1984年初演の清水邦夫さんの戯曲を蜷川幸雄さんが演出されます。堤真一さん、常盤貴子さんら豪華キャストで前売りは完売。
当日券は毎公演の開演60分前よりシアターコクーン当日券売場にて2階立見券(¥3,000)を中心に発売(公式サイトより)。上演時間は約3時間(15分の途中休憩を含む)。
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≪ストーリー≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
日本海に面した町の古びた映画館。清村盛(堤真一)は有名な俳優だったが、3年前に突然引退して、妻ぎん(秋山菜津子)とともに生まれ故郷の弟(高橋洋)が経営する映画館でひっそりと暮らしている。そこへ、昔の俳優仲間であった名和水尾(常盤貴子)と彼女の夫、連(段田安則)がやってくる。かつて盛と水尾は激しい恋に燃えていた。訪れた水尾が見たのは、すっかり狂気にとりつかれてしまった男の姿だった…。
≪ここまで≫
何度かレビューにも書いていますが、去年ぐらいから私の感覚はかなり変化してきています。特に役者さんについては、型にはまった段取りどおりの動きやお仕着せの感情表現が目につくと、それだけでストーリーや演出などが頭に入らなくなってきました。
今作品では、あらかじめ決めておいた感情の流れに沿って予定通りに効率よく動き、ひとつの固定されたキャラクターを道筋どおりに演じる役者さんがほとんどだったように思います。また、「来るぞ、来るぞ、ほら来たーっ!」って感じの音響、照明、転換も好みではありません。3時間は長かったです。
ただ常盤貴子さんだけは、ありのままの常盤さんとして舞台で生きていらっしゃるように感じました。彼女自身が、いわば素っ裸同然の開けっぴろげな状態で、セリフ(戯曲)の意味そのものの体験を、感情を、舞台上で実際に感じながら私たちに見せて(さらして)くださっていました。
ここからネタバレします。
オープニングとエンディングは、大勢のエキストラが映画館で感情を燃えたぎらせる演技をしていました。みんな同じ顔、同じ声・・・。
パッヘルベルのカノン(Wikipedia)が何度も流れました。舞台で使われる頻度が本当に高いですよね。蜷川作品でもよく流れます(カノンをアレンジしたものなど)。戸川純の「蛹化の女(むしのおんな)」も好きな曲ですが、こう何度も使われると作品に過剰な意味づけをしてしまっている気がして、あまり良い効果が出ているとは思えません。
最後は舞台奥の壁がくずれて桜の花吹雪でした。うーん・・・大仕掛けがあることは嬉しいんですが、そんなに効果的だとは思えず。
演技という嘘の世界を生きて、セリフを自分の言葉のように使って、徐々に自分自身を見失っていった盛(堤真一)は、彼が昔、本当の気持ちで愛していた水尾(常盤貴子)の、全身全霊の嘘のない愛によって目を覚まします。けれども水尾の愛はいわば、盛の心の闇を煌々と照らしつくし、隠れるところもすべて奪ってしまう残酷な光でした。混乱した盛は水尾を絞殺し、再び自分自身の中へと閉じこもって行ってしまい・・・。ストーリーはこんな感じかなと思いました。
「俳優は、自分自身ではない誰かの人生を生きる(演じる)ものだ」という考えに、私は同意ではありません。だから盛が狂ってしまうことや、妻・ぎん(秋山菜津子)が盛のためにと思ってやったことを、すんなり受け入れる気持ちにはなれませんでした。
盛に本当に愛されていたことに気づいた瞬間から、水尾がすごく輝き始めました。私はそのシーンで初めて、舞台の中に入ることが出来ました。常盤さんは本当に、不器用さも光って見えるほどに、ありのままでしたね。たとえば「下手面側から舞台中央に歩いていき、下手方向に身体をぐるりと回転させ、盛の方に手を伸ばす」というト書きがあったとすると、その指示通りに、何の演技もせずに、行動しているように見えました。美しかったです。
毬谷友子さんの役(地味なイカズゴケ)は、毬谷さんが演じる必要があったとは思えませんでした。だって顔見えないし出番少ないし・・・(涙)。
秋山菜津子さんがお召しだった紫色のニットとスカート、ショールがすごくきれいでした。
出演=堤真一/常盤貴子/秋山菜津子/毬谷友子/高橋洋/月川悠貴/岡田正/塚本幸男/新橋耐子/沢竜二/品川徹/段田安則
作=清水邦夫 演出=蜷川幸雄 美術=中越司 照明=原田保 衣裳=小峰リリー 音響=井上正弘 ヘアメイク=佐藤裕子 振付=広崎うらん ファイト・コレオグラファー=國井正廣 所作指導=花柳錦之輔 演出助手=井上尊晶 舞台監督=濱野貴彦
一般発売 2006/9/9(土) S¥9,000 A¥7,500 コクーンシート¥5,000 ※未就学のお子様はご入場いただけません。
公式=http://www.bunkamura.co.jp/
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