「CoRich舞台芸術まつり!2007春」審査対象のNEVER LOSE『廃校/366.0【後日譚】』観劇にあわせて、その前に上演されたメガトン・ロマンチッカーの【前日譚】も拝見いたしました。上演時間は約1時間20分。
⇒CoRich舞台芸術!『廃校/366.0【前日譚】』
それにしても・・・なんてきれいな劇場!ロビーは広いしイスは豪華だし、至れり尽くせりです。その広くて清潔なロビーで充実の物販があり、劇中歌の視聴ができるCDプレイヤーが3台も置かれており、観客のアンケートが貼り出されていて・・・客席に座る前に大きな満足感がありました。制作・運営の方々のきめ細やかなもてなしに、とにかく感動!
名古屋には各地域にこんな劇場が1箇所ずつあるそうです・・・なんて恵まれた環境なんだ!(あくまでも観客視点ですが)東京の小劇場公演もこんなのだったら、気軽にお友達や家族を呼べるのに!うらやましくなりました。
≪あらすじ≫
桜が咲く3月の終業式の日。中学2年生全員が登校拒否をした。正しく言うと14人全員が行方不明なのだ。マスコミに知れたり警察沙汰になることを避けたいがため、教師や保護者らは極秘に子供達の捜索をしている。
2年生の教室には保護者や先生、卒業生などが集まる。と、そこに記憶喪失だと思われる少女も現れた。
≪ここまで≫
枯れ枝で組まれた大きな木の枝が、舞台右奥天井からステージ中央へと伸びるように吊られています。シンプルながら見どころのある美術でした。白いカーテンに当たる風や14個のイスそれぞれに落ちる照明など、背の高い空間を生かした演出が美しかったです。
花も葉も全くついていない、禿げた枯れ木が満開の桜に見えた瞬間がありました。まさに演劇が生むことのできる劇場の奇跡だったと思います。素晴らしかったです。
あぁなんて素敵な劇場なんだろう・・・ホラ、こうやって劇場自体を味わう感想になってしまう・・・。それほど感動しました。
ストーリー(というか構成)や役者さんの演技には不満でした。一度しか拝見していませんのでメガトン・ロマンチッカーの作風がいつもはどんななのかはわかりませんが、この作品を観た限りでは、演出の個性よりも基本的な技術の未熟さの方が印象に強く残ってしまいました。
ただ、日本の現代社会についてのある具体的な視点が伝わってきたことは、私にとっては嬉しいコミュニケーションになりました。
前編・後編とセットになっているものは、やっぱり両方観たくなっちゃいますよね。なのに完全に別のお話で、つながりはありませんでした。ちょっとガッカリ。一人ぐらい登場人物が被ったりして欲しかったな~。東京と名古屋という距離(366.0km)がある合同公演ですので、難しい注文なのかもしれませんが。
ここからネタバレします。
全体的には、廃校になる母校に思い入れのある人々がパラパラと訪れて、それぞれの気持ちを語るという構成でした。13年前の事件と今まさに起きている中学生の失踪を重ねていき、事件の真相に迫るかと思いきや、色々ほのめかしただけで解決なしに終わってしまったのは残念。「卒業生による殺人」という具体的テーマが与えられた状態で、この終わり方なのは不完全燃焼でした。
記憶喪失の少女「さくら」を、同じ衣裳を着た5人の役者さんの群読で表現するのは面白いアイデアだと思いました。ただ、その「さくら」が物語の中でも漠然とした夢のような存在になってしまったのは物足りなかったです。もうちょっと具体的に何かと関わって欲しかったですね。
一つだけすごく私の胸にひびいたことがありました。「中学生と浮浪者の間で何か問題が起きていた」という事実が終盤で明らかになってきます。浮浪者についてはある人物が「あいつらなんてただの迷惑だ。やつらがいなくなってせいせいする」と言ったりします。行方不明になっている桃香の妹(登場しない中学生)も、もしかしたら「私は望まれていないのに生まれてきてしまった」と思っていたかもしれません(桃香が中学生の時に身ごもった子供で、妹として育ててきたから)。
また、「13年前の中学生失踪事件の首謀者のカザマが帰ってきた」という噂も出てきます。カザマは町から追い出された人間でした。過疎で廃校が決まった中学校校舎も「必要ない」から取り壊される存在です。
人間が「いらない」「邪魔だ」と思った瞬間に、もの・こと・ひとが自動的に排除されていくのが、今の日本の現代社会です。登場人物の個人的な悲しみや不安を描くことで、それらが柔らかく表現されていたように感じました。作・演出の刈馬カオスさんが今、感じていることを受け取れたように思いました。
≪名古屋、東京≫
出演=浦麗 大久保明恵 岸良端女 スズキナコ(avecビーズ) 斉藤やよい(劇団B級遊撃隊) 瀬口かしす(煉獄猿) 高野亮(フリー) 山添賀容子(劇団新生) 伊倉雄(劇団バッカスの水族館/西田シャトナー演劇研究所) 一丸博昭(劇団楽猿計画) 平山陽子(劇団バッカスの水族館) 磯谷祐介(フリー) ※来々舞子は降板。
作・演出=刈馬カオス 舞台監督:松下清永+鴉屋 舞台監督助手:柴田頼克/佐藤恵 舞台美術:杉山至+鴉屋 舞台美術助手:濱崎賢二 照明(前日譚):村瀬満佐夫(劇団翔航群) 照明(後日譚):池田圭子 音響:飯塚ひとみ 衣裳(前日譚):河村梓 衣装協力(後日譚):梅谷摩耶/JAM HOME MADE & ready made/MAMORU SHIMIZU anglasad/EMMETT BROWN 楽曲提供(後日譚):POUND ROCK/GOOFY`S HOLIDAY/PATHFINDER 宣伝美術:ル・ゴウ総合美術 WEBデザイン:櫻井晋 舞台映像撮影:A-sec 演出助手(前日譚):境一志(メガトン・ロマンチッカー) 制作:梅村卓哉(メガトン・ロマンチッカー)/松丸琴子(NEVER LOSE)/山本純子(東海シアタープロジェクト) プロデューサー:大橋敦史(東海シアタープロジェクト) [運営協力]岡本理沙/山本理恵/具嶋清美/清水梓 [主催]メガトン・ロマンチッカー NEVER LOSE 東海シアタープロジェクト (財)名古屋市文化振興事業団
日時指定、全自由席、前売・当日券同一料金 一般2500円・学生1500円 セット券(一般3000円・学生2000円) 小学生以下のお子様はご入場いただけません
公式=http://www.haikou.jp/index.php
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