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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年10月19日

田上パル『報われません、勝つまでは』10/18-23アトリエ春風舎

 田上パル(たのうえ・ぱる)は田上豊さんが作・演出される劇団です。第2回公演からいきなりアトリエ春風舎、しかも他地域公演があり、それが北九州演劇祭参加作品なのです。いやおうなしに注目しちゃいますよね。

 若さが炸裂する、血気盛んな(笑)、体育会系運動部青春芝居でした。上演時間は約1時間20分。
 なんと劇団員の平均年齢は22歳!!!

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 200X年。冬。県内トップクラスの名門ハンドボールチームが全国大会予選決勝にて、大敗を喫する。試合会場から意気消沈して部室に帰ってくる選手たち。敗戦の落胆もあり、ミーティングの迷走が、次第にケンカに変わる。今まで心の内に秘めたメンバーに対するそれぞれの思いが徐々に吐露されていく。崩壊寸前のチーム。
 そこへ、対戦相手のエースが部室へやってきて・・・
 体育会系の汗臭く、熱い芝居が展開する、青春群像熊本弁芝居!!
 ≪ここまで≫

 舞台はうす汚い部室。落書きだらけのロッカーが並び、木製のイス、ベンチ、そして色んなゴミが転がっています。いかにも若い男の子が使ってそうな運動部の部室の雰囲気です。でも、美術全部ががっしりと作りこまれているわけではなく、奥が透けて見える緑色のネットとブルーシートが壁の役割を果たしているので、劇場の黒い壁が露出しています。

 燃えたぎる若い心、そして体・・・ですね。血気盛んな運動部員の男の子たちが、狭い部室でガンガンに暴れまわります。最初はちょっと堅い演技が目立ってぎこちなかったですが、徐々に、感情が発火するかのごとくほとばしり出るようになり、それが体の動きに覆いかぶさるように組み合わさって、そこらじゅうで暴発しているように感じました。私は・・・苦手でしたね。感情、言葉、体の動きをコントロールできていないように感じることが多く、その危うさが不安になりました。
 でも、若者だからこそ表現できるものには間違いありません。あの無防備でひたむきな、一直線に伸びる思いは、若い身体からこそ感じられるものだと思います。

 この公演は劇団の第2回公演で、メンバーが桜美林大学を卒業して以来、初めての公演だったようです。出演者の中には大学生もいらっしゃるそうで、カンパニーの平均年齢が22歳・・・。いわば生まれたての劇団なんですね。それを考えれば充分に丁寧な作品作りをされていると思います。演劇に対する姿勢がすごく真面目ですよね。

 チラシのビジュアルや公演規模から、青年団自主企画と同じ(もしくはその上を行く)レベルのような認識で観てしまったため、どうしても粗(あら)が気になってしまいました。制作手腕の凄さが裏目に出た、と言っていいかもしれません。でもそれはこの公演について、ですから。将来、そのパッケージに見合う内容を発表していただけたら嬉しいなと思います。
 これからご覧になる方は、若者のまっすぐな熱さを目当てに行かれると良いのではないでしょうか。

 ここからネタバレします。

 決勝戦で戦った二つの高校は、近いうちに合併されることが決まっています。だから合併後には勝者と敗者が一緒のチームになってしまうんですね。その設定はとても面白いと思いました。また、勝者チームに兄、敗者チームに弟が所属しているという、数奇な運命を背負った(笑)兄弟がいて、勝っていい気になった兄が、負けてやさぐれ状態になっている弟のチームの部室にやってくるのも、わくわくしました。
 その兄が、敗者チームの一人から「お前は昔から変わらない。性格が最悪だ」と言われ(セリフは正確ではありません)、舞台中央で観客に背を向けて、静止します。シーンとなって空気が固まったのが良かったですね~。

 何かとんでもないことが起こる前に準備のような間(ま)があったり、ここが見せ場(聞かせどころ)だぞ、というシーンで役者さんに力が入っていたり、余分な間(ま)を取っているように感じたのが残念。
 結果的に1シチュエーションで、照明の変化もミニマムな会話劇でしたが、客席とすんなり地続きになっているステージ、上手手前に立っている街灯、網目状態の壁などの美術から、もっと冒険的な場面転換を期待していました。できれば破綻して、枠を超えて、飛翔するような感覚が味わいたかったですね。

≪東京、北九州≫
出演=坂田尚樹/星野秀介/金田拓磨/熊木進/松高義幸/安村典久(蜻蛉玉)/中村崇人(獣珍)
作・演出=田上豊 舞台美術=松村知慧 照明=伊藤泰行 舞台監督=佐野功 宣伝美術=金田拓磨 制作=尾形典子/高橋優 企画制作=田上パル
一般 前売1,800円/当日2,000円 学生 前売1,500円/当日1,800円 平日マチネ割引 前売・当日共に1,200円
公式=http://tanouepal.com/

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Posted by shinobu at 2006年10月19日 02:13 | TrackBack (0)