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しのぶの演劇レビュー
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2006年02月07日

黒色綺譚カナリア派『眼だらめ』02/02-06ザムザ阿佐谷

 黒色綺譚カナリア派(こくしょくきたん・かなりあ・は)は赤澤ムックさんが作・演出・出演される劇団です。私は初見。
 ものすごく詳しいレビューはこちら⇒小劇場系
 BACK STAGEに写真入インタビューあり。

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 あらすじなどは小劇場系に詳しいですので、ぜひそちらをどうぞ。

 赤澤ムックさんは劇団唐組に所属されていた時期もあるようで、作風は思いっきりアングラでした。何度も書かせていただいておりますが、私はアングラが苦手です。

 アングラのお芝居って、むやみに物悲しさを誘う古いオルガンのワルツ(三拍子の曲)が必ずかかりますよね。ブンチャッチャ、ブンチャッチャ、タリラリララ~ン、みたいな。その音楽で無理やりドラマティックに盛り上げたかと思ったら、すぐに音量を下げ、役者が決めゼリフを言います。そしてその途端にまた大音量で同じワルツをガガンと鳴らす・・・。
 舞台を大々的に赤く染める照明と、その赤の中に緑のさし色が入るのもお約束。役者さんはことあるごとに見得を切り、異様に大きな声でずっと同じトーンで話し、リアリティ・ゼロの演技で押し切ります。動きも語り口もすごく紋切り型。そしてストーリーが当然のごとく破綻します(劇団桟敷童子は破綻してなかったですが)。

 「なんで同じことやるんだろ?」って、いつもすごく不思議に思ってるんですが、単にそういうジャンルなんだってことなんですよね。そして私はそれが苦手なんだ、と。それだけのことなんです。
 ただ、役者さんがアングラというジャンルの世界観をがっしりと引き受けて舞台に立っているのであれば、「あぁ、そういうジャンルなんだな」と納得はできるのですが(例えば唐組流山児★事務所劇団桟敷童子など)、この作品においては受け入れる気になれませんでした。役者さんの身体のあり方や精神状態が、普通のお芝居と変わらないように見えたからです。上手い人もいないし。

 アングラの世界がお好きな方は、若者がそのジャンルに果敢に乗り込んできていると解釈して好意的に取るのかもしれませんが、もともと苦手な私には耐え難い2時間強でした。ストーリーは無論のこと、納得できない展開が多々ありましたしね。1時間で限界が来て、最後の30分はつらくて舞台を全く見られず、うつむいていました。

 美術はすごく良かったです。ザムザ阿佐ヶ谷の個性を存分に生かしてムード満点でした。古い医療家具とか積み重なった本とか、上下(かみしも)の天井にあった、電球の花をあしらった木も作品世界にぴったりでした。

出演=吉川博史/吉冨亜希子/中里順子/アイハラミホ/湯田昌次/芝原弘/穴田行央/小久保加織/山下恵/赤澤ムック/眞藤ヒロシ
作・演出・総監督=赤澤ムック 舞台監督=中村貴彦 照明=奥田賢太(ダミアン) 音響=筧良太(SoundCube) 舞台美術=吉野章弘 衣裳・小道具=西荻カナリア工房 宣伝美術=足立学 制作=RIDE OUT 提携=ザムザ阿佐ヶ谷 
全7ステージ 2005年12月19日前売り開始 前売り2500円・当日券2800円 自由席
公式=http://www.kokusyoku.com/

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Posted by shinobu at 15:14 | TrackBack

野鳩『僕のハートを傷つけないで!』02/04-07タイニイアリス

 野鳩第14回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルに出場した劇団です。稽古場レポートのレポーターがチェルフィッチュの岡田利規さんなのが面白いですね。作・演出・出演の水谷圭一さんとのインタビューの内容が濃いです。
 私は今回が初見です。ロリータ男爵加瀬澤拓未さん がお元気になられたんですね。配役もぴったりでした。

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 前売2,200円(平日昼は1500円)は高いとは思わなかったですが、意図的であろうとなかろうと“へなちょこ”は“へなちょこ”なんですよね。その意味では大人向けの作風じゃないと思います。お好きな方もたくさんいらっしゃると思いますが、私は特にお勧めはしないですね。でも1度観ただけで判断はできないので、次回の再演作にも期待したいと思います。

 ≪あらすじ≫ 少々ネタバレしています。これからご覧になる方はお読みにならないでください。
 右村(みぎむら・畑田晋事)は身頭野(みずの・加瀬澤拓未)とともに漫画家を目指している学生だ。ある日、亮子(白井暁子)に失恋した右村は、ショックのあまり凄い勢いで走り出し、道路に飛び出してトラックに轢かれてしまう。右村を止めようとした身頭野も、同時に右手をトラックに踏まれてしまった。右村の上にかぶさったトラックをよけてみると、なんと身頭野の右手が右村になっていた。
 ≪ここまで≫

 おおざっぱに言ってしまうと、右村と身頭野という2人の男子学生の友情と青春の物語です。そこに、人が手になったりというナンセンスが挟み込まれます。

 紙芝居のような進み方をするお芝居だと思いました。紙芝居じゃなければ絵巻物とか漫画とか。セーラー服と学生服姿の若い役者さんが、セリフを絵本の読み聞かせのように語り、漫画のコマのように言葉も動きもピタっと静止するんですよね。あ、作品全体のイメージとしてはペープサートが一番近いかも。

 漫画が題材のお話ということで、本屋やトラックなどの大道具はいかにも漫画チックな、白黒のイラストのパネルが使われていました。学校の机も白くて、黒い線を何本も引くことで影がついていたのがかっこいいなと思いました。
 
 役者さんは妙なところで力を抜いたり入れたりして、トリッキーで難しい演技をされています。でも、グイっと惹かれるような瞬間を作っていた人は少なかったですね。一番印象に残ったのは藤子不二雄の向かって右側の方(赤い帽子)を演じられた村井良助さん(ですよね?)。嘘っぽい笑顔とわざとらしい瞬きが良かったです。

 トラックに轢かれた後、身頭野の右手となった復活した右村は、やはり死んでしまいます。右村の夢から始まり、身頭野がその夢を一人ぼっちで実現することで終幕するのは、感動を生むうまい構成だと思いました。

 ラストに大きな仕掛けがありました。身頭野は出来上がった漫画を見せるために、あこがれの 藤子不二雄(であろう2人組の人気漫画家)の家へと向かいます。なくなった右手をじっと見つめながら、身頭野が一人で舞台中央にたたずんでいると、真っ黒で殺風景だったステージが、パタパタするりと一面の青空に変わります。可愛らしくて爽やかなサプライズでした。そこでサラっと終演したのも後味がとても良かったです。

出演=畑田晋事/堀口聡/村井亮介/菅谷和美/山田桐子/佐々木幸子/加瀬澤拓未(ロリータ男爵)/白井暁子(白井劇団)
作・演出=水谷圭一 舞台監督=海老澤栄 照明=増田純一 音響=中村嘉宏(atSound) 舞台美術=仁平祐也 小道具=中島香奈子・畠山直子 イラスト=来ケシノ 宣伝美術=水谷圭一 制作=山田桐子・佐々木幸子 Alice Festival2005参加公演
全6ステージ 前売2,200円 当日2,500円(全席自由・日時指定・整理番号付) 平日昼割→前売1,500円 当日1,800円
公式=http://f32.aaa.livedoor.jp/~nobato/

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Posted by shinobu at 13:05 | TrackBack