MONOの土田英生さんの戯曲を生瀬勝久さんが演出されます。生瀬さんが演出をされるのは6年ぶりだそうです。⇒MONO公演のレビュー
豪華キャストになって登場人物も増えて、脚本には変更が加えられていました。
⇒CoRich舞台芸術!『橋を渡ったら泣け』
≪あらすじ≫ チラシより。(役者名)を追加。
明日かもしれない近い未来、日本は未曾有の大災害に襲われた。生き残った数少ない人間は、何の情報も救助もないまま、瓦礫の中、自分達の力で生きていくことを迫られた---。
1ヶ月以上が過ぎ、ここ、信州・乗鞍岳では、7人がコミュニティをつくり共同生活を送っている。人々は、つきとめられない原因を考えるより、現状を受け入れ、とにかく生きていくために冷静になることを選んだ。4人の男と3人の女は、未来への緩やかな絶望を身につけながらも、意外とのんびり暮らしている。
そこに、ひとりの男がやってくる。パンダの観光船で流れ着いたというその男(大倉孝二)は、閉塞し始めていた集団に、自分達以外にも生きている人間がいたという希望と新しい風をもたらす。コミュニティは心機一転するかに見えたのだが---。
≪ここまで≫
舞台中央にあるのは白い砂が敷かれた丸いステージ。その真ん中に朽ちかけた階段(橋の一部だった?)がそびえています。舞台奥の壁はステージを丸く囲むようにぐるりと弧を描いており、空と雲の絵が描かれています。壁の手前(壁とステージの間)には崩れたコンクリート片などが転がり、廃墟であることがわかります。
平地が水没して山の部分だけ残ったという設定ですが、演技スペースは白い砂だし周囲が空と雲に囲まれているので、廃墟でありつつも、ちょっとした素敵な砂浜にも見えます。
シアターコクーンで1ヶ月近く上演する公演ですから、色んな角度からその規模や意図に沿うように脚本を変更し、演出もそれらしいものになるのは当然だと思います。そういう意味でこの公演は観客思いだし、さすがはプロだなと素直に思えます。特に脚本は、出演者の個性にしっかりフィットさせたんだな~と思いました。
でも、MONOの作品と比べると・・・かなり物足りなかったですね。シアターコクーンの公演にしては全体的に地味だったとも思います。
ここからネタバレします。
最初は皆いたわりあって平等に仲良くしているのですが、どうしてもコミュニティの中にはヒエラルキー構造が生まれてしまいます。そして頂点に立つ(立とうとする)者のお約束は選民思想。「俺は選ばれた人間だ」とか言い出すんですよね。
土田さんの脚本は素敵だなって思います。例えば→どん底にいてもどん底を強調しない。悪い人間を一方的に悪者にしない。ダメな人間をダメに描くけれど、いとおしいと思わせてくれる。ラストに未来への希望を残してくれる。
あと、アホなギャグで笑わせてくれる。ギャグではないと思いますが、「目が7つある動物がぴょんぴょん飛び跳ねる」のにはお腹から笑わせていただきました。幸せでした。
何か事件があるごとに盛り上がりやすい音楽が流れるのは、まあ仕方ないかなと思いますが、私は好きになれないですね。役者さんの演技はなんだかステレオタイプな感じがして物足りなかったです。大倉孝二さんは素敵だなと思いました。
奥菜恵さんに「私、可愛いでしょ、クラスでもダントツだった。」・・・てなこと言わせるのは、映画「おいしい殺し方」(←超面白いですよ!)の影響かしら(笑)?実際、はじけてて可愛らしかったです。
出演=大倉孝二/奥菜恵/八嶋智人/小松和重/鈴木浩介/岩佐真悠子/六角精児/戸田恵子
作:土田英生 演出:生瀬勝久 美術=島次郎 照明=小川幾雄 音楽=佐野史朗 音響=藤田赤目 衣裳=堀口健一 演出助手=山田美紀 舞台監督=青木義博 宣伝写真=永石勝 宣伝美術=トリプル・オー
一般発売 2007/1/13(土) S¥8,500 A¥7,000 コクーンシート¥4,000
公式=http://www.bunkamura.co.jp/
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