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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年03月05日

パラドックス定数『プライベート・ジョーク』03/01-04サンモールスタジオ

 緻密で骨太な脚本とストイックな演出の男芝居で、人気も知名度も上昇中のパラドックス定数の新作(過去レビュー⇒)。千秋楽にやっと伺えました。作・演出は野木萌葱さん。今回は意外に青春群像劇!?でした。

 昨年末に上演されたばかりの『Nf3 Nf6』(ナイト・エフ・スリー・ナイト・エフ・シックス)が、サンモールスタジオのプロデュース公演として6月に再演されます。それもダブルキャストで。これは楽しみですね。

 CoRich舞台芸術!⇒『プライベート・ジョーク

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。改行を変更。
 二十世紀初頭の古き佳き時代。自由主義教育を掲げる学生寮で未来の芸術家たちが暮らしていた。ルイス・ブニュエル、映画作家(井内勇希)。ガルシア・ロルカ、詩人(植村宏司)。サルバドール・ダリ、画家(十枝大介)。
 湯水の様に消費される食事と時間と芸術論。若さ故に才能を持て余しながらも破天荒な共同生活は続いてゆく。
 ある日、学生寮主催の講演会が開かれる。彼等の前に二人の男が現れた。アルバート・アインシュタイン、物理学者(澤村一博)。パブロ・ピカソ、画家(野口雄介)。
 五人の男が一堂に介した奇跡の様な瞬間に悪夢の様な物語が幕を開ける。創造は暗黒の地獄。世界は残酷な秩序。芸術と学問に正面から闘いを挑んだ男たちが織りなす見るもおぞましい魂の競餐。
 プライベート・ジョーク。身内の戯れ。
 ≪ここまで≫

 美術はきわめてシンプル。フルーツやドリンクが並ぶ木のテーブルと対になったイス、そしてソファが並べてあるだけです。サンモールスタジオってこんな空間だったのか~と改めてじっくり見られました。いい空間ですね。

 ブニュエルとロルカとダリが暮らすスペインの男子学生寮に、ピカソとアインシュタインがやってくるという、なんとも豪華な(笑)お話です。もちろん「どう考えてもそれは無理があるゾッ!」と突っ込みだしたらきりがないでしょう。でも、こういう自由奔放なアイデアは面白いですし、何より勇気があると思います。

 歴史上の人物であることを忘れ、目の前にいる希望に溢れた若い男の子たち一人一人のキャラクターの愛らしさに目を開いてみれば、強がりながらも必死で愛を求めてあがく彼らを、いとおしむ目で眺めざるを得ないと思います。

 ここからネタバレします。

 アインシュタインが地球、月、太陽を例に光について説明すると、ダリは画家らしく、ブニュエルは映画監督らしく反応します。そんな対比が面白かったですね。丁々発止のやり取りにもわくわくしました。今回は軽快で笑えるところが多かったように思います。

 15歳年上の人妻に惚れたと告白したダリ(十枝大介)の首を、ロルカ(植村宏司)がネクタイで静かに絞めながら詩を朗読するシーン・・・も~~ちょー興奮っ!!ヤバいっ!ここでエロいわ~とか思ってる私って完全に、今で言うところの腐女子!?(笑←自分で笑っておくしかない)

 ・・・すみません、取り乱しました。

 「なぜ絵を描くんだろう?」「なぜ映画を撮るんだろう?」というような、創作自体への悩みってありますよね。そんな等身大で純粋な、真剣な葛藤にグっと感情移入しちゃいました。時が経つにつれて親友達とのつながりに変化が訪れ、歩む道のりも枝分かれしていきます。政治に関わっていくのかどうかの命がけの選択が、その後の人生の明暗を分けるんですね。ラストの「21世紀はどうだ?」とストレートに問いかけるスライド文字に、思わずニヤリとしてしまいました。⇒CoRich舞台芸術!にも書きました。

 プロローグ、「1926年、皆既日食の夜」、「1931年、皆既月食の夜」、「1936年、内戦勃発の夜」という構成でしたが、スペインの内戦とドイツ軍の空爆から、アインシュタインの懇願、ピカソの「ゲルニカ」製作へとつながる展開にはさすがについて行けず。私自身がどうしてもうそ臭さから逃れられませんでした。そうなると演技も少し気になっちゃうんですよね。やはり若い方ばかりですから重厚さには欠けるので。

 上手奥のドアの向こう側は、通常はそのまま建物の外側になるそうです。大きな声を出したりするので、ドアの外を囲んだ山小屋のような建て込みがあるとか。実は見えないところに装置が組まれていたんですね(笑)。

パラドックス定数第13項・サンモールスタジオ提携公演
出演=植村宏司(ロルカ) 井内勇希(ブニュエル) 澤村一博(アインシュタイン) 野口雄介(ピカソ) 十枝大介(ダリ)
作・演出=野木萌葱 照明=木藤歩 音響=井川佳代 小道具=栗山佳代子 舞台監督=渡辺陽一 写真=渡辺竜太 宣伝美術=山菜春菜 京 WEB製作=手塚俊輔 制作=泉屋晋平 協力=鈴木万裕子 松本寛子 副島千尋 葛西摩利 藤田晶久 企画製作=パラドックス定数研究所
前売3000円 当日3500円 ※日時指定・全席自由
公式=http://www.paradoxconstant.com/labo/

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Posted by shinobu at 2007年03月05日 00:20 | TrackBack (0)