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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年02月08日

Bunkamura『ひばり』02/07-28Bunkamuraシアターコクーン

 松たか子さんのジャンヌ・ダルクの初日を観てまいりました~。まさか2日連続で蜷川さん演出作品を観ることになるとは・・・なんでチケット取るとき考えなかったのかしら、私(汗)。

 公式サイトにありますように、「『ひばり』は裁判劇で、ジャンヌ・ダルクが自分の半生を法廷で再現する形」でした。戦争を題材にしたスペクタクルかしらと想像していたので、大ハズレ(苦笑)。上演時間は3時間30分(休憩10分を含む)です。長かった・・・。

 初日だったからかもしれませんが、カーテンコールがなんと4回。スタンディングしてた方も大勢いらっしゃいましたね。さいたまゴールド・シアター所属の、お年を召した新人役者さんの満面の笑みが素敵でした。

 ≪ストーリー≫ 公式サイトより
 百年戦争と呼ばれた長い戦争終結の糸口をつくり、祖国を救った19歳の少女が裁判にかけられている。
 何の専門知識も経験もないまま17歳で軍隊の先頭に立ってイギリスと戦い、連戦連勝を収めた戦歴、13歳の頃から何度も聞いた「フランスを救え」という神の啓示、それに伴って彼女が起こした奇跡。それらすべてが、イギリスとフランス、政治と宗教、大人達の虚栄心と欲望によってかき消されようとしていた。
 法廷で自らの半生を演じさせられている男装の少女の名は、ジャンヌ・ダルクー。
 ≪ここまで≫

 幕開けは王侯貴族・身分の高い僧侶・兵士・農民などの衣裳に着替えた(または着替えの途中である)役者さんが、リラックスした気軽な身のこなしでトコトコと登場し、舞台を囲むように並べられたイスに腰掛けてお芝居が始まるのを待ちます。舞台中央のステージに上がらない役者さんはそのまま席で待っている、劇中劇のスタイル。皆さんほぼ出ずっぱりなんですね。
 そして何より、セリフが多い!!しゃべりっぱなし!!!聞いているだけでも意味を追うので精一杯になりました。また、シアターコクーンの広い舞台なのに二人だけで話すシーンが多く、一つ一つが長いんです。役者さんによって引き込まれたり退屈したり、浮き沈みがありました。私の先入観のせいもあるかもしれませんが、蜷川さんの演出作品の中ではかなり地味な方ですよね。

 前半は残念ながら初日っぽいムードで、全体的に会話も動きもぎくしゃくしているように感じました。でもジャンヌ役の松たか子さんが登場しているシーンは空気も引き締まり、私は受身の観客になれました。松さんの独白は美しく、はっきり堂々と語られるので説得力があります。でも対話になると、二人でいても一人っきりでしゃべっているように見えて、私は言葉を受け取りづらくなりました。それでも松さんが出てると松さんにしか目が行かなくなるんだよな~・・・嬉しいような悲しいような。

 舞台は法廷ですが、現代の裁判ではなく宗教裁判です。優しくしたり脅したり困ってみたり、僧侶たちはあらゆる話術でジャンヌを言いくるめていきます。ここで描かれていたキリスト教に限らず、自分を肯定するために他者を認めない(排除する)考え方というのは醜いですね。もちろん私は外側から眺めているからそういう自覚ができるけれど、あの世界の中にいたら周りに染まって流されているかもしれません。火あぶりになってもジャンヌの命は美しいと感じる自分の心を、曇らせないよう、隠さないよう生きたいです。

 異端であるかどうかを判定する(?)僧侶を演じられた壤晴彦さんが大迫力でした。

 ここからネタバレします。

 臆病なシャルル王(山崎一)に対してジャンヌが、「お前はもうじゅうぶんに怖がった。だからもう(怖がらなくても)大丈夫。」と言って励まし、勇気を与えます。「先に思う存分怖がっておいた方が勝つ」という考え方は凄い!コレ、私、絶対に実践する!(笑)

 一番恐ろしい、やっかいなものは悪魔ではない。「人間」だ。夜に禁断の快楽に耽っても、朝には誰かを救うために身を投げる、そんな矛盾を抱えた奇跡的な存在、それが人間。
 長い長い、言葉の洪水のお芝居の最後に、頑なに暗く閉ざされた世界を素っ裸にするほど白く照らす、稲光のような、後光のような言葉を聞くことが出来ました。

出演:松たか子/橋本さとし/山崎一/磯部勉/小島聖/月影瞳/二瓶鮫一/塾一久/久富惟晴/稲葉良子/阪上和子/横田栄司/妹尾正文/堀文明/品川徹/壤晴彦/益岡徹/さいたまゴールドシアターの方々/他
作:ジャン・アヌイ 翻訳:岩切正一郎 演出:蜷川幸雄  主催:Bunkamura 企画・製作:Bunkamura
一般発売 2006/11/26(日)  S席¥9,000 A席¥7,500 コクーンシート¥5,000 中2階立見券¥3,500 2階立見券¥3,000
公式=http://www.bunkamura.co.jp/

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Posted by shinobu at 2007年02月08日 02:37 | TrackBack (1)