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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年11月12日

ラズカルズ『火取り虫』11/09-13劇場MOMO

 松本たけひろさんが作・演出されるラズカルズの旗揚げ公演です。松本さんのことは役者さんとして出演されているのを拝見したことがありました。

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 ≪あらすじ≫
 駅前のさびれ気味のラーメン屋が舞台。父が死んでから姉(江原里実)がなんとかやりくりしてきた店に、10年前から消息不明になっていた弟(佐藤宙輝)が帰ってきて・・・。
 ≪ここまで≫

 いわゆる下町の商店街にありそうな、ちょっと古い目のラーメン屋さんの2階。そこで働く人、近所の人などが集まります。リアルに作られた美術で、匂いも漂ってきそうでした。あまり歓迎ではないニオイなんですけど(苦笑)。

 役者さんの演技が信じられず、外から眺めるままに終わってしまいました。役を演じている役者さん自身が、まだ舞台の上にいるように感じました。平たい言葉で言うと、役柄になりきっていなかったというか。舞台で役柄を生きている状態には遠かったです。あと、季節感に信憑性がありませんでした。

 舞台を真っ赤に染め上げる照明が多用されましたが、ちょっと頻度が多すぎました。もっと出し惜しみすると効果が増すのではないでしょうか。照明は、色や照らす面積についても、もっとバリエーションが増えるといいなと思います。

 ここからネタバレします。

 12年前に父親を殺したのは母親ではなく、本当は弟でした。母親は息子をかばって自分が殺したと自首し、刑務所に入ったのです。とんこつスープを作る際の豚の骨を砕く音が、父親を殴り殺したことを思い出させるので、弟はそれに耐えられなくて家を飛び出しました。そして母親がとうとう出所してくることになり、本当のことを伝えなければと一念発起して姉のもとに帰ってきた・・・という筋書きでした。
 ラーメン屋の家族の他に、そこで働くバツイチのアルバイト(坂本岳大)とパート(佐藤恭子)、パートの夫の駅員(桃井大樹)、ラーメン店の隣りの風俗あっせん業の元ヤクザ(澤唯)とその恋人のSM女王(入交恵)、無銭飲食犯(林竜三)と警察官(花井京乃助)のエピソードも関わってきます。

 トイレ修理、無銭飲食、窃盗、離婚、養育費、アルバイト、安い時給、借金、パチスロ、風俗、SM、ヤクザ、殺人、逮捕、入獄、出所・・・などなど、決して大らかで健康的とはとらえられない事々が並べられていました。こういう暗いめの日常を描くお芝居、多いんですよね。私達が生きている今が、まさにお芝居に表れているのでしょう。その多数の中からでも、はっきりと個性が感じられる作品が観たいです。

 SM女王がボンデージファッションで登場し、彼女の職場での本番シーンが長々とありました。私はSM自体が嫌いなわけではありません。むしろ意味的には好きだと思うんですけどね(苦笑)。ぎらぎら、テカテカと露骨に見せられるだけでは官能的な気分になれないので、私には必要性が感じられませんでした。

 チラシにありますが「本能に縛られる」ということがテーマのひとつのようです。本能って難しいですよね。本能を表そうとした途端に、それは本能ではなくなっているというか。

 大晦日の日になぜかわらわらと人が集まってきて、色んな秘密をぶっちゃけてしまうという展開は面白いと思いました。特に姉がアルバイトに愛の告白をするのはほほえましいですね。

出演:坂本岳大(劇団昴)/佐藤恭子(カムカムミニキーナ)/澤唯(projectサマカトポロジー)/花井京乃助(ザズウ)/林竜三/桃井大樹/入交恵/江原里実/佐藤宙輝/松本たけひろ
作・演出:松本たけひろ 舞台美術:向井登子 照明:山浦恵美 音響:橋本絢加 舞台監督:甲賀亮(×突貫屋) 宣伝写真:永田理恵 制作:三沢一世 企画・製作:ラズカルズ
全指定席 前売:3000円 当日:3200円
公式=http://www.razcals.org/

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Posted by shinobu at 2006年11月12日 23:52 | TrackBack (0)