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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年03月02日

タカハ劇団『モロトフカクテル』02/23-26早稲田大学学生会館B203

 CoRich舞台芸術!に演劇フリークからの5つ星クチコミが揃ったので、急いで予定を変更して(笑)千秋楽に伺いました。こういう瞬間を待ってました!これこそクチコミの力!!

 そして、とても面白かったんです。学生演劇があまり好きではない私ですが、早稲田大学まで行った甲斐がありました。むしろ大学内で観るからこそ意味のあるお芝居でした。

 CoRich舞台芸術!『モロトフカクテル

 大学による部室取り上げに対して反対運動を起こそうとする現代の学生と、60年代の学生運動に実際に関わっていた男が、大学の弱小自治会の部室で出会います。

 学生運動をしていた(目撃していた)人たちが、「俺らはこんなに熱かった。今の若者はどうだ?もっと声高に、熱くなれよ!」って言ってくるような、そんな励ましや自慢、お説教の混ざったようなお芝居が最近多くてですね、個人的に疑問がいっぱいだったんです。そんな時に、現役の大学生が大学の中の学生会館で、見事な回答を出してくれました。

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立て看板

 崇高な目的のために、愛する人のために自分の欲望を抑え、命を懸けて戦い、支え合う日々を送ってきた私たちの親の世代をまぶしく思うことはもちろんあります。でも、そんな華々しい学生運動の慣れの果ての山荘事件、ハイジャック事件を知っている私たちは、どうやったって真似する気にはなれません。

 議論やルール、理想のために行動して着実に実績を上げながら、素直な感情に蓋をするようになった大人。ぬくぬくと大切に育てられて、自分の気持ちのままに自然に生きられるようになったけれど、目的達成のためにがつがつと努力・忍耐をしなくなった若者。この対比が見事でした。

 役者さんの演技はいかにも学生らしいものでしたが、脚本、演出についてはとても面白いと思いました。新劇の劇団とかで再演してもらいたいぐらい(笑)。
 私が学生劇団を特に観に行こうと思わないのは、自分がまさにそうだったからですが(苦笑)、学校という活動場所がめちゃくちゃ恵まれているからです(劇場、稽古場、作業場など)。個人的には早く学外に出て活躍してもらいたいと思います。

 ここからネタバレします。

 最終的に学生達は部室に篭城しますが、機動隊に囲まれて絶体絶命になります。そこで火炎瓶を持って飛び出したのは団塊の世代の男(モロトフカクテル)でした。若者たちは必死で彼を止めに行きます。大人は理想のために命を捨てられるけれど、今の若者はしないんですよね。どちらが正しいとか間違っているとかはないですが。

 灰色だった部室の壁が後ろからの照明で赤く透けて、部屋を出て行ったモロトフカクテルと学生達が見えるようになります。もみあう彼らをバックに、部室に残っていた60年代のカップルが手を取り合って美しい詩を読み合う・・・素晴らしいエンディングでした。

出演=井手豊/浦井大輔(コマツ企画)/西尾友樹/中野嵩大/古木知彦/小崎宗冬/宮原かほる(劇団森)/今井理恵/垣内勇輝(北京蝶々)/斎藤加奈子/浅野真依/高羽彩
脚本・演出=高羽彩 演出助手=田中亮大 舞台監督=土居歩 舞台美術=満木夢奈 照明=吉村愛子(Fantasista?ish.) 音響=角張正雄(SoundCube) 小道具=田畑美穂 衣装=佐藤愛(自由創作師) フライヤーイラスト=手塚真梨子 フライヤー&WEBデザイン=小郷聡太(ジェントル&スイーツ兄弟) 宣伝協力=木下早紀 制作協力=小林由梨亜 吉永紘朗(アイサツ) 協力=棚瀬巧 オフィス☆怪人社  C.Kプロモーション 制作=安田裕美 製作=タカハ劇団
【発売日】2007/01/20 前売り1200円 当日1500円 ペア2000円
公式=http://takaha-gekidan.com/molotov/

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Posted by shinobu at 2007年03月02日 17:02 | TrackBack (0)