多田淳之介さんが作・演出される東京デスロックの新作(過去レビュー⇒1、2)。今回から青年団リンクの一員となられました。多田さんの快進撃はすごいです。
“「人生にも演劇にも鍵なんてかかっていない」という劇団名をも揺るがす壮大なプロジェクト”ということで、例えばお稽古を全日公開されていました。残念ながら伺えず…こういう機会逃したくなかったんですけどねぇ(涙)。
劇場に入るなり、役者さんに「いらっしゃいませ~♪」と迎えられてびっくり。なるほど確かに“開錠”されてる感じ。海外のパフォーマンスみたいな雰囲気でした。いっぱい笑いましたね~、東京デスロックの公演とは思えないほど。
⇒CoRich舞台芸術!『unlock#1』
※この公演のチケット代金は、予約すれば2,000円です。昨日観たパラドックス定数『プライベート・ジョークス』が前売り3,000円ですから、激安だと思います。やっぱり凄い、青年団。
長方形のアトリエ春風舎のスペースを横に長く使います。客席は真ん中の広い演技スペースをぐるりと三方から丸く囲む形。私は舞台を正面に見て下手(左)側に座りましたが、正面の席がいいんじゃないかな~。1列しかないし、かなり目立つけど(笑)。
断片がゆるやかにつながっていく構成で、特にルールはなさそうでした。“inspired by 『アルジャーノンに花束を』”ということで、人間の「知」をモチーフにした短編群だったようです。私は『アルジャーノン・・・』は劇団昴のお芝居で観ただけで原作を読んでませんが、問題ありませんでした。
知識量の差、外国語の壁、同音異義語(ISP)の妙、インターネット、テレビゲームなど、私たちが日常から直面している(慣れ親しんでいる)「知」のさまざま形態を、外側から眺めさせてくれます。
次々に起こることがみんな予想外の順番でしたね。「なぜ今それが始まるの!?」ってびっくりすることしきり。途中でもう順番を追うのはやめようって思ったら楽になりました。
一緒にご覧になっていた方が「ルネ・ポレシュに似てる」とおっしゃっていて、私も共感しました(ルネ・ポレシュの演出作品⇒『皆に伝えよ!ソイレント・グリーンは人肉だと』)。なるほど、だから海外みたいだなって思ったのかも。
多田さんのブログによると、多田さんの立ち居地(?)は初日とは変わったようですね。千秋楽まで柔軟に変化していく作品だと思います。
≪ここからネタバレします≫
キャッチボール(知識の差)、パソコンショップ(日本語と英語)、ISP(Internet Service Provider、池袋ショッピングパーク、池袋サファリパーク、いしかわサイエンスパークなど)、池袋周辺の撮影映像&好戦的な(笑)字幕、Wii・・・。
初日は英語のわかる外国人のお客様が数人いらしていて、パソコンショップのコント(って言ってもいいのかな)では爆笑が起こっていました。アレは可笑しい。英語翻訳は出演者の松田弘子さんです。
突然、舞台上で電動のインパクトドライバーなどを使ってベニヤ3枚大のパネルを建てました。これにはビックリ。殺されるかと思った(嘘)。ちょっと唐組みたい!って思った(本当)。そこに映像を映し出したんですが、またその映像がかなり大胆なものでした。今まで上演したものの種明かしだったんですよね(ISPをWikipediaで調べた結果を映したり)。
「いしかわサイエンスパーク」シーンで、「人間はどんどん知識をコンピュータに入れていっている。いずれコンピュータが人間に取って代わることになる云々」としゃべっていました(たどたどしいエセ方言で)。でも映像では、アトリエ春風舎をバックに「ここで創造してるゼ!」という意味の字幕がついていたりしたんです。かっちょえーなーって思いました。意図は全く違うかもしれませんけどね。
Wiiで遊ぶ人って初めて見たんですが、見ててかなり笑えますね。動きも不自然だし(ボクシング・ゲームなのに、ボクシングには似ても似つかない動きをするから)、一生懸命になってるのも可笑しい。それが最後のダンスやシャドウ・ボクシングの動きと混ざっていくのが面白いです。人間ってアホだなー可愛いなーとしみじみしながら、汗だくになってフラフラになっていく役者さんを眺めました。
終演後に関係者からお話を聞いたり、アフタートークに行かれたお客様からの情報を得たりしてわかったことですが、東京デスロックのお芝居の創作過程をそのまま舞台に乗せたらしいです。だから、ほとんど終盤に「WELCOME!」なんていう映像が流れたんですね。それぞれの短編の意味がとてもわかりやすかったのは、今までの東京デスロックだったら舞台に乗せないところが乗ってたからなのでしょう。
inspired by 『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス
★初日観劇予定
出演=松田弘子 熊谷祐子 村井まどか 佐藤誠 佐山和泉
作・演出=多田淳之介 舞台美術=鈴木健介 宣伝美術=多田淳之介 翻訳=松田弘子 総合プロデューサー=平田オリザ
3/3土 19:00の回 ゲスト:青年団演出部より〔田野邦彦(RoMT) 工藤千夏(うさぎ庵) 吉田小夏(青☆組) 西村和宏 武藤真弓]
3/7水 19:30の回 ゲスト:関美能留(三条会)
一般予約開始 2007年2月1日 日時指定・整理番号付自由席 予約 2,000円/当日 2,500円
公式=http://specters.net/deathlock/
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。