念がない。
 だが将来的には廃園も検討されているという園内は、繁盛しているとはとても言い難い。
 何かとクレームをつけてくる主婦の立川(池谷のぶえ)や、やたらと鳥の羽を集めたがるビデオ屋のバイトの江藤(安田顕)など、常連客は妙な連中ばかりだ。
 また動物園で働く当の飼育員たちも、それぞれ普通を装いつつも大小の気忙しい問題を隠し持つ。
 アルバイト・那須(明星真由美)との関係に今一歩踏み込めないでいる小森(マギー)。
 なぜか江藤に働きかけテナント物件を探している宮村(小松和重)。
 そしてバツイチ&子持ちの岡田(杉田かおる)と、彼女に思いを寄せる菅原。
 そんな動物園に、岡田と何かいわくあり気な中年男性・越野(段田安則)がやって来て…。
 ≪ここまで≫

 私が拝見してきた青木さんの作品の中では比較的ソフトな内容だったと思います。登場人物はそれぞれに厳しい人生を生きており、ギョっとするような事件も起こりますので、観客が何も考えずに楽しめるストーリーだというわけではありません。でも全編通じて優しいムードに包まれていました。

 落ち着いた大人の役者さんが、型にはまった大げさな演技をすることなく、人物として自然に、生き生きと舞台上で存在してくださっていました。しかも皆さんが観客に対してとても優しかったので、私は完全にリラックスして、自分も一人の独立した大人として席に座り、登場人物の一人一人とじっくり対話ができたように感じました。

 動物園のある一角が舞台です。動物をかたどった装飾パネル(?)の裏側が露出していたり、柵が斜めに傾いて建てられていたり、おせじにもきれいとは言えない場所です。裏側が見えたり、まっすぐのはずのものが歪んでいたりするのは、登場人物の状態を表しているとも言えます。使われている大道具、小道具の材質に温かみがありました。

 ここからネタバレします。

 越野(段田安則)は岡田(杉田かおる)の元亭主で、岡田に会いたくて突然やってきたのでした。内緒にするはずのことをドンドコしゃべるはめになっていくのが自然で可笑しいです。

 バクのユメゾーが死に掛けている時に、小森(マギー)が演奏するハッピーバースデーの音楽がうっすらと聴こえてきて、涙が出そうになりました。こういう、舞台上に誰も居ないのに感動しちゃう瞬間がある時、お芝居って素晴らしいと思うんですよね。

 11歳の息子が猫を殺して補導され、常連客の立川(池谷のぶえ)はいつも以上に取り乱します。でも岡田が立川に、同い年の自分の息子も白鳥を殺したことがあると打ち明け、共通の悩みを話し合うことで二人はお互いを見つめなおします。母親の心が子供の行動に反映されるということに、すごく共感します。家族ってシンクロしてますよね。
 立川は全てを家に帰ってこない主人のせいにしていましたが、自分自身の動物嫌いが息子に伝わったのかもしれないと思いつきます。岡田もまた自分を振り返り、自分が息子から逃げていたせいだと気づきます。

 けっきょく岡田は越野(段田安則)とよりを戻さず、菅原(高橋克実)とも再婚しないと決心しました。ハッピーエンドではないですが、すがすがしい気分になりましたね。獏の母親は子供を産んだらすぐにまた一匹に戻るそうで、その獏と岡田の姿を重ね合わせたエンディングでした。でも果たしてそれは人間の母親の幸せに結びつくのかというと・・・難しいと私は思います。女性が働くことが当たり前になり、離婚が激増している新しい時代を、私たちは試行錯誤しながら生きているんですよね。そのじたばたから必然的に生まれた歪みが、子供の心に直接的な影響を与えているんだと思います。

 杉田かおるさん。怒るシーンで決して怒りすぎず、可愛らしい女のままでいらっしゃるのが良かったですね。昔の私なら「もっと激しく怒って当然」と思ってたんじゃないかしら。私も少しは大人になれたのかな(笑)。
 段田安則さん。越野は「なるほど」とよく言うのですが、その言い方がめちゃくちゃ面白かったです。
 安田顕さん(TEAM NACS)。元X JAPANのYOSHIKIを意識した衣裳っていうのが、ヘンにエッチで可笑しかったです。そして演技も!誰よりも安田さんに釘付け!お正月に見た舞台でもものすごいキワモノ役でしたが(笑)、今回も凄かった。舞台の上で生き生きと生きてらっしゃいますよね。TEAM NACSの舞台が観たいです。

出演=杉田かおる/高橋克実/マギー/段田安則/小松和重/池谷のぶえ/明星真由美/安田顕(TEAM NACS)
作・演出=青木豪 美術=二村周作 照明=小川幾雄 衣装=前田文子 音響=加藤温 ヘアメイク=綿貫尚美 演出助手=坂本聖子 舞台監督=瀧原寿子 チラシ・画=塩崎顕 プロデューサー=北村明子 提携=紀伊國屋書店 企画・製作=シス・カンパ二―
7月7日(金)前売り開始 全席指定6800円
公式=http://www.siscompany.com/03produce/15baku/index.htm

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Posted by shinobu at 2006年09月13日 12:13 | TrackBack (0)