“演劇キック”は演劇ぶっく社が行う演劇企画製作プロジェクト。日本の近現代名作シリーズということで、これから毎年一作品発表していかれるそうです。第1回は井上ひさしさんの戯曲を板垣恭一さんが演出され、出演するのは全員がオーディションで選ばれた若い役者さんです。
井上ひさしさんと言えばこまつ座や新国立劇場ですよね。過度な期待を一切しないように心がけて伺ったところ、なんと、ぼ~ろぼろと泣かされました!私が観た回のカーテンコールでは拍手・手拍子が鳴り止まず、突然のダブルコールとなりました。嬉しいな~、こういう奇跡♪
上演時間は約2時間55分(15分の休憩を含む)です。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより。
昭和15年、舞台は浅草のレコード店「オデオン堂」。
ここは、店主一家と下宿人たちが、こよなく愛する流行歌を歌って暮らしている。
しかし、時はあの太平洋戦争の直前。
オデオン堂も時代の流れに逆らえず、“軍国歌謡”と“敵性音楽”の対立で揺れ始めていた…。
「好きな歌がどんどん歌えなくなる」
“そんな受難の日々”を、反骨とユーモアを持って生き抜いていこうとする庶民たちの一年間。
≪ここまで≫
井上作品を真剣に、大切に舞台化した、若い人のひたむきさを見せていただけました。演技はもちろん荒削りですし、舞台上でおろおろしているように見える方もいらっしゃいました。でも、『きらめく星座』というお芝居と並行して、若い役者さんが井上ひさし作品と真正面からぶつかっている様子が、ひとつの世界となって立ち上がってきたのです。これは対話だ!って思ったんですよね。舞台と観客との対話だけでなく、脚本とそれを演じる(作る)人との豊かなコミュニケーションが見えて、私はそこに一番感動しました。
70歳を超える井上ひさしさんの言葉が、20代~30代の若者の体と声を通じて客席に生き生きと伝わってきます。客席には出演者よりもずっと年上のお客様も多数いらっしゃいました。世代、時代をぐるりとクロスして、演劇の愛が満ちてくる・・・その状態が幸せだったのです。
舞台装置はシンプルですが愛情が感じられます。ピアノもちゃんと生演奏でしたし、歌もきれいにハモってくださってましたね。衣裳もこまめに変わって雄弁でした。こまつ座では絶対に観られないような若者らしいギャグも可愛らしかったです。
演出の板垣恭一さんがパンフレットに書かれている言葉を一部引用します。
『人生に正解なんてない。それをオデオン堂の人々はそれぞれの奔放な生き方で体現しています。この家の人達の生き方ってかなりメチャクチャで素敵です。そんな人達を飲み込んでしまう戦争ってやつは、どこかで「正しいモノ」とつながっている気がしてならず、だからボクは「正しいモノ」がキライなのかもしれません。』
ここからネタバレします。
恥ずかしながら私は『花よりタンゴ』(姉妹が財産を供出させられる)を観て初めて、「国に財産を没収されることの理不尽」を感じたのですが、今作でもそのことに憤りを感じました。「戦争だから仕方が無い」なんて思ってはいけないのです。
「ぜいたくは敵だ」「生めよ殖やせよ」「欲しがりません、勝つまでは」等のスローガンで国民を規制・洗脳し、仮想敵国の文化を徹底的に排除。それらの国の政策に従わない人間には非国民のレッテルを貼り、逮捕・・・。今を生きる若者が演じることで、戦時中の日本の異常さが際立って伝わってきました。
そういうこともあり、私はちょっとした軽いセリフにも胸打たれて、何度となくほろほろ涙を流していました。どうしても涙が止まらなくなって、鼻水まで出ちゃって、もー困っちゃう!!っていう状態になったのは(苦笑)、左手を失った入り婿・源次郎(唐沢龍之介)が「日本に道義はないのか?私の左手のように、バラバラに崩れ去ってしまったのか?」と嘆くシーン(セリフは正確ではありません)。その後にコピーライターの竹田慶介(間瀬英正)が、宇宙の星の数の話から“人間の広告”を語ります。「人間は奇跡そのもの」という、普通に口にするには少々気恥ずかしくなるようなストレートな言葉を、涙をこぼしながら堂々と、朗々と語してくださって、私も号泣。また、それを聞いている舞台上の役者さんたちの自然な立ち姿にも感動しました。
オデオン堂というレコード店が舞台ですので、昭和の名曲がどんどん流れ、歌われます。開演前に劇中で流れる曲がさらりと紹介されるように流れていました。おかげで本番では「聴いたことあるな~」と親しみを感じて聴くことができました。“昭和”のことなど全く知らない若いお客様のことを考えての親切な演出だと思いました。
出演者のお一人と終演後にお話させていただいたところ、「やっぱり脚本が面白いんです。何度やっても、面白いんです。」とおっしゃっていました。
出演=荒井タカシ/大久保綾乃/唐沢龍之介/窪田道聡/高田賢一/間瀬英正/山口恵/伊藤一将(メタリック農家)/今村裕次郎(らくだ工務店)/竹岡常吉(ポップンマッシュルームチキン野郎)/丸山高明(劇集団ジェット気流)
作=井上ひさし 演出=板垣恭一 美術=尼川ゆら 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響効果=田島誠治(Sound Gimmick) 舞台監督=筒井昭善 音楽=小林章太郎 衣装=名村多美子 演出助手=井村容子 制作協力=赤沼かがみ(G-up) 制作=本多貴子(演劇キック) 提携=笹塚ファクトリー 企画・製作=演劇ぶっく社「演劇キック」
7月18日(火)チケット発売 前売2,800円/当日3,300円(日時指定・整理番号付き自由席)
公式=http://www.enbu.co.jp/kick/
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