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REVIEW

2007年01月11日

innerchild『アメノクニ/フルコトフミ~八雲立つユーレンシア~』01/08-14時事通信ホール

 小手伸也さんが作・演出されるinnerchild(インナーチャイルド)の新作です。2005年の『遥〈ニライ〉』に感動したので今回も楽しみにしていました。
 神話を書いた(書かされた)男の壮大なお話で上演時間は約2時間15分。登場人物の相関関係を頭に入れながら、日本史、世界史の少ない知識を総動員してがんばりました(苦笑)。

 時事通信ホールに初めて伺ったんですが、めっちゃキレーッ!!壁やドアが巨大ガラス!観る前からテンション上がりまくりでした。

 ≪あらすじ≫ 私の記憶の範囲です。
 ある大王の死後に二人の息子が王位を争い、国はアシバール国とユージア国とに分裂してしまった。長らく戦争中の両国であったが、隣国ロノクニが互いの共通の脅威となってきたため、友好関係を結ぼうとする。その背後には両国を支配し、ロノクニを牽制しようとするアメノクニの力もあった。
 アシバール国のヤスマール(進藤健太郎)は、アシバール国およびその国王がこの世界(移住者地)を支配することを正当化するための、神話を書くよう任命される。
 ≪ここまで≫

 フルコトフミとは古事記(Wikipedia)のことなんですね。古事記の編纂といえば必ず日本史の授業に登場する太安萬侶と稗田阿礼。このお話でもメイン・キャラクターとして登場しました。間口が広くてすっきりした舞台を、飛鳥時代を連想させる衣裳の役者さんが闊歩します。

 歴史上の人物をなぞらえたキャラクターが大勢登場するので、全体がNHK大河ドラマのような印象。あまりに壮大な設定のため、説明のためのセリフやシーンが多い気がしました。全部を咀嚼しながら観るには集中力が必要です。でも最後まで観終わった時、今の日本および日本人に対する小手さんの具体的な主張を聞くことができたように思いました。
 次回公演(8/31~9/9)のタイトルは「アメノクニ/ヤマトブミ」で、会場は吉祥寺シアター。やっぱり続編になるのでしょうか。ちょっと楽しみです。

 可愛い女優さんが多かったですねー!衣裳も巫女みたいでそそるし(笑)。さらにキスシーンがけっこう多くてですね、それがみんなイイ感じだったの~。「いやん、うらやましいわ♪」って思っちゃうぐらい(笑)。小手さんは良い意味で(悪い意味なんてあるのか)エッチな人なのではないかと勝手に妄想。

 ここからネタバレします。

 出てくる人物・キーワードは古事記、持統天皇、中臣氏、藤原氏、物部氏、イザナギノミコト、イザナミノミコト、サルヒコ(猿田彦)・・・などですので、時代は8世紀ごろになります。
 アシバール国VSユージア国なのに衣裳が白地に赤線で統一されて似ているので、最初はどちらの国の人なのかを判別するのが難しかったです。でもその二つの国を支配するアメノクニの云々・・・でやっとわかったんですが、アメノクニってアメリカのことなんですね。そしてアシバールとユージアは日本、もしくはアジアの国々。そうなるとロノクニはロシアなので、時代は20世紀になります。そういえば五族協和などの単語も出てきていました。
 つまり時代を自由に行き来して、古代と近現代の日本を同時に重ねて描いたんですね。

 私が受け取ったメッセージは下記のようなもの。
 「(外交には)主張が必要」
 「人間は物語を信じたがる。それが嘘だろうが本当だろうが、信じたことがその人にとっての真実になる。」
 「過去をムリに正当化したり、未来を予言したりするのではなく、今を生きている今の気持ちをありのままに記録すること(が大事)」

 オープニングは文字映像とともに役者紹介がありました。あまりに人数が多いので間延びするんじゃないかと思ったのですが、意外にもじっくりはまって見入ってしまいました。たぶん役者さんのストップモーションがきれいだったのと、文字を読んで解釈する時間とがちょうど良いリズムだったのではないかと思います。

~神州「ユーレンシア」を舞台に繰り広げられる「歴史を記す者=神話を創る者」たちの物語~
出演=古澤龍児/菊岡理紗/土屋雄/三宅法仁/宍倉靖二/小手伸也(以上innerchild) /進藤健太郎(無名塾)/板垣桃子/ハルカ・オース/石川カナエ/尾﨑恵/貝塚建(桃唄309)/小柳こずえ/三枝翠/桜子/関本なこ/関根洋子/長尾純子/馬場巧(まめや別館/ヰタ・マキ)/初谷至彦(NG企画)
作・演出=小手伸也 舞台監督=筒井昭善/小手伸也 舞台美術=筒井昭善/小手伸也 照明デザイン=伊藤孝(ART CORE design) 照明操作=下田めぐみ 音響=尾林真理(ウーハーズ) 映像=神戸ちぎ 衣裳=渡辺まり 衣裳製作=岩下真由美 メイク=荻原麻弥/佐藤奈津希 小道具=桜井徹 宣伝美術=土谷明子(Citron Works) 稽古場助手=三嶋義信 舞台写真=引地信彦 撮影=金山智 制作協力=山崎華奈子/松井見依子 制作=赤沼かがみ(G-up)/innerchild制作部/杉浦宏文/菊岡由里 企画・製作=innerchild
前売り開始 2006年11月28日(火)  全席指定 前売3,200円/当日3,500円
公式=http://www.innerchild-web.com/

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Posted by shinobu at 2007年01月11日 15:21 | TrackBack (0)