「ソウル市民」に続いて「ソウル市民1919」を拝見しました。セットはほとんど変わらず、登場人物は少しずつ違い、配役はかなり変わっています。
続けてご覧になる方は、シリーズ間の空気感や配役の違いを楽しまれていたようです。私は3作とも別の日に観ることにしましたので、それぞれ別個の独立したお芝居として観ることになりました。
今回もやっぱり、すごく面白かったです。三作目が楽しみです。
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≪あらすじ≫ 無料配布パンフレットより。(役者名)を追加。
1909年3月1日、ソウル(当時の呼び名は京城)。篠崎家の人々は、今日も平凡な一日を過ごしている。ただ、今日は少しだけ外が騒々しい。噂では、朝鮮人たちが、通りにあふれているという。
おりしも相撲興行の一行(島田曜蔵&秋山建一)が到着し、応接間は賑わいを見せる。
オルガンの練習に興じる娘たち(辻美奈子、木崎友紀子、たむらみずほ)。
米増産の標語に頭をひねる書生たち(太田宏、永井秀樹)。
しかし、その間にも少しずつ、この家から朝鮮人が姿を消していく。
≪ここまで≫
あからさまな差別意識が堂々と漂う居間に、無邪気で明るい笑い声が響きます。エンターテインメントとして和やかな笑いと美しい歌を堪能しました。ふくよかな青年団俳優さんたちの活躍もすごかった(笑)。
そしてバカ話に笑いながらも、ずっと胸にむずがゆさを感じていました。平穏だと信じているこの瞬間に、どれだけの人がどれだけ傷ついているのか。今とこれからの日本について、その国民である自分自身について、向き合って考えざるを得ないとても貴重な時間でした。
途中で少々退屈した瞬間がありました。具体的にどこだったのかは覚えていないのですが、『ソウル市民』に比べると手放しに楽しい会話や具体的な事件が多く、その奥にあるものを私が感じづらくなっていたからかもしれません。
ここからネタバレします。
朝鮮人女中(ひらたよーこ&申瑞季)の歌があまりにうまく、そして美しくて、幕開け早々に涙がボロボロ・・・。ラストに日本人がオルガンに合わせて歌う京城の歌と対(つい)になっているんですね。「京城で、ロシアもシナも朝鮮も仲良し♪」みたいな無神経な歌詞でした。
無垢なまま、疑問を持たないままに生きることがいかに醜いことかと、当時の明るい流行歌を聞き流しながら考えました。歌が続く中で徐々に暗転して終幕したのがとても良かったです。
妻(山村崇子・登場しない)が死んで大旦那(篠塚祥司・登場しない)は病に臥せっており、妻が身ごもっていたはずの子供も出てきません。新しい家族として妾の子(小河原康二)が登場し、時の流れを感じました。諸行無常、ですね。幸せな今がずっと続くなんて絶対にありえません。
出戻ってきた娘・幸子(辻美奈子)の発言に具体的な差別意識が表れます。※セリフは正確ではありません。
「内地はいや。朝鮮がいい。」「だって日本人が娘さんを売っちゃったりするんだよ」「貧乏な日本人なんて初めて見た。」
今の私は普通に聞いていて「おかしいよ」と思いますが、当時は彼女の感覚も理解できないものではなかったのでしょう。自分自身の差別意識について「知らなかった」では済まないと思いました。せめて疑問に感じたことに蓋をせず、考え続けようと思います。
「ソウル市民」「ソウル市民1919」「ソウル市民 昭和望郷編(新作)」の三作連続公演
出演=山内健司/天明留理子/辻美奈子/小河原康二/大塚洋/根本江理子/太田宏/永井秀樹/田原礼子/高橋縁/ひらたよーこ/申瑞季/篠塚祥司(客演)/根上彩/たむらみずほ/島田曜蔵/秋山建一/佐藤誠/月村丹生/木崎友紀子/他
作・演出=平田オリザ 演出助手=井上こころ/深田晃司 舞台美術=杉山至+鴉屋 照明=岩城保 音響=藪公美子 衣装=有賀千鶴 衣装製作=菅かな女/すぎうらますみ/藤木智美 宣伝美術=工藤規雄+村上和子/京/太田裕子 宣伝写真=佐藤孝仁 宣伝美術スタイリスト=山口友里 パンフレットデザイン=京 パンフレット写真撮影=青木司 パンフレット対談編集=工藤千夏 翻訳協力=原真理子 制作=松尾洋一郎/西山葉子/林有希子 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場/(財)武蔵野文化事業団
[チケット発売日] 2006年10月1日(日)前売・予約:一般3,500円/学生・シニア2,500円/高校生以下1,500円 当日:一般4,000円/学生・シニア3,000円/高校生以下2,000円 一日通し券(前売・予約のみ):一般9,000円/学生・シニア6,000円/高校生以下4,000円 武蔵野市民・(財)武蔵野文化事業団アルテ友の会会員 特別料金3,150円 一日通し券8,100円
公式=http://www.seinendan.org/
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