「ソウル市民」「ソウル市民1919」に続いて「ソウル市民 昭和望郷編」を拝見しました。新作で三部作の完結編です。
「吉祥寺ちらし会議」出演後だったので疲労に負けてしまった瞬間もありましたが、幕が下りた時には三部作によって統合された大作の味わいがありました。
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≪あらすじ≫ 無料配布パンフレットより。(役者名)を追加。
1929年10月24日、ソウル(当時の現地名は京城)。篠崎文房具店にも大衆消費社会の波が押し寄せ、新しい経営感覚が求められていた。
この家の長女(井上三奈子)に求婚したアメリカ帰りの新進経営者(古舘寛治)。
精神を病んで入退院を繰り返している長男(松井周)。
総督府に勤めながらも朝鮮人エリートとして植民地支配への協力に悩む青年(金旻緒)。
通り過ぎる謎の若き芸術家集団(山本裕子/村田牧子/二反田幸平/端田新菜)。
つかの間の饗宴を楽しむような、一群の若者たちの姿を鋭く描いた、ソウル市民三部作の完結編。
≪ここまで≫
わざとおどけてみせるような笑いの時間が長く、三作品の中ではあまり私好みの空気感ではありませんでした。でも後半に病気の長男(松井周)が帰宅してからは、軽快で奇妙なスリルが心地よかったです。
先日見た映画「ゆれる」と似てるように思いました。その時、その場所で確かに生まれたある感情が、身の回りの環境に影響されて歪曲していきます。過去の記憶はどんどんと曖昧になっていきます。日本人なのか朝鮮人なのか、医者なのか患者なのか、自分なのか他人なのか・・・。境界が破壊されて混ざり合い、何が何だかわからなくなったまま自分を放置したその結果が、ぬるい笑い声になるのではないでしょうか。
数年前の私だったらこの三部作に“日本人に対する悪意”というものを感じて、なんとも表現しづらい不快な気持ちになっていただろうと思います。でも今回は全くそういう感覚がありませんでした。自分自身や日本、そしてこの三部作に対して、ぐっと引いた視点から客観的に眺められるようになりました(もちろん私の母国・日本が、ある国々を植民地にしたという事実を受け止めることが大前提ですが)。ここ数年間で海外の舞台をたくさん観に行き、舞台を通じて色んな国の色んな人々と触れ合ったおかげで、少しは視野が広くなったかな~と思います。
ここからネタバレします。
総督府に勤めはじめた朝鮮人の書生・李齊源(金旻緒)の存在に、気持ちが混乱しました。でもその混乱が私にとって一番大切でした。外国語の音がとても心地よく耳に届きました。
日本人が朝鮮人に「十円五十銭(じゅうえんごじっせん)」の発音を練習させるシーンは、特に胸がむかつきました。でも、日本語の発音がはっきりとできるようになることは、李齊源のその後の人生にとって大切なことだったのでしょうし(あの時代では)、屈辱的とはいえその場では正論だったのでしょう。
自分が生きる今の常識や流行に、もっと慎重に反応しなければいけないと思いました。
「ソウル市民」「ソウル市民1919」「ソウル市民 昭和望郷編(新作)」の三作連続公演
出演=井上三奈子/福士史麻/松井周/荻野友里/山本雅幸/高橋智子/小林智/永井秀樹/森内美由紀/古舘寛治/河村竜也/古屋隆太/金旻緒/工藤倫子/鈴木智香子/長野海/渡辺香奈/山口ゆかり/大竹直/山本裕子/村田牧子/二反田幸平/端田新菜/後藤麻美/堀夏子
作・演出=平田オリザ 演出助手=井上こころ/深田晃司 舞台美術=杉山至+鴉屋 照明=岩城保 音響=藪公美子 衣装=有賀千鶴 衣装製作=菅かな女/すぎうらますみ/藤木智美 宣伝美術=工藤規雄+村上和子/京/太田裕子 宣伝写真=佐藤孝仁 宣伝美術スタイリスト=山口友里 パンフレットデザイン=京 パンフレット写真撮影=青木司 パンフレット対談編集=工藤千夏 翻訳協力=原真理子 制作=松尾洋一郎/西山葉子/林有希子 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場/(財)武蔵野文化事業団
[チケット発売日] 2006年10月1日(日)前売・予約:一般3,500円/学生・シニア2,500円/高校生以下1,500円 当日:一般4,000円/学生・シニア3,000円/高校生以下2,000円 一日通し券(前売・予約のみ):一般9,000円/学生・シニア6,000円/高校生以下4,000円 武蔵野市民・(財)武蔵野文化事業団アルテ友の会会員 特別料金3,150円 一日通し券8,100円
公式=http://www.seinendan.org/
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