ある劇団の制作さんからのお薦めで観に行ってまいりました。松本零士さんの漫画を舞台化なんて・・・すっごく気になっていたんです。でもスペースノイドとは衝撃的な初対面をしてしまっていたので(笑)、ちょっと怖いな~とも思ってたんですよね。
しかしながらそんな心配は全く無用でした。とても真摯な態度で作品と向き合ってらっしゃる劇団でした。美術と照明が素晴らしい!上演時間は約1時間35分です。
劇団サイトで予告編動画を配信中。
毎週月曜更新のSPACENOID FMあり。
レビュー⇒休むに似たり。
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レビューをアップしました(2006/10/06)。
スタンレー山脈を越えた先にある、パプアニューギニアの首都ポート・モレスビーを攻略しようとした日本軍。空軍の若き飛行機乗りたちのお話でした。
開場時間から飛行機の操縦士が、舞台上のコックピットの操縦席にだらりと座っていました。照明でじんわりと装置を照らし、松本零士さんの漫画の世界に特有の、だだっぴろく広がる底なしの暗さを感じました。開演前から圧巻でしたね。
飛行機や車などの乗り物を舞台で表現するのは難しいことだと思います。人が乗るわけですから、実物の大きさを感じさせなければなりません。でも実物を使うのは容易ではありませんし(特に飛行機は難しい)、本物が舞台に存在するのはかえってダサかったりもします。・・・が、この作品の飛行機の表現は絶品でした。
舞台面側の少し上手寄り中央に、コックピット部分のセットだけがあり、最初は飛行機の機体はありません。でも後半で兵士たちが飛行機に搭乗することになると、舞台後方にあったパーツを組み合わせて機体を作るのです。それがぴったりドッキングしないで少しずれているのが、機体のポンコツ感を表現できています。さらに演劇的効果が高いのは、下手天井から吊られた巨大なプロペラです。飛行機が飛び始めるときに初めて、そのプロペラが回るんですよ~。それで観客は自然に、大きな飛行機が飛んでいることを想像できるのです。
はじめ、若い兵士たちはとにかく暇そうに休みまくっています。彼らは一式陸上攻撃機(いちしきりくじょうこうげきき)の乗り込み員で、いつも失敗ばかりしている落ちこぼれです。罰として今回の襲撃には参加させてもらえず、不名誉ながら自堕落な時間をむさぼっています。
いわゆる“戦士の休息”タイムが長く続くのですが、その会話がとても可愛らしいです。ギャグもけっこうありますが、笑わせるためというよりは彼らの穏やかな関係を表すためのものであり、人間同士のごく自然なコミュニケーションとして書かれた脚本であるように感じました。ただ、演技と演出についてはあまり効率がよくなかったように思います。セリフとセリフの間が不自然に長く感じたりして、ちょっと退屈しました。
だらだらしている男の子たちは、今どきのごく普通の若者なんですよね。彼らが深緑色のつなぎとベストを着ていることに、大きな違和感を感じました。また右上腕部に鮮やかな日の丸の旗が縫い付けられているのも、不快でした。だって今の若者は「日本国万歳!」とか言うようには教育されていないですから。
「みんなが戦っているのに、俺らはただぼーっとしていたただけ。情けない。俺達も加勢したい」
「俺達はただ飛びたかっただけ。でも時代が時代だから、その飛行機がゼロ戦だっただけだ。」
こんな言葉(セリフは正確ではありません)を男の子たちがサラリとつぶやくので、ズキっと胸が傷みました。舞台は太平洋戦争時代ですが、演じているのは今を生きている若者です。だから戦時中の常識と今とのギャップを肌で実感し、戦争というものを自分のものとして受け止めることができました。先日の『きらめく星座』でも感じたことです。リアルな歴史ものとしての戦争演劇も大切ですが、若者が若者のままで舞台に立つからこそ伝わることがあるんですね。
ここからネタバレします。
ゼロ戦のエリート飛行士たちが、落ちこぼれたちが乗る一式陸上攻撃機を、自らの命を捨てて守るシーンで、私はどーどーと号泣。だってだって・・・ドラム缶にぽつんと一人っきりで腰掛けた男の子(ゼロ戦に乗っている)が、真っ赤な照明と爆撃音を浴びると、そのまま背後にばったん、ごろり!と倒れて落ちるんだもの!!
漫画「スタンレーの魔女」は20ぺージぐらいの短編だそうです。私はたぶん昔に読んだ気がするんだけど、すっかりストーリーは忘れていました。今作品では設定や結末は変えずに、兵士達の交流場面が追加されたようです。
スタンレー山脈を越えるためには、飛行機の重量を減らさなければならない。だから操縦士以外の全員が飛び降りた・・・。なんという悲惨な結末。操縦士がたった一人だけ残されたエンディングの風景は、オープニングと重なりました。
私は小学生の頃、松本零士さんの漫画『銀河鉄道999』が大好きで、今は文庫本のコミックを全部持っています(大人買いしたの♪)。松本さんの描く世界はギャグもあるし美女も登場しますが、社会風刺が効いていて、全体のイメージはとてつもなく暗いですよね。オープニングとラストに、その世界に通じる重厚なムードがあったと思います。
出演=矢崎進/鈴木啓文/魚住和伸/清水洋介/清水嘉邦/藤代和真/浅倉洋介(風琴工房)/藤枝直之/船生光
原作=松本零士 脚本・演出=御笠ノ忠次 音楽=佐々木久夫〔Sean North〕 照明=津村裕子(アート・ブレーン・カンパニー) 音響=前田真宏 美術=魚住和伸 美術協力=エンドレスファクトリー 舞台監督=伊東龍彦 演出助手=岡崎龍夫 映像=渡辺一樹 撮影協力=月川翔/池永亘/伊藤諒/片岡亮 宣伝美術=藤野和美 CG製作=池田始 衣裳協力=中田商店 制作=伊藤蔵人 企画・製作=スペースノイド
〔全席指定〕3,000円
公式=http://s-noid.com/
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