チラシにひとめぼれしてすぐに予約したドラマ・リーディング公演です。『溺れる花嫁』を翻訳された名和由理さんご自身がプロデュースされています(⇒名和さんのインタビュー)、次期新国立劇場芸術監督の鵜山仁さんがリーディングを初演出。そして豪華キャストです。
紀尾井ホール(小ホールは5階)には初めて伺ったのですが、ゴージャスでお上品!!もー気分はセレブでしたよ(笑)、おしゃれして行った甲斐がありましたっ。
きれいなパンフレットが無料で配布されます。開演前にあらすじや舞台背景をしっかり頭に入れておかれると良いと思います。ものすごい戯曲でした・・・舞台化されて欲しいです。
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レビューをアップしました(2006/09/24)。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
1940年代。第二次世界大戦中、ナチス支配下のラトビアで起きた実話に基づく物語。ナチス将校ブラント(今井朋彦)のもとで工作員をしていたヴァルディス(坂口芳貞)と、献身的な妻サルミーテ(紺野美紗子)。ブラントに徹底的に利用され、極限状態にまで追いつめられた若い夫婦が、互いに相手の命を守ろうとして最後に選んだ自己犠牲の道は、結局二人を破滅させ、一族の歴史をも変えてしまった・・・・
≪ここまで≫
朗読といっても簡単な装置はありますし、役者さんは座りっぱなしではなく、かなり動きます。セリフを暗記して話すことも多々ありました。
前半は残念ながら眠気に勝てず・・・。公式サイトの見どころにありますように、“豪華キャストがそれぞれ一人二役を演じる”ことに馴染むまでが一苦労でした。でも後半では、おおまかな設定や人物の性格がわかっていたので、お芝居を楽しむ姿勢でじっくり戯曲を味わうことができました。恐ろしい話だった・・・最後は感動して泣いちゃいました。
オーストラリアでの初演が2005年6月で、舞台となったラトビアではまだ上演されていません。日本ではもちろん今回が初演です。海外の新作戯曲の紹介という意義はとても大きいと思いますが、朗読スタイルであったことは上手く機能したとは思えませんでした。ぜひぜひ本格的に舞台化してもらいたいです。
ここからネタバレします。
セリフだけを読んで、ト書きを読まない演出でした。役者さんは一人二役、そして時代も国も超えた世界を行き来します(1944年のラトビアと1996年の米・ピッツバーグ。そしてまれに1996年のオーストラリア)。観客はかなりがんばって想像力を駆使しないかぎり、普通の舞台を観るように戯曲を理解するのは困難だったと思います。想像力をかきたてる演出は望ましいですが、想像力の発動を強いるのはリスクが高いと思います。
また、台本を持ったままセリフを語るという朗読スタイルでありながら、普通の演技もするので、中途半端な印象が先に立ってしまいました。「朗読してますよ」と観客にアピールする姿勢を保ちつつ、言葉だけで意味、感情を伝えることにも尽力するという特殊な演技状態が、ドラマ・リーディングの醍醐味だと私は思っているので、演出方法としては残念な結果でした。
しかしながら、戯曲の素晴らしさは最後の最後に身に沁みてわかりました。ナチスのユダヤ人虐殺に加担したことに対する罪の意識や、極限の愛憎が入り組んだ残酷な夫婦関係など、あらがうことができなかった運命とそれに翻弄されて命の意味を見出せなくなった人間の姿を見せ付けられ、胸にぐさりと重たい傷みが残りました。しかしながら結末には、時(世代)を超えて、肉体の束縛をも超えて、許しと希望が示されます。
終盤のヴァルディスからエレナへの言葉です(セリフは完全に正確ではありません)。
「自分に問いかけろ。」
「自分を一番批評できるのは自分自身だと。」
「前に進みなさい、エレーナ。」
「お前が自分を許せるまで、それはとまらない。」
ストーリーを説明するにはあまりに込み入っているので、断念(涙)。ぜひ舞台化を!
出演=エレン/サルミーテ:紺野美紗子 ヴァルディス:坂口芳貞(文学座) マット/ブラント:今井朋彦(文学座) ゼンタ/イルマ:高橋かおり
脚本=マイケル・フッチャー&ヘレン・ハワード 翻訳=名和由理 演出=鵜山仁 美術=乗峯雅寛 照明=金英秀 音響=秦大介 衣裳=中村洋一 演出助手=森さゆ里 制作=大場朋子 企画・製作・主催=(株)ドラマクリオ イラスト=カンバラクニエ 日豪交流年公式事業 ドラマチック・オーストラリア参加作品
全席指定4,800円(プログラム付)
公式=http://www.dramacrio.jp/
チラシのイラストを描いたデザイナー、カンバラクニエさんのサイト=http://www.kuniekai.com/
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